令和6年10月16日、消費者庁は、美容液等を販売する通信販売業者(以下「本件事業者」といいます)に対して、特定商取引法(以下「特商法」といいます)第15条第1項に基づき、の9カ月間、通信販売に関する業務の一部(広告、申込受付及び契 約締結)を停止するよう命じました。
あわせて、消費者庁は、同事業者の代表取締役個人に対しても、特商法第15条の2第1項の規定に基づき、9カ月間前記業務停止命令により業務の停止を命ずる範囲の業務を新たに開始すること(当該業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含む)の禁止を命じました。(参考:通信販売業者【HappyLifeBio】に対する行政処分について (caa.go.jp))
指摘されたポイント
今回特商法違反として指摘されているポイントは2点で、①誇大広告(特商法第12条) 、②特定申込みに係る手続が表示される映像面における表示義務違反(特商法第12条の6第1項)です。
①誇大広告
まず①誇大広告についてですが、本件事業者は、販売していた美容液について、「シミが99.9%消える!!」「\3日でシミ消滅は確実!!/」といった表示を行い、当該美容液を塗布すると、短期間でシミが消滅する効果があるという趣旨の表示を行っていました。
この点について消費者庁が本件事業者に対して当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、本件事業者は資料を提出したとのことですが、同資料は合理的な根拠とは認められず、商品の効能につき、実際のものよりも著しく優良であると人を誤認させるような表示に該当するものとみなされたとのことです。
ちなみに、このような効果の表示は、景品表示法上の優良誤認表示にも該当するものと思われますし、薬機法の観点からも、法令違反となる表現と思われます。すなわち、今回は特商法違反ということで指摘を受けておりますが、他の法律の観点からも、法令違反の指摘を受ける可能性があります。
②最終購入画面
次に②特定申込みに係る手続が表示される映像面における表示義務違反について、本件事業者は当該美容液について、定期購入契約の申込を受け付けていたとのことです。
特商法では、通信販売を行う場合、事業者は顧客に対して、商品の販売価格や代金支払いの時期や方法等いくつかの事項を表示しなければならないことになっているのですが、表示しなければならない事項の中には、申込みの撤回又は解除に関する事項も含まれています。
本件事業者は、そもそも当該美容液の定期購入契約について、非常に煩雑な手続きを踏まないと解除できないような仕組みにしていたほか、当該解除手続きについて、定期購入契約の申込画面では、そのような非常に煩雑な手続きを踏まなければ解除できない旨を明示せず、契約の解除に関する事項の一部しか表示していませんでした。これについて、特商法違反と判断されたとのことです。
まとめ
これらの特商法違反行為に対し、消費者庁は本件事業者に対して、業務停止命令9カ月という重い行政処分を下しました。なお、消費者庁は、令和6年10月3日にも、別の美容クリームの通信販売業者に対して、類似の内容で3カ月間の業務停止命令を下しています。
このような流れを踏まえると、「他の会社がやっていて、ひとまず大丈夫そうだから自分のところも大丈夫だろう」という発想は危険であることがわかります。特商法のみならず、法律に則った販売方法・広告表記を守り、経済活動をしていくことを強くおすすめいたします。