はじめに
「メンズワイプゼロ」「メンズワイプゼロマイルド」という製品について、令和5年12月14日に長崎県から、令和6年1月19日に北海道から、医薬品成分である「アトロピン」、「スコポラミン」、「メサコニチン」が検出された旨の指摘がなされ、医薬品医療機器等法第55条第2項(無承認医薬品の販売・授与等の禁止)違反に当たるとし、この製品を販売中止及び自主回収するという事態になりました。
これはなぜ法律に反することになってしまったのでしょうか。
医薬品を販売するには承認が必要
医薬品は、人の生命・身体に影響を及ぼす可能性が高いため、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下「薬機法」といいます)において、開発から製造・販売まで厳しく規律されています。いくつもの実験や(非)臨床試験をし、国の承認審査を経て、ようやく製造販売ができるようになります。
このように、厳格な過程を経ずに無承認で医薬品を販売することはできず、必ず国の承認が必要になります。
本製品は、医薬品であるにもかかわらず承認を得ていなかったため、薬機法に違反することになりました。
何が医薬品にあたるか
薬機法上、医薬品とは、以下のものとされています。
- ①日本薬局方に収められている物
- ②人または動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって、機械器具等でないもの
- ③人または動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、機械器具等でないもの
本件では、本製品に含まれていた「アトロピン」等が医療用医薬品として日本薬局方に収められているので、①に該当し、医薬品ということになります。
また、医薬品成分が含まれていなくても、人または動物の疾病の診断、治療又は予防に使用される目的を有するものは、医薬品にあたりますので、本件では問題となっておりませんが、医薬品的な効能効果をうたって健康食品を販売したような場合にも、未承認医薬品の販売や広告の規制に反することになります。
まとめ
本件は、医薬品成分が含まれていることから、未承認医薬品の販売にあたるという判断になりました。
医薬品成分が含まれていない場合でも、医薬品的効能効果をうたうと医薬品になってしまうので、注意しましょう。