措置命令の発令
令和6年2月1日、同月5日、同月6日及び同月7日に、糖質カットを謳った炊飯器又は炊飯調理器の販売業者4社(株式会社ニトリ、Areti株式会社、リソウジャパン株式会社、AINX株式会社)に対し、消費者庁が、それぞれ景表法5条1号の優良誤認に該当することを理由として、措置命令を行ったと発表されました(発表は令和6年2月8日)。
措置命令の対象となった会社には、株式会社ニトリも入っており、大手企業に対する措置命令として、反響が大きいものと考えられます。
また、この事案は、措置命令に先立つ令和5年3月15日に独立行政法人国民生活センターが公表した『糖質を低減できるとうたった電気炊飯器の実際』と題する報道発表資料でも問題視されていたものです。同報道発表資料でも、景表法に違反する(優良誤認)恐れがあると指摘されていました。
実際、国民生活センターには、消費者から血糖値が変わらないといった訴えや糖尿病の人が使って大丈夫なのかといった相談が寄せられていたようです。
優良誤認の内容、不実証広告規制
優良誤認の内容
優良誤認と認定された内容は、非常に単純で、各社が当該炊飯器を使用すれば、通常よりも糖質をカット(各社それぞれですが、33%~59%の糖質カットとの表示)できるとの広告を行ったものの、糖質カットを根拠づける合理的な資料がなかったというものです。
実際の機能よりも優れている旨を広告している(広告>実際の機能のずれ)典型的な優良誤認の事例ということができます。
不実証広告規制
消費者庁は、優良誤認の該当性を判断する際には、不実証広告規制という手続を利用して判断することが多いのですが、今回の事案も不実証広告規制を利用して進めています。以下、不実証広告規制を解説します。
措置命令に関する不実証広告規制については景表法7条2項、課徴金納付命令に関する不実証広告規制については景表法8条3項に定められています。
不実証広告規制は、消費者庁等が事業者に対し、「当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めること」ができ、事業者が合理的な根拠を示すことができなかった場合、措置命令の場合には優良誤認とみなされ、課徴金納付命令の場合には優良誤認と推定されるという制度です。なお、みなされるというのは争う余地がなくなることを意味し、推定の場合には争う余地があるものの覆すのは大変です。
不実証広告規制における合理的根拠については、
- 提出された資料が客観的に実証された内容のものであること
- 表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること
という要件を満たす必要があります。
上記①については、試験・調査によって得られた結果や専門家等の見解又は学術文献を根拠とする必要があります。また、上記②については、例えば、試験結果と実際に使われる状況が異なっている場合には、要件を満たさないということになります。試験結果等や学術論文等は、実際の使用状況等と合致する必要があります。
消費者の声が措置命令につながることが多い
当事務所も、事業者の担当者などから、どのような場合に消費者庁から措置命令等が出されるのか質問を受けることが多いです。
このような質問を受けた際に、「消費者からのクレームが多い商品・サービスについては、調査の対象となりやすく、調査命令につながることがある」と回答することがあります。つまり、消費者の声が措置命令につながるということです。
今回の措置命令は、まさにそのパターンと言えるでしょう。
最後に
今回、優良誤認の場合における措置命令の事案を紹介しました。事業者からすれば、優良誤認とならないようにその根拠資料を準備することが非常に重要であることはもちろんです。
それとともに、消費者の声やクレームについても意識して対応する必要があることを意識してもらえればと思います。