措置命令の発令
令和6年8月8日、消費者庁は、RIZAP株式会社(チョコザップ)に対し、景表法5条1号(優良誤認)及び同条3号(ステルスマーケティング告示)に該当すると認めたことから、景表法7条1項に基づいて措置命令を発令しました。措置命令の内容としては、①景表法違反(優良誤認及びステルスマーケティング告示違反)について一般消費者に周知徹底すること、②再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること、及び、③今後は同様の表示を行わないこととなっています。
本件は、令和6年6月6日に出されたステルスマーケティング告示違反の措置命令に続き、2件目のステルスマーケティング告示違反の措置命令となります。また、優良誤認の内容も、他の事業者が違反する可能性のある内容ですので、ここで紹介いたします。
本件事例に係る優良誤認
(1)本件事例の表示(広告)
本件事例で、RIZAP株式会社は、チョコザップの以下のサービスについて、「24時間使い放題」「好きな時にご利用可能です」などと表示していました。
サービス内容 |
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セルフホワイトニング |
セルフ脱毛 |
デスクバイク |
セルフネイル |
セルフエステ |
マッサージチェア |
ワークスペース |
(2)実際
しかしながら、実際、上記サービスについては、24時間利用できるものはありませんでした(短いものは5時間、長いものも16時間でした)。この点について、RIZAP株式会社のサービスが実際のものよりも優良であるとして優良誤認に該当すると判断されたものです。
(3)コメント
上記内容を確認すれば、24時間利用できないサービスを、さも、24時間利用できるように広告したのですから、優良誤認と判断されたのは当然といえます。ただ、事業者としては、24時間開いている店舗等に関しては、つい、24時間利用可能などと表示してしまいがちではないでしょうか。本件の措置命令は、サービス利用可能な時間帯について、今一度、確認して、適切に広告しなければならないことを意識させたといえると思います。
また、本件の表示については、24時間利用可能なサービスに対して月額利用料を支払っているにもかかわらず、実際には24時間利用できなかったという点で有利誤認に該当するともいえそうです。なお、消費者庁にとっては、不実証広告規制がある優良誤認の方が、有利誤認よりも違反を認定しやすいといえます。このことは、炊飯器の措置命令のコラムでも述べたとおりです。
>>【令和6年2月】糖質カットを謳った炊飯器を販売するニトリなど4社に対する措置命令について解説
本件事例に係るステルスマーケティング告示違反
(1)本件事例の内容
RIZAP株式会社が第三者に対して、Instagramへの投稿を依頼しました。この依頼は、対価を伴っていたようです。そして、RIZAP株式会社は、この投稿を、自社サイトにおいて、お客様の声として抜粋し、広告に利用していたというものです。
このRIZAP株式会社の表示がステルスマーケティング告示違反とされました。
(2)コメント
内容を見ると、対価を伴って第三者に投稿を依頼しているという点では、典型的なステルスマーケティング告示違反といえそうです。しかしながら、本件では、表示媒体が自社サイトであるという点がポイントです。
ステルスマーケティング告示の規制趣旨は、事業者の表示であるにもかかわらず、そのことが一般消費者に明瞭になっていないという点にあります。つまり、事業者の表示、本件ではRIZAP株式会社の広告であることが明瞭になっていれば、ステルスマーケティング告示違反にはならなかったといえます。
この点、一般的に、自社サイトは自社の商品やサービスを広告する場でもあります。事業者からすれば、自社サイトに載せているのであるから、自社の広告であることは明瞭になっていると考えるかもしれません。自社サイトへの載せ方によっては、自社の広告であることが明瞭になっているといえるかもしれません。
しかしながら、本件のように、お客様の声という形で引用することで第三者性を引き立たせると、その載せ方によっては、一般消費者に事業者の表示であることが分かりにくくなります。これは、第三者の声の他、専門家の意見の形で自社サイトに載せる場合も同様であるといえます。事業者としては、この点について注意をする必要があるでしょう。
まとめ
本件では、RIZAP株式会社という著名な会社が措置命令の対象となりました。この点は、消費者庁も措置命令の発令の社会的影響も考慮したのかもしれません。そして、本件事例でのポイントは、以下のとおりになりますので、各事業者は、十分に注意してください。
【優良誤認】
広告と実際のサービス提供時間に違いがないかを確認すること
特に、24時間開いている店舗のサービス提供時間
【ステルスマーケティング告示違反】
自社サイトといえども、第三者の声といった第三者性の高い内容については、一般消費者が事業者の広告ではないと誤解する可能性があることを意識すること