業務停止命令及び指示、並びに、業務禁止命令の発令
令和6年4月18日、消費者庁は、電子たばこの通信販売を行っている会社に対し、特定商取引法15条1項に基づき、同月19日から同年7月18日までの3か月間、通信販売に関する業務の一部(広告、申込受付及び契約締結)を停止するよう命じました。また、合わせて、消費者庁は、特定商取引法14条1項に基づき、同会社に対し、法令遵守体制の整備その他の再発防止策を講ずることなどを指示しました。さらに、消費者庁は、同社の代表取締役個人に対し、特定商取引法15条の2第1項に基づき、同月19日から同年7月18日までの3か月間、上記の業務停止命令による業務の停止を命ずる範囲の業務を新たに開始すること(当該業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含む。)の禁止を命じました。
この内容だけ見ると、特定商取引法に基づく通常の行政処分だと感じます。ただ、本件は、特定商取引法12条違反が認定された2件目の事例です。また、同条違反の内容が少し変わった事例ということで紹介をいたします。なお、本件事例では、特定商取引法12条違反のほか、定期契約購入契約の申込みの撤回又は解除に関する事項を表示していないことを理由とした同法12条の6第1項違反も公表されています。ただし、ここでは、同法12条違反についてのみコメントいたします。
本件事例に係る特定商取引法12条(誇大広告違反)
(1)本件事例の表示(広告)
本件事例で、通信販売会社は、販売していた電子たばこの販売価格について、次のような表示を行っていました。
「メーカー希望小売価格14,200円 5,000円(税込)」
つまり、本来であれば、14,200円のメーカー希望小売価格であるところ、5,000円で販売すると広告していたというわけです。
(2)通常のメーカー希望小売価格であれば、法律上、問題とならない
通常のメーカー希望小売価格について、例をとって確認しましょう。
例えば、メーカーA社が製品Xを販売会社B社に対して販売する際、A社がB社に対して、Xを10,000円で一般消費者に販売してくださいと希望したり、パンフレットに載せたりします。これがメーカー希望小売価格です。そして、B社としては、A社の定めたXのメーカー希望小売価格は10,000円であるものの、8,000円で販売するなどして、一般消費者に安く売っていることをアピールするわけです。なお、A社がB社に対し、一般消費者にXを10,000円で販売するよう義務付けた場合、再販売価格の拘束という不公正な取引方法に該当し、独占禁止法上の問題が生じる可能性があります。
このように、一般的なメーカー希望小売価格と販売価格の比較は、特定商取引法でも景品表示法でも問題とはなりません。
(3)本件事例での問題
では、本件事例では何が問題となったのでしょうか。 本件事例では、通信販売会社自体が企画して、製造を委託したうえで専売していた電子たばこでした。上記例でいうと、メーカーA社と販売会社B社とが同じ会社であるということです。つまり、通信販売会社は、メーカーでもあることから好きなようにメーカー希望小売価格を決めることができます。
通常のメーカー希望小売価格と販売価格との比較が法律上、問題とならないのは、あくまで、他社が決めたメーカー希望小売価格との比較だからです。メーカーと販売会社が同一の場合、好きなようにメーカー希望小売価格を決めることができます。そうなると、不当に高いメーカー希望小売価格を設定し、一般的な販売価格を設定することによって、一般消費者に対して、安価に販売していると誤信させることができてしまいます。本件でも、その点が、特定商取引法12条違反(誇大広告)と評価されたものと考えられます。
特定商取引法12条の今後の運用方向(私見)
特定商取引法12条を適用するのは、以前のコラムにおいて、景品表示法における不実証広告規制の適用がなくとも違反内容を確定できる、課徴金納付命令を出す必要性がない(売上150万円未満の場合)又は必要性が低い場合ではないかと指摘させていただきました。
そのような事情に加えて、通信販売といった特定商取引法に規定のある取引については、できる限り特定商取引法を適用していく方向なのかもしれません。
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