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広告規制とは?主要法律やよくある違反例・必要な措置・罰則を弁護士が解説

「広告規制を破るとどうなる?」
「自社の広告が法律違反にならないか心配…」

事業を行う上で、広告は売上を左右する重要な戦略です。しかし、その広告表現には厳しい「広告規制」が存在します。知らずに規制を破れば、重い罰則や深刻な信用失墜を招きかねません。

この記事では、事業者が知るべき広告規制の基本や、主要な法律、具体的な違反例を解説します。また、違反しないための対策も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

広告規制の対策について悩んでいるなら、弁護士に相談することが大切です。丸の内ソレイユ法律事務所では、企業の業界やサービス内容に併せて適切なサポートを提供しています。継続的なサポートだけでなくスポット型の依頼も可能なため、お気軽にご相談ください。

広告規制とは

広告規制とは、事業者が行う広告活動に対して、消費者保護と公正な市場競争の維持を目的に定められたルールのことです。

事業者が商品やサービスを不当に良く見せかけたり、消費者に誤解を与える情報を流したりすることを防ぎます。

規制は特定の法律一つではなく、複数の法律によって多角的に定められているのが特徴です。

知らなかったでは済まされず、違反すれば厳しい罰則の対象となるため、事業者には正確な理解が求められます。

広告規制に関する7つの主要法律

広告活動は、多くの法律によって規律されています。

なかでも、とくに事業者が押さえておくべき主要な法律は、以下の7つです。

  • 景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)
  • 医薬品医療機器等法(薬機法)
  • 特定商取引法(特商法)
  • 不正競争防止法
  • 著作権法
  • 宅地建物取引業法
  • 健康増進法

これらの法律は、それぞれ異なる側面から消費者を保護し、公正な市場競争を促す役割を担っています。どのような行為が規制対象となるのか、基本的な知識を身につけましょう。

景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)|消費者を騙す不当表示を禁止する法律

景品表示法は、広告規制の中で中心的ともいえる法律です。正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といいます。

この法律は、商品やサービスの品質、価格、その他の取引条件について、消費者に誤解を与えるような不当な表示を禁止しています。

主な禁止行為は以下の2種類です。

優良誤認表示実際の商品よりも「著しく優良」であると誤認させる表示です。
根拠がないのに「業界No.1」と表示することなどが挙げられます。
有利誤認表示価格などの取引条件が、実際よりも「著しく有利」であると誤認させる表示です。
通常価格を不当に吊り上げて「今だけ半額」と表示することなどが挙げられます。

消費者が合理的な選択をできるよう、誇張や偽りのない情報提供を義務付けています。近年ではステルスマーケティング(ステマ)も、この景品表示法の規制対象となりました。

以下の記事では、景品表示法について詳しく解説しています。併せて参考にしてみてください。

関連記事:景表法(景品表示法)とは?ガイドラインの内容や注意すべき広告表現を弁護士が解説

医薬品医療機器等法(薬機法)|健康・美容関連の広告に関する法律

医薬品医療機器等法(薬機法)は、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品の品質・有効性・安全性を確保するための法律です。

この法律は、とくに健康や美容、身体の変化に関する広告表現を厳しく規制しています。承認されていない効果効能をうたうことは、虚偽・誇大広告として禁止されています。

違反した場合、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金(法人の場合は最大1億円以下)、又はこれらの併科という刑事罰の対象となります(薬機法第85条)。

主な例は、以下のとおりです。

  • 「このサプリメントで病気が治る」
  • 「シミが必ず消える化粧水」

薬機法は、たとえ事実であったとしても、承認された範囲を超える表現を認めていません。

健康食品や化粧品を取り扱う事業者は、代替表現を用いるなどの細心の注意が必要です。違反した場合、刑事罰の対象となる可能性もある厳しい法律であることを覚えておきましょう。

医薬品医療機器等法(薬機法)については、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

関連記事:薬機法とは?簡単にわかりやすく解説|規制内容・違反事例・対策まとめ

特定商取引法(特商法)|ECサイトや通販事業者に関する法律

特定商取引法(特商法)は、消費者トラブルが生じやすい特定の取引形態を対象とする法律です。

対象となる取引には、以下のようなものがあります。

  • 訪問販売
  • 通信販売(ECサイト、SNS、テレビショッピングなど)
  • 電話勧誘販売
  • 連鎖販売取引(マルチ商法)
  • 特定継続的役務提供(エステ、学習塾など)
  • 業務提供誘引販売取引(内職商法など)
  • 訪問購入

とくにECサイトなどの通信販売では、広告(Webページ)に事業者の氏名・住所・電話番号・返品の可否や条件などを明記することが義務付けられています。

消費者が安心して取引できるよう、必要な情報を正確に表示することが大切です。クーリング・オフ制度に関する記載なども、この法律に基づいています。

不正競争防止法|他社の著名な表示の盗用などを禁止する法律

不正競争防止法は、事業者間の公正な競争を確保するための法律です。広告に関連する規制としては、他社の著名な商品表示やサービス名を盗用・模倣する行為を禁止しています。

主な違反例は、以下のとおりです。

  • 有名ブランドのロゴやパッケージデザインに酷似した商品を販売する
  • 他社の有名な商品名や社名と誤認させるような広告を行う

他社の商品名やロゴを模倣した広告を出すと、消費者が「その企業の商品だ」と誤解してしまうおそれがあります。そのような行為は、他社のブランド価値に“ただ乗り”する行為として不正競争防止法で禁止されています。

自社の広告を作成する際は、他社の知的財産権や営業上の利益を侵害していないか、慎重に確認することが大切です。

ドメイン名の不正取得なども、この法律の規制対象となります。

著作権法|他人の作品を無断で使うことを防ぐ法律

著作権法は、文章・写真・イラスト・音楽・映像などの「著作物」を作成した「著作者」の権利を守る法律です。

広告制作において、他人が作成したこれらの著作物を無断で使用することは、著作権侵害にあたります。

主な違反例は、以下のとおりです。

  • インターネット上で見つけた他人の写真を、許可なく自社広告に使う
  • 他社のキャッチコピーや記事の文章をそのまま流用する

たとえフリー素材であっても、利用規約の範囲(商用利用の可否、クレジット表記の要否など)を遵守しなければなりません。

広告代理店や外部デザイナーに制作を依頼した場合でも、成果物が第三者の著作権を侵害していないか、広告主として確認することが大切です。

宅地建物取引業法|不動産広告や取引の信頼性を守る法律

宅地建物取引業法(宅建業法)は、不動産取引の公正さと購入者の利益保護を目的とした法律です。不動産広告に関しては、消費者の誤解を招くような表示を厳しく規制しています。

とくに問題となるのは、以下の2点です。

誇大広告の禁止物件の広さや価格、立地条件(駅からの所要時間など)について、実際よりも著しく優良であるかのように表示すること
オトリ広告の禁止実際には存在しない物件や、取引する意思のない物件を広告に出し、顧客を呼び寄せること

また、不動産公正取引協議会が定める「不動産の表示に関する公正競争規約」でも、使用できる用語や表示基準が細かく定められています。

不動産業界の事業者は、宅建業法とあわせて規約の遵守が必須です。

出典:不動産公正取引協議会連合会|不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則

健康増進法|たばこ・飲食・健康表示を規制する法律

健康増進法は、国民の健康の増進を図るための法律です。

広告に関しては、主に2つの側面から規制を設けています。

  • たばこの広告・宣伝に関する規制
  • 食品の健康保持増進効果などに関する虚偽・誇大表示の禁止

1つ目は、たばこの広告・宣伝に関する規制です。未成年者の喫煙防止の観点などから、自動販売機やインターネットでの広告手法に制限がかけられています。

2つ目は、食品の健康保持増進効果などに関する虚偽・誇大表示の禁止です。科学的根拠が不十分なのに「飲むだけで免疫力が劇的に向上する」と表示することなどが規制されています。

これは薬機法と似ていますが、健康増進法は「食品」全般を対象としているのが特徴です。

トクホ(特定保健用食品)や機能性表示食品以外の一般食品で、健康効果をうたう際は注意しましょう。

広告規制の主な違反例

法律を理解していても、実際の広告表現で意図せず違反してしまうケースは後を絶ちません。ここでは、特に事業者が陥りやすい広告規制の主な違反例を6つ紹介します。

  • 合理的根拠がない効果表示
  • オトリ広告
  • 誤表記・不十分な条件説明
  • 誇大広告
  • 虚偽広告
  • ステルスマーケティング

これらの具体例を知ることで、自社の広告に潜むリスクを発見する手がかりとなります。

「これくらいなら大丈夫」という安易な判断が大きな問題に発展する可能性があるため、ぜひ参考にしてみてください。

合理的根拠がない効果表示

商品やサービスの効果・性能について、客観的な裏付け(合理的根拠)がないにもかかわらず、優良であると示す表示は違反となります(景品表示法の優良誤認)。

消費者庁から根拠資料の提出を求められた際に、事業者が15日以内に合理的な根拠を示せなければ、景品表示法違反とみなされる可能性があります。

主な違反例は、以下のとおりです。

  • 利用者満足度No.1(調査方法が不明確、または都合のよいデータのみを抜粋)
  • 医師の90%が推奨(ごく少数の医師へのアンケート結果に基づく)
  • 業界最安値(特定の条件下でのみ最安値であり、その条件が不明瞭)

特に「No.1表示」や「最〜」といった最上級表現は、厳格な根拠が求められるため、使用には細心の注意が必要です。

関連記事:No.1表示、高評価%表示に注意!消費者庁からNo.1表示に関する実態調査報告書が公表されました

オトリ広告

オトリ広告は、実際には購入できない(または購入する意思のない)好条件の商品やサービスを広告に出し、顧客を集める手法です。

集客後、広告の商品は「売り切れた」などと説明し、別の高額な商品を勧める手口などが挙げられます。

主な違反例は、以下のとおりです。

  • 存在しない格安の優良物件を掲載し、問い合わせ客に別の物件を勧める
  • 「限定100個」と表示しつつ、実際には10個しか在庫を用意していない
  • 広告で好条件の求人を掲載し、応募者には条件の悪い仕事を紹介する

これらは、消費者の「買いたい」という意思を裏切る不誠実な行為であり、厳しく禁止されています。

誤表記・不十分な条件説明

広告における誤字脱字や、重要な条件の説明不足も、消費者に誤解を与える原因となります。とくに価格や契約条件に関する不十分な説明は、有利誤認(景品表示法)や特商法違反に問われる可能性があります。

主な違反例は、以下のとおりです。

  • 「初回実質0円」と大きく表示し、実際には定期購入が条件であることを極めて小さく記載
  • 月額料金のみを強調し、高額な初期費用や解約手数料がかかることを明記しない
  • キャンペーンの適用条件を故意に省略

消費者が取引の全体像を正確に把握できるように記載することが大切です。とくに、消費者にとって不利になる可能性のある情報は、明確かつ分かりやすく表示する義務があります。

誇大広告

誇大広告とは、事実と異なる、または事実を過度に誇張した表現を用いて、商品やサービスが実際よりも著しく優れていると誤認させる広告のことです。

薬機法や健康増進法、宅建業法などで厳しく規制されています。主な違反例は、以下のとおりです。

  • 「これを飲むだけで1か月で10kg痩せる」(薬機法・健康増進法違反)
  • 「シワが完全に消滅する」(薬機法違反)
  • 最寄り駅まで徒歩10分のところを「駅チカ5分」と表示(宅建業法違反)

上記のような表示は、消費者の期待を不当に煽り、不利益をもたらす可能性があるため、注意が必要です。広告表現は、客観的な事実に基づいている必要があります。

虚偽広告

虚偽広告は、全くの嘘や事実と異なる内容を広告に記載することです。

誇大広告が「事実を大げさに表現する」ことであるのに対し、虚偽広告は「事実に反する」表示であり、より悪質性が高いと判断されます。

主な違反例は、以下のとおりです。

  • 原産国がA国であるのに「B国製」と偽って販売
  • 受賞歴がないにもかかわらず「〇〇賞受賞」と記載
  • 無資格者がサービスを提供しているのに「国家資格保有者が対応」と表示

虚偽広告は景品表示法・薬機法・健康増進法など多くの法律で禁止されています。消費者を欺く行為として刑事罰の対象となることもあるため、厳重な注意が必要です。

ステルスマーケティング

ステルスマーケティング(ステマ)とは、広告・宣伝であることを消費者に隠して行う情報発信のことです。

2023年10月から、景品表示法で規制対象となりました(不当表示の一類型)。

主に、以下のようなケースでは注意が必要です。

  • 企業から金銭を受け取っているインフルエンサーが、その事実を隠して「個人的に愛用している商品」として紹介
  • 事業者が第三者を装い、自社の商品やサービスを絶賛するレビューを書き込む

上記のような広告をすると、消費者は「第三者の公平な感想」と誤認してしまい、合理的な商品選択が妨げられます。

インフルエンサーやアフィリエイターに依頼する場合は、「#PR」「#広告」「#プロモーション」といった広告であることを明瞭に示すよう伝えることが大切です。

出典:消費者庁|令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。

ステルスマーケティングについては、以下記事でも詳しく解説しています。併せて参考にしてみてください。

関連記事:ステマ規制とは?景表法で禁止される行為と違反事例・対策をわかりやすく解説

広告規制に違反するとどうなる?罰則を解説

広告規制に違反した場合、事業者は単なる「注意」では済まない重大なペナルティを受けることになりかねません。

主な罰則は、以下のとおりです。

  • 1.措置命令が下される
  • 2.違反広告で得た売上に応じて課徴金が科される
  • 3.違反企業の社名や違反内容が公表される
  • 4.刑事処分・損害賠償請求などを受ける

これらの罰則を受けると、金銭的な損失だけでなく、企業の社会的信用を根本から揺るがす深刻な事態を引き起こします。

違反が発覚した場合に具体的にどのような措置が取られるのか、その流れと内容を正確に理解しておくことが、何よりのリスク管理となります。

1.措置命令が下される

多くの法律違反(とくに景品表示法)において、まず行われるのが行政庁(消費者庁など)による措置命令です。これは行政処分の一種であり、以下の内容が命じられます。

  • 違反行為の差し止め
  • 違反した表示の取り消しや訂正広告の実施
  • 再発防止策の構築と役員・従業員への周知徹底
  • 同様の違反行為を将来行わないこと

この命令に従わない場合、さらに重い刑事罰(懲役や罰金)が科される可能性があります。措置命令が下された場合は、行政の指示に従って適切に対処するようにしましょう。

ただ、措置命令が出された時点で、違反の事実が公に行政によって認定されたことになります。多くの企業や消費者の信頼を裏切ることになりかねないため、措置命令を受けないよう対策することが大切です。

2.違反広告で得た売上に応じて課徴金が科される

景品表示法や薬機法に違反した場合、行政処分として課徴金納付命令が出されることがあります。

これは、違反行為によって不当に得た利益を国庫に納付させる制度です。とくに景品表示法における課徴金額は、原則として違反対象となった商品・サービスの売上額の3%と定められています(景品表示法第8条)。

たとえば、売上10億円の商品で有利誤認表示を行った場合、10億円の3%である3,000万円を納付しなければなりません。(一定の要件を満たせば減額される場合もあります)

違反のペナルティとして非常に高額になるケースが多いため、企業の経営に直接的なダメージを負うことになるでしょう。

関連記事:課徴金納付命令とは

3.違反企業の社名や違反内容が公表される

措置命令や課徴金納付命令が出された場合、その事実は原則として行政庁(消費者庁など)のWebサイトで公表されます。

公表される内容は、主に以下のとおりです。

  • 違反した事業者の氏名または名称
  • 違反した広告の内容
  • 命令の内容(措置命令、課徴金納付命令)

一度公表されると、その情報は報道機関によってニュースとして取り上げられ、インターネット上に半永久的に残ります。

これにより、取引先や金融機関、消費者などからの信用を失墜することになりかねません。今後の事業継続にも大きく影響する可能性があるため、注意が必要です。

このレピュテーション(評判)リスクこそが、広告規制違反における大きなペナルティの一つといえるでしょう。

4.刑事処分・損害賠償請求などを受ける

違反が悪質である場合、行政処分に留まらず、刑事事件として立件される可能性もあります。

たとえば、消費者庁からの措置命令に違反した場合、措置命令違反として2年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(景品表示法第46条)が科されます。また、故意に優良誤認表示・有利誤認表示を行った場合、100万円以下の罰金が新設されます(景品表示法第48条)。

なお、当初から消費者を欺く意図で表示と異なる商品を販売した場合など、極めて悪質なケースでは刑法上の詐欺罪(10年以下の拘禁刑)が成立する可能性もゼロではありません。

さらに、広告規制違反は民事上の責任も発生させます。広告を信じて商品を購入した消費者から、契約の取り消しや損害賠償請求(集団訴訟に発展するケースもあります)を受けるリスクがあるでしょう。

このように、広告規制違反は行政・刑事・民事のすべてにおいて責任を追及される可能性があります。軽微な違反であっても影響は大きいため、法令遵守を徹底することが何より重要です。

景品表示法に違反した場合の罰則や実際の違反事例は、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

関連記事:景表法違反とは?発覚してからの流れや罰則、実際の違反事例を解説【弁護士監修】

広告規制に違反しないために大切な5つの対策

広告規制違反のリスクは、正しい知識と体制構築によって最小限に抑えることが可能です。「知らなかった」を防ぎ、「うっかりミス」をなくすためには、組織全体での継続的な取り組みが欠かせません。

ここでは、広告規制を遵守し、健全な企業活動を続けるために実践すべき5つの基本的な対策を紹介します。

  • 1.広告規制について周知・啓発をする
  • 2.法令遵守の方針などを明確にする
  • 3.管理する担当者を明確に定める
  • 4.広告出稿前のダブルチェック体制を構築する
  • 5.弁護士など外部の専門家にチェックを依頼する

これらの対策は、企業規模の大小にかかわらず、すべての事業者に求められるものです。以下、それぞれ具体的に解説します。

1.広告規制について周知・啓発をする

経営者から現場の担当者に至るまで、広告規制に関する正しい知識を持つことが大切です。

とくに広告制作に関わるマーケティング部門や営業部門、外部の制作会社とやり取りする担当者は、景品表示法や薬機法などの基本を理解しておく必要があります。

具体的には、以下のような取り組みをするとよいでしょう。

  • 弁護士や専門家を講師に招いた社内研修を定期的に実施
  • 最新の法律改正や違反事例を共有する場を提供
  • 新入社員研修で広告規制に関する内容も実施

適切に周知・啓発をするためにも、知識のアップデートを継続的に行う体制を構築することが重要です。

2.法令遵守の方針などを明確にする

広告表現に関する社内独自のガイドラインやマニュアルを策定し、法令遵守(コンプライアンス)の方針を明確にすることも大切です。

法律の条文だけでは判断が難しいケースでも、自社としての明確な基準があれば、担当者が迷わずに行動できます。

ガイドラインには、主に以下のような内容を盛り込みましょう。

  • 使用を禁止する表現(例:「絶対・完璧・必ず」などの断定的表現は禁止)
  • 使用に注意が必要な表現と、その際に必要な根拠資料の基準
  • 景品(プレゼント)を提供する際の限度額やルールの確認
  • ステルスマーケティング防止のためのルール(「#PR」表記の徹底など)

この方針は、社内だけでなく、広告代理店などの取引先に共有することも重要です。

3.管理する担当者を明確に定める

広告表現の最終的なチェックと管理を行う専門の担当者や部署を明確に定めることも大切です。

制作担当者が「よい広告を作りたい」という熱意のあまり、表現が過剰になってしまうことはよくあります。法務部門や品質管理部門、専門のコンプライアンス担当者による、客観的な審査は欠かせません。

担当者に与える役割は、主に以下のとおりです。

  • 広告案が法律や社内ガイドラインに違反していないかの審査
  • 広告表現の根拠となる資料(エビデンス)が揃っているかの確認
  • 現場からの法律に関する相談窓口

責任の所在を明確にすることで、社内の監視機能が適切に働くでしょう。

4.広告出稿前のダブルチェック体制を構築する

どれほど注意していても、一人の担当者だけでは見落としが発生する可能性があります。広告が公開(出稿)される前に、複数の目によるチェックを行える体制を構築することが大切です。

以下のように、厳重なチェック体制を構築しましょう。

  • 1次チェック:制作担当者(マーケティング部など)
  • 2次チェック:管理担当者(法務部・コンプライアンス室など)

とくに、キャンペーンや新商品のローンチ時など、短期間で多くの広告を制作する場合は、チェック体制が疎かになりがちです。

スケジュールに余裕を持たせ、審査プロセスを省略しないルールを徹底することが求められます。

5.弁護士など外部の専門家にチェックを依頼する

社内での体制構築とあわせて、広告規制に詳しい弁護士や専門コンサルタントなど、外部の専門家によるリーガルチェックを受けることも重要です。

法律の解釈は時代や判例によって変化するため、最新の動向を把握している専門家の視点が欠かせません。

外部の専門家に依頼するメリットは、主に以下の3つです。

  • 社内では判断が難しいグレーゾーンの表現について、法的な見解を得られる
  • 最新の法改正や行政の動向に基づいたアドバイスがもらえる
  • 万が一トラブルになった際、迅速に対応を相談できる

とくに、健康食品や化粧品、金融商品、不動産など、規制が厳しい業種では、定期的に外部の専門家にチェックしてもらうようにしましょう。

広告規制についてよくある質問

アフィリエイト広告やインフルエンサーマーケティングも規制の対象?

アフィリエイト広告やインフルエンサーマーケティングも規制の対象です。最終的な責任は、原則として広告主(商品やサービスを販売する事業者)が負うことになります。

とくに、以下のケースには注意しましょう。

  • インフルエンサーが「#PR」を付けずに商品を紹介した場合(ステマ規制)、広告主が措置命令の対象となります
  • アフィリエイターが「必ず儲かる」と書いて情報商材を販売した場合、広告主が特商法違反などに問われる可能性があります

アフィリエイターやインフルエンサーが記事・写真・動画を投稿する前に一度確認をするなど、適切な管理が必要です。

広告代理店に制作を任せている場合はどこが責任を取る?

広告代理店に制作を任せている場合も、原則として広告主(事業者)が責任を負います

広告代理店はあくまで制作を「委託」された立場であり、その広告内容に関する最終的な責任者は、その広告によって利益を得る広告主である、というのが基本的な考え方です。

たとえ広告代理店の提案や制作ミスによって法律違反が発生したとしても、行政庁(消費者庁など)からの措置命令や課徴金納付命令は、広告主に対して下されます。

もちろん、広告主は広告代理店に対し、契約に基づいて損害賠償を請求できる可能性はあります。

しかし、消費者や社会に対する第一義的な責任は広告主が負うことを、強く認識しておくことが大切です。

広告規制について相談できる窓口は?

広告表現に不安がある場合、相談できる窓口はいくつかあります。目的に応じて使い分けるとよいでしょう。

主な相談窓口は、以下のとおりです。

相談窓口主な相談内容
弁護士・法律事務所・具体的な広告表現のリーガルチェック・契約書の確認・万が一トラブルになった際の対応・社内研修の依頼
消費者庁表示対策課・景品表示法に関する一般的な解釈や考え方(※個別の広告表現が「違反かどうか」の事前審査は行っていません)
都道府県の担当部署・薬機法や特商法、景品表示法などに関する相談
業界団体・公正取引協議会・各業界の自主ルール(公正競争規約)に関する相談

弁護士であれば、広告表現のリーガルチェックからトラブルまで幅広く対応してくれます。社内での判断に迷った場合は、まず広告規制に精通した弁護士に相談し、法的なリスクを明確にしましょう。

まとめ|広告規制について理解を深めて適切な広告を作成しよう

広告規制は、事業者が公正な市場で活動し、消費者が安心して商品やサービスを選べるようにするために不可欠なルールです。

規制は多岐にわたり複雑ですが、その根本にあるのは「消費者を欺かない」という誠実な姿勢です。広告規制に違反した場合のペナルティは、課徴金や刑事罰といった直接的なものだけでなく、企業の信用失墜という取り返しのつかないダメージを伴います。

まずは、本記事で解説した主要な法律や違反例、そして対策を参考に、社内のチェック体制を今一度見直してみましょう。そして、自社の広告表現に少しでも不安を感じた場合は、決して自己判断で進めず、速やかに弁護士などの専門家に相談することが大切です。

広告規制の対策について悩んでいるなら、弁護士に相談することが大切です。丸の内ソレイユ法律事務所では、企業の業界やサービス内容に併せて適切なサポートを提供しています。継続的なサポートだけでなくスポット型の依頼も可能なため、お気軽にご相談ください。

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