近年、高齢化社会や癌・糖尿病などの増え続ける病気から国民を守るため、健康増進の啓蒙や施策などが国をあげて行われるようになりました。そのため、普段の食事以外にサプリメントや健康食品などを摂取する習慣などが急速に認知され、同時にサプリメントや食品業界には異業種から参入してくる動きも多いようです。
さてその中でも「機能性表示食品」は、今なお注目の的です。
今回は、サプリメントや食品メーカーが開発の前や販売の際に事前に知っておきたいこれらの制度についてご紹介します。
健康増進法とは?
たまに耳にすることもあるかと思いますが、「健康増進法」という法律の存在をご存知でしょうか?この法律は「我々国民ひとりひとりが自己の健康増進に努めならなければない」「それに関わる自治体や医療機関などは協力義務がある」という法律です。冒頭にも述べたように、年々進展する高齢化社会、生活の変化による発症率が高くなった病気などを事前に防ぐために今や国をあげての施策ともなっています。
この法律や国の施策などがあいまって消費者へはサプリメントを摂取したり、健康増進の食事を心がけるなど一層の認知が得られビジネスチャンスも増えたわけですが、そこでもっと消費者が自己的かつ合理的に商品を選ぶことができ、さらにその機会の選択肢を増やそうと始まったのが「機能性表示食品」制度です。
機能性表示食品はトクホと違う?
まず、サプリメントや健康食品と呼ばれるものの種類を分けると以下のようになります。
〈特定保健用食品(トクホ)〉
よくCMなどで見かけるトクホとは、「特定保健用食品」の略です。健康の維持や増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められており、よって「コレステロールの吸収を抑える」などの表示や表現が可能です。国によって効果や安全性が認められ、商品ごとに消費者庁長官に個別に許可されている商品のことを指します。
〈栄養機能食品〉
そして栄養機能食品とは、すでに科学的根拠が確認された栄養成分で一日に必要な栄養成分(ビタミン、ミネラルなど)を一定の基準量含む食品であれば、特に届出をしなくても国が定めた表現によってその機能を表示することができます。
〈機能性表示食品〉
事業者(メーカー)の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示できる制度です。機能性とは、「おなかの調子を整える」「脂肪の吸収を穏やかにする」など、特定の健康の維持や増進に役立つことを指します。機能性表示食品は、特定保健用食品とは異なり、消費者庁長官から商品ごとに個別の許可を受けたものではありません。ちなみに、上記以外で登録されたサプリメントや食品などは、【一般食品】となり、機能性の表現は一切できません。
機能性表示食品の制度を利用したい場合
さて、機能性表示食品として届出をし、販売を開始するにはどのようにすれば良いでしょうか?前提として、機能性表示食品の消費者庁への届出は、機能性表示食品制度届出データベースを介して行います。
①まず、事業者の基本情報の届出をします。
送信した基本情報に不備がある場合、消費者庁から差し戻され、修正後に再度届出を行います。基本情報の届出について、受付が完了すると、システムを利用するためのユーザIDを取得することができます。
②発行されたユーザIDを利用してログインし、「新規届出」を行います。
届出内容に不備がある場合、消費者庁から差し戻され、修正後に再度届出を行います。「新規届出」の受付が完了すると、機能性食品にかかる届出情報が消費者へ公開されます。
③届出を行った後は、機能性表示食品の販売状況を、適宜更新する必要があります。
仮に販売状況に変更がなくとも、約半年ごとに更新する必要があります。このように届出を行うことで、機能性表示食品として販売・広告表示をすることができるようになります。
【機能性表示を巡る問題点】
機能性表示食品とは、上記のとおり、事業者(メーカー)が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠を消費者庁に届け出ることで、機能性を表示できるという制度です。
つまり、事業者自身の判断で届け出ることで足り、行政等による審査を受ける必要がないのです。各事業者が高い自覚を持って届け出を行えば問題は起きませんが、事業者側のさじ加減次第では、科学的根拠の乏しいものであっても、機能性表示食品となってしまいます。
このように届け出という方法をとっているため、審査段階がなく、消費者庁が届け出を受理してしまうと、基本的には事業者側から撤回をしない以上、消費者庁側で特段の対応をすることができません。そのため、事実上撤回を要請する動きもあるようです。
事業者サイドとしては、届け出時点から、科学的根拠を固く構成しておくことが必要でしょう。昨今はレピュテーションリスクの対策をとることも重要ですので、どのような観点からの指摘にも対応できるように、根拠資料を準備しておくことが重要です。
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