現代社会の状況(情報化社会)
インターネットの利用はもはや当たり前
- 常時接続
- 通信速度の高速化
→大容量のデータのやり取りも容易
- 利用方法等の高度化・複雑化
→ 法規制の強化(後追いの面も)
インターネット(デジタル技術)
【特徴】
- 伝達・発信が容易
- 公開性・伝播性
- 匿名性
- 複製・加工等が容易
インターネットを通じた取引
【特殊性】
- 実物が目の前にない
- 対面でない
※ 誤解を生みやすい
※ 合意の成立時期の問題 - IT機器の利用
※ 誤操作の問題
※ 手続きの容易性
ウェブ上での広告・マーケティング
自由度が高い,低コスト
ホームページ・ブログ・販売サイト等に比較的簡単に掲載できる
➔ しかし,他者のチェック入りづらい
不適切であった場合の事業へのダメージ
➔ 悪評がすぐに広まる,いつまでも残る
➔ 事業の停滞,ビジネスモデルの見直し
∴ あらかじめ問題になりそうなポイントをクリアしておくことが必要
押さえておくべき法規制
- 景品表示法
- 不正競争防止法
➔ 公正な競争・表示 - 著作権法
- 商標法
- 憲法(プライバシー,肖像権,パブリシティ)
➔ 他者の権利保護 - 消費者契約法
- 特定商取引法
➔ 消費者保護 - 個人情報保護法
- 特定電子メール法
➔ 情報化社会への対応
1.景品表示法
次のような場合を規制している
- 優良誤認
- 有利誤認
- 過度の景品の付与
優良誤認
根拠なく「No.1」である旨を広告に記載するなどして,実際の品質よりも著しく優良であるという誤認を与えるような場合
ステルス・マーケティング
➔消費者に宣伝と気づかれないようにする宣伝行為
(例)口コミサイトに,一般消費者を装って自社が優れているというような書き込みを自ら行う(自作自演),書き込みを業者に依頼する 消費者庁の見解 「商品・サービスを提供する事業者が、顧客を誘引する手段として、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、又は第三者に依頼して掲載させ、当該「口コミ」情報が、当該事業者の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題となる。」 消費者庁の見解(要約)
- 書き込みをする(させる)だけなら問題なし。
- 「実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合」には、景品表示法上の不当表示の問題となる。
違反例
- 化粧品について,根拠もなく「シワに効く」などと効用を書き込む
- 5つ星評価の書き込みを大量に行なって,総合順位を上げるなど
- 逆に,自社に不利益(不当)な書き込みがされてしまった場合
- 誹謗中傷の書き込み➔ 対処できないか?
不当な書き込みへの対処
プロバイダ責任制限法に基づく措置
①発信者情報の開示書き込んだ人間の住所・氏名・IPアドレス・端末番号など
②投稿記事削除
③発信者情報削除の禁止
➡ 申立が増えている
仮処分
記事削除:プライバシー権,肖像権等の人格的権利の保全のためである必要
個人に対する誹謗中傷の書き込みに関する申立ががメイン
有利誤認
キャンペーン価格が特別安いかのように比較し,消費者に誤認を与えるような場合
フラッシュマーケティング
商品やサービスの提供にあたり、割引価格や特典がついたクーポンを期間限定でインターネット上で販売する手法 Ex. グルーポン 問題とされた事例
- あるお菓子屋さんが,某ネットモールで通常2800円で販売しているケーキと同等の商品を,フラッシュマーケティングサイトで,「定価5400円のところを3389円で特別割引販売」しているかのように表示した。
消費者庁の見解
- セール時からさかのぼって8週間のうち,元の価格で販売されていた期間が過半かつ
- 最後に元の価格で販売されていた日から2週間以上経っていない
→ 有利誤認の問題とならない。
2.不正競争防止法
- 他人の周知著名な商品,サービス名を使用したビジネス上のタダ乗り行為や模倣
- 他者を貶めるような広告などによる信用毀損行為などを規制する法律
ドメインネーム 他社の社名や著名な商品等に類似したもの
➔ 使用差し止め
ドメインネームの移転
3.著作権法
他人の著作物の利用 ➔ 著作権者の許諾が必要
Ex. ホームページ上に
・お客様の声(手紙)を掲載する場合
・写真を掲載する場合
4.商標法
「商標」 商品・役務の提供者を識別するために商品等に付される標識
➔ 勝手に使ってはいけない 「チュッパチャップス商標侵害事件」 商標を無断で使用したグッズ(マグカップ等)を販売された場合において,取引の場を提供したネットモールの運営者も,侵害を容認・放置したといえる場合には責任が生じうる」
➔ 運営元は,無条件では免責されない
5.憲法(プライバシー,肖像,パブリシティ)
- 記事削除の仮処分(前述)
- 有名人の写真や氏名などの無断使用
「あの○○さんも使っています」など
6.消費者契約法
おおげさな表現,紛らわしい表現での勧誘行為が行われた場合,契約が取り消されうる
- 不実告知
- 断定的判断の提供
➔ 「絶対に儲かります」 - 不利益事実の故意の不告知
7.特定商取引法
- ネット上の取引・・・通信販売
➔ 商品サービスに関する表示義務 - 著しく事実に相違する広告の禁止
- 誇大広告の禁止優良誤認・有利誤認)
- 電子メール広告規制(※後述)
- 顧客の意に反する申込みの促進・強制の禁止
8.個人情報保護法
「個人情報」の収集・利用に関する規制
- 利用目的の特定・通知
- 利用目的の範囲内の利用
- データの正確性の確保
- 安全管理措置
- 従業者・委託先の監督
「個人情報」には該当しないがプライバシー性の高い情報の取り扱い Ex. 端末固有ID
位置情報
アプリ利用履歴など
→ 利用する場合は、事前に明示的な同意を取るべき
9.特定電子メール法(w/特商法)
広告・宣伝のためのメール送付
➔ 事前の同意なく送付してはならない(いわゆるオプトインの原則) 事前の同意があると言えるには…
- 広告メールが送信されることをユーザーが認識している
- 「賛成の意思表示をした」
➔「配信することができます」などと規約等に書いているだけでは不十分
明確な同意が必要 ➔ ☑チェックボックスを設けて積極的な意思表示をとる
- デフォルトオン
予めチェックボックスにチェックを入れておき,広告メールの配信を望まない場合はチェックを外すように促す方法
※容易にチェックを外せるようにするのが望ましい
(チェックの一括解除など) - デフォルトオフ
まとめ
- インターネット広告の問題
→ 広範,複雑
誰が責任を負うのか?不明確 - ビジネスへのインターネット利用 → その他の場面でも問題が生ずる
契約、資金決済など - 法律に違反しないか、個別具体的な状況に合わせた判断が必要になる場合も多い。
Ex.「個人情報」への該当性 - ビジネスの全体の流れ(および今後予定する展開)の中で、どのように問題が生じうるかをまず検討してみる。
- 新たなマーケティング手法=新たな問題点
→ 法改正のフォローなど事業にあわせたチューニングが常に必要
以上