措置命令の発令
令和6年11月13日、消費者庁は、大正製薬株式会社に対し、同社が供給する「NMN taisho」と称するサプリメントに係る表示について、景表法5条3号(ステルスマーケティング告示)に該当すると認めたことから、景表法7条1項に基づいて措置命令を発令しました。措置命令の内容としては、①景表法違反(ステルスマーケティング告示違反)について一般消費者に周知徹底すること、②再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること、及び、③今後は同様の表示を行わないこととなっています。
本件は、3件目のステルスマーケティング告示違反の措置命令となります。また、本件は、令和6年8月9日にステルスマーケティング告示違反に基づいて措置命令を出されたRIZAP株式会社の事案と共通する点がありますので、その点も踏まえて解説をいたします。なお、本件では、優良誤認や有利誤認に該当するとの判断はなされていません。
両社の行った表示の共通点
大正製薬株式会社もRIZAP株式会社も、概ね、次のような行為をしています。なお、大正製薬は下記①の際に無償、有償のいずれもあったのに対し、RIZAP株式会社は有償だったようです。
①会社がインフルエンサーに対して、自社商品やサービスをSNS上に投稿することを依頼する
②上記①の依頼を受けて、インフルエンサーがInstagramに会社の商品やサービスのことを投稿する
③会社が、自社HPで広告のために上記②の投稿の抜粋をお客様の声などとして紹介している。
そして、上記③の表示について、ステルスマーケティング告示違反とされています。つまり、一般消費者にとって、広告であることが明瞭ではない(分かりにくい、又は、分からない)と判断されたということです。
自社HP上での表示は広告なのかステルスマーケティングなのか
令和5年3月28日に公表された「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準の第3.2(2)は、柱書で、「事業者の表示であることが一般消費者にとって明瞭である又は社会通念上明らかであるものは、告示の対象となるものではない。例えば、以下のような場合が考えられる」と記載したうえで、具体例のオとして、次のとおり記載しています。
「事業者自身のウェブサイト(例えば、特定の商品又は役務を特集するなど、期間限定で一般消費者に表示されるウェブサイトも含む。)における表示を行う場合。
(ア)ただし、事業者自身のウェブサイトであっても、ウェブサイトを構成する特定のページにおいて当該事業者の表示ではないと一般消費者に誤認されるおそれがあるような場合(例えば、媒体上で、専門家や一般消費者等の第三者の客観的な意見として表示しているように見えるものの、実際には、事業者が当該第三者に依頼・指示をして特定の内容の表示をさせた場合や、そもそも事業者が作成し、第三者に何らの依頼すらしていない場合)には、第三者の表示は、事業者の表示であることを明瞭に表示しなければならない。」
この運用基準を読むと、原則として自社HPにおける広告は一般消費者にとって広告であることが明瞭であるが、例外があるということが分かります。
そして、例外の例として挙げられているものは、
ⅰ.専門家や一般消費者等の第三者の客観的な意見として表示しているように見えるものの、会社の依頼・指示によって専門家や第三者に特定の内容を表示させたもの、
ⅱ.専門家や一般消費者等の第三者の客観的な意見として表示しているように見えるものの、会社が第三者であるかのように装って作成したもの
となっています。
大正製薬株式会社もRIZAP株式会社も、この原則と例外の解釈の違い(上記ⅰに該当するか否か)でステルスマーケティング告示違反となったと考えられます。実際、大正製薬株式会社は、本件について、自社のウェブサイト上に表示していることから、インフルエンサーの投稿部分も広告だと判別できると考えて、広告である旨を表示していなかったという趣旨のコメントを出しているようです。なお、大正製薬株式会社の事案では、インフルエンサーのInstagram上の投稿は広告であることが分かる旨の記載がなされていたとのことです。
自社HPにインフルエンサーの投稿を載せるのはステルスマーケティングと考えた方が良い
自社が依頼・指示したインフルエンサーの投稿を自社HPにお客様の声の形で載せて広告する手法について、相次いでステルスマーケティング告示違反として措置命令が出ました。今後、このような手法は、ステルスマーケティング告示違反となることを認識しておいた方が良いように考えております。
また、今回、紹介した二社については、いずれもインフルエンサーの投稿が問題となりましたが、医者等の専門家の意見も同様に問題となり得ます。サプリメント等の広告においても、自社HP上に自社の商品等を広告する目的で医者等の専門家の意見が載せられているのが散見されます。こういった広告についても、ステルスマーケティング告示違反にならないかどうかを今一度確認した方が良いでしょう。
広告表現にお悩みの方は景表法・薬機法に詳しい丸の内ソレイユ法律事務所の弁護士にご相談下さい
これでは何も訴求できない、どんな風に書けばいいのかわからないーそのようにお悩みの方、企業の販促・プロモーション・広告担当の方、弊所は法律に則った訴求表現のアドバイスもさせていただくことが可能ですのでぜひ一度ご相談ください。
広告は文章だけでなく、広告全体から判断されます。
近年、景品表示法に基づく措置命令や課徴金納付命令、そして特商法に基づく業務停止命令が相次いで出されており、ナンバーワン表記や二重価格表示、そして「飲むだけで痩せる!」などの事実と異なる表記への取り締まり、さらには、今回のようなステルスマーケティングのような、SNSを絡めた広告表示に対しての取り締まりが加わり、広告に対する規制がより一層強くなっているのが現状です。
弊所では広告・プロモーション法務に詳しい弁護士が多数在籍しており、皆様のご不安に寄り添うことができます。丸の内ソレイユ法律事務所の広告審査は、スポットでA4 1枚/11,000円からご依頼頂けます。(1枚単価がお安くなる顧問プランもございます)
全て弁護士がチェックしており、グレーな部分は行政へ確認を取ってからレポートをお戻ししております。
ネットで調べても何が正しいか分からない!自社内で審査すると時間がかかる!と広告表現についてお悩みのお客様は、是非一度弊所をご活用いただければ幸いです。