1 電話勧誘販売の特徴
電話勧誘販売とは、販売業者や役務提供事業者が購入者や役務の提供を受ける人の自宅や勤務先に電話をかけて、商品や役務提供の契約の締結を勧誘し、その電話や郵便などによって、契約の申し込みを受けたり、契約の締結をしたりする取引類型のことをいいます。
電話勧誘販売は、事業者が電話をかけることによって、突然かつ一方的に勧誘行為が開始される時点で、消費者にとって不意打ち性が高いこと、電話を受けた消費者からすると、電話をしてきた相手の素性や目的もよくわからないまま会話をせざるを得ない状況となること、電話での会話では契約の内容や条件を正確に把握することが困難であること、勧誘が簡単である反面、執拗な勧誘となりやすいなどの特性や問題点があります。
そのため、電話勧誘販売では、消費者が契約をするか否かといった意思の形成過程において、不当な影響を受けやすく、誤った認識をしたり、契約が適切なものか否かについて正常な判断ができなくなる危険性が高くなるため、結果的に消費者の適切な自己決定を損なうことになりかねません。
そのため、特定商取引法においては、電話勧誘販売を規制対象として、販売業者等の不当な行為を排除したり、不当な行為の影響下でなされた意思表示に基づく契約を簡単に解消する制度を定めています。
2 誘引段階の行為規制
(1)氏名等の明示義務
販売業者等は、電話販売をしようとするときは、その勧誘に先立って、相手方に対し、「販売業者または役務提供義務者の氏名または名称及びその勧誘を行う者の氏名並びに商品もしくは権利または役務の種類並びにその電話が売買契約または役務提供契約の締結について勧誘をするものであること」を告げなければならないとされています(特商法第16条)。
事業者の名前だけでなく、直接勧誘している担当者の名前も伝える必要があります。
これらの情報は「勧誘に先立って」告げることが定められているため、電話で話し始めたらすぐに伝えなければなりません。
電話をしている者が誰でどのような目的であるのかを最初に消費者に伝えた上で勧誘を行うことが求められており、話の途中で伝えた場合、義務を果たしたことにはなりませんので注意が必要です。
(2)再勧誘等の禁止
販売業者等は、電話勧誘販売による売買契約または役務提供契約を締結しない意思表示をした者に対して、さらにその契約の勧誘をしてはならないとされています(特商法第17条)。
契約を締結しない意思表示とは、「契約しません」というように明示されている必要はなく、「必要ありません」とか「買うつもりはありません」といった、契約をする意思がないことが推察されるものもすべて含まれます。
なお、「契約の勧誘をしてはならない」というのは、契約を締結しない旨の意思表示があった電話で勧誘を続けてはならないだけでなく、同じ契約については日を改めての再勧誘も禁止されていますので、注意が必要です。
電話勧誘販売は、その性質上、特商法により様々な規制があります。その他の規制については別の記事でご説明します。