「うちは関係ない」と思っていませんか?
特定商取引法(以下、特商法)違反による行政処分は、連鎖販売業(いわゆるマルチ商法)だけでなく、訪問販売や通信販売を行う企業にも適用される法律です。「ちょっとした説明不足」が企業の存続を揺るがしかねないリスクとなることを、今回の事例から学びましょう。
株式会社SEEDに下された厳しい行政処分
2025年(令和7年)3月3日、東京都墨田区の株式会社SEEDは、特商法違反を理由に18か月間の取引等停止命令を受けました。さらに、代表取締役の坂本周三氏にも、同期間にわたる業務禁止命令が下されています。
この処分が下されたのは、SEEDが行っていた化粧品・健康食品の連鎖販売取引(マルチ商法)において、違法な勧誘行為を繰り返していたと認定されたためです。SEEDは過去に行政処分を受けた「株式会社ARK」の従業員を多数引き継ぎ、同様の違法行為を行っていたことも問題視されました。
この事例から、特商法を順守しなかった企業がどれほどのリスクに直面するのか、具体的に見ていきましょう。
特商法違反を招いた3つの致命的ミス
SEEDに下された行政処分は、以下の3つの違反行為に基づいています。これらは連鎖販売業だけでなく、訪問販売・電話勧誘販売・通信販売業者にも関わるポイントです。
1. 氏名等の明示義務違反(特商法第33条の2)

SEEDの勧誘者は、以下のような方法で消費者を勧誘していました。
- 「ボウリングをしませんか?」
- 「社会人サークルみたいな感じです」
消費者に対し、勧誘の目的や企業名、扱う商品を明らかにせずに誘い出していました。この行為は特商法に違反し、企業の透明性が欠如していると判断されるポイントです。
➡ 対策: 販売員や営業担当者が、消費者に対して明確な説明義務を果たしているかを徹底管理することが重要です。
2. 勧誘目的を告げない誘引行為(特商法第34条第4項)
SEEDの勧誘者は、LINEの通話機能を使って特定の場所への来訪を求め、その後、密室で強引な勧誘を行っていました。
このような行為は、「情報の非対称性」を利用した消費者の誘導とみなされ、厳しく規制されます。訪問販売業者や電話勧誘販売業者も、意図的に消費者を誘い込む手法を使っていないか、厳しくチェックする必要があります。
➡ 対策: 従業員が意図的に勧誘目的を隠すことのないよう、明確な社内ガイドラインを設けましょう。
3. 迷惑勧誘の禁止違反(特商法第38条第1項第3号)

SEEDの勧誘者は、消費者が**「やめておきます」**と断ったにもかかわらず、
- 「続けていれば必ずリターンがある」
- 「絶対にやったほうがいい」
としつこく勧誘を続け、深夜3時まで契約を迫るような行為を行っていました。
これは典型的な迷惑勧誘に該当し、特商法で禁止されています。
この種の違反は、訪問販売業や電話勧誘販売業でも頻繁に見られ、企業の評判に壊滅的なダメージを与えるリスクがあります。
➡ 対策: 社員が適切な勧誘方法を守れているか、定期的なコンプライアンス研修を実施しましょう。
企業に求められる特商法対応策
SEEDの事例は、単なる悪質業者の問題ではなく、一般企業でも起こり得る問題です。特に、営業部門やマーケティング部門が売上至上主義に陥ると、法令遵守がおろそかになるリスクがあります。
企業が同様の事態に陥らないために、最低限、以下の3つのポイントを実施すべきです。
✔ ① 販売員・営業担当者のコンプライアンス研修を徹底
→ 特商法違反となる行為の基準を社内で明確にし、定期的に研修を実施する。
✔ ② 勧誘・営業フローのチェック体制を構築
→ 営業活動の記録を残し、消費者への説明責任を果たせているか定期的に確認する。
✔ ③ 法律の専門家と顧問契約を結び、随時チェック
→ 特商法は頻繁に改正されるため、企業独自の対策だけでは対応が難しい。弁護士などの専門家によるチェックを受けることで、未然にリスクを防ぐことが可能。
まとめ:企業法務の専門家を味方につけるべき理由

SEEDの事例から分かるように、特商法違反は「知らなかった」では済まされません。一度行政処分を受けると、
✔ 取引停止による事業の大幅な制限
✔ 企業ブランドの毀損
✔ 代表取締役への業務禁止命令
といった深刻なダメージを受けます。
しかし、事前に適切な体制を構築し、法律の専門家と連携していれば、このようなリスクを最小限に抑えることができます。
貴社では、特商法対応のチェック体制は万全ですか?
「うちは大丈夫」と思っている企業こそ、今一度、社内のコンプライアンス体制を見直すべき時かもしれません。
✔ 特商法に関する法務チェックを強化したい
✔ 営業活動が法的リスクを伴っていないか確認したい
✔ 万が一のトラブルに備えて弁護士と顧問契約を結びたい
このようなお悩みをお持ちの企業様は、今すぐ丸の内ソレイユ法律事務所にご相談ください。