「このプレゼント企画、景表法に違反していないだろうか」と不安に感じたことはありませんか。
SNSやWeb広告を通じたキャンペーンが増える中、知らないうちに法令違反に該当してしまうケースも少なくありません。
景表法は、消費者を誤認させるような広告表現や過大な景品提供を防ぐための法律です。
ルールを正しく理解しないまま企画を進めると、措置命令や行政指導を受けるリスクもあります。自社の信用やブランド価値を守るためにも、事前の知識と確認が欠かせません。
本記事では、プレゼント企画に適用される景表法の基本ルール、景品類の種類と上限金額、違反事例、そして安全に企画を進めるためのチェックポイントをわかりやすく解説します。
企業のプロモーション活動では専門的な法的判断が必要です。不安がある場合は専門家への相談をおすすめします。
「弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所」は、企業の薬機法・広告・新規事業の法規制対応に精通した弁護士が在籍しています。個々の状況に合わせて適切な解決策をご提案できるため、まずはお気軽にご相談ください。

プレゼント企画で該当する景表法の規制
プレゼント企画を実施する際には、景品表示法(景表法)の2つの規制を理解する必要があります。1つ目は「不当表示の規制」、2つ目は「過大な景品類の制限」です。
企業がこれらの規制を理解しておくことで、消費者の誤認を防ぎ、トラブルを回避できるようになります。それぞれの内容を正しく把握し、違反リスクを回避しましょう。
不当表示の規制内容
景表法は、「プレゼント」そのものの金額だけでなく、企画の告知内容にも厳格なルール(不当表示の規制)を設けています。
この規制は、事業者が行う広告やキャンペーン表示によって、消費者に誤解を与え、不利益をもたらす表示を禁止するものです。
景表法第5条では、「優良誤認表示」と「有利誤認表示」の2種類が規制されています。
優良誤認表示は、商品やサービスの品質・性能が実際よりも優れていると誤認させる表示を指します。有利誤認表示は、価格や取引条件が実際よりも有利であると誤認させる表示です。
プレゼント企画の告知においては、特に取引条件(当選確率、応募のしやすさ)に関する表示が、有利誤認表示として問題になりやすい傾向があります。
| 問題となり得る表示 | 該当する規制 | 具体的なリスク |
| 当選者数を実際よりも多く表示する | 有利誤認表示 | 当選確率が高いと誤解させ、不当に応募を誘引する。 |
| プレゼント内容を、写真などで実際よりも豪華に見せる | 優良誤認表示 | 景品の品質・内容を実際よりも優良だと誤認させる。 |
| 「誰でも当たる」「応募者全員」といった表現を曖昧に使う | 有利誤認表示 | 条件を満たさない応募者にも景品が提供されると誤解させる。 |
| 応募条件(例:特定商品の購入必須)を分かりにくく隠す | 有利誤認表示 | 取引条件が実際よりも有利だと誤認させる。 |
これらの表示は、消費者の自主的かつ合理的な選択を妨げるため、厳しく規制されています。
企画の告知内容が事実と異なる場合や、消費者に誤解を与える可能性がある場合は、速やかに正確な情報に訂正することが不可欠です。
過大な景品類の制限内容
「過大な景品類の制限」とは、消費者に提供する景品の価額に上限を設ける規制です。
これは、商品やサービス本来の価値ではなく、景品の豪華さだけで消費者を不当に誘引することを防ぐために規制されています。
「景品類」とは、事業者が消費者に提供するもので、以下の3つの条件をすべて満たすものです。
- 顧客を誘引するための手段として提供されること
- 事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供すること
- 物品、金銭その他の経済上の利益であること
具体的には、金銭、物品、招待券、サービス、割引券、ポイントなど、経済的な価値があるものは、すべて景品類に含まれます。
例えば、商品の購入者全員に提供するノベルティグッズも、購入を前提とし、取引に付随しているため景品類に該当します。「無料だから規制されない」という考えは誤解です。
参照:消費者庁 景品類の制限及び禁止の告示の運用基準について
プレゼント企画で景表法の規制対象となる「景品類」の種類
景表法では、プレゼント企画の提供方法に応じて「景品類」を3つに分類し、分類ごとに上限金額が決まります。
自社の企画が「一般懸賞」「共同懸賞」「総付景品」のいずれに該当するかを正確に判断しなければ、適切な制限を守れず、法令違反のリスクを負うことになります。判断が困難な場合は、専門家への相談を検討してください。
景品類の3つの種類と提供方法は以下のとおりです。
| 景品類の種類 | 提供方法の定義 | 規制の焦点 |
| 一般懸賞 | 抽選、くじ引き、クイズの正誤など、偶然性や優劣によって提供される(企業単独実施) | 取引価額に応じた最高額と総額の制限 |
| 共同懸賞 | 抽選、くじ引きなど、偶然性や優劣によって提供される(複数の事業者が共同実施) | 一般懸賞よりも高額な最高額と総額の制限 |
| 総付景品 | 抽選や競争によらず、購入者や来店者にもれなく提供される | 取引価額に応じた最高額のみ(総額の制限なし) |
各分類の特徴をここでは詳しく解説します。
一般懸賞
一般懸賞とは、抽選、じゃんけん、クイズの正誤、ゲームの優劣など、偶然性や特定の行為の優劣によって景品類を提供する企画を指します。
この企画の最大の特徴は、企業が単独で実施し、かつ商品購入や来店などの「取引」を条件とする点です。
主に、以下のような企画が一般懸賞に該当します。
| 具体的な企画例 | 規制上の注意点 |
| 商品購入者の中から抽選で賞品をプレゼント | 取引価額(商品価格)を正確に算定し、上限額を確認する。 |
| 来店者を対象にしたくじ引きキャンペーン | 取引価額の算定方法について消費者庁のガイドラインを確認し、個別のケースに応じて適切に判断する。 |
| クイズに正解した応募者への景品提供 | 応募に取引(購入など)が伴うかを確認する。 |
一般懸賞は、景品の豪華さだけで取引を誘引しやすい形態であるため、取引価額に応じて景品の最高額が細かく設定されています。
企画実施時は取引価額を正確に算定し、景品価額が上限を超えないよう管理が必要です。
共同懸賞
共同懸賞とは、一定の地域(商店街など)や、一定の業界の複数の事業者が共同で実施する懸賞企画です。
複数の事業者が協力し、消費者全体の選択肢を広げることを目的としているため、単独で実施される一般懸賞とは区別されます。
主に、以下のような企画が共同懸賞に該当します。
| 具体的な企画例 | 規制上のメリットと注意点 |
| 商店街全体で実施する福引きキャンペーン | 高額な景品(最高30万円まで)を設定可能。 |
| 複数の飲食店が共同で行うスタンプラリーによる抽選 | 「共同」と認められるには、費用負担や告知方法など一定の要件を満たす必要がある。 |
| 業界団体が主催する合同抽選会 | 形式的に複数社が関与していても、実質的に単独企業の企画とみなされると一般懸賞の規制が適用される。 |
共同懸賞の最大の特徴は、一般懸賞よりも高額な景品を提供できる点です。
これは、複数事業者の関与により集客効果が分散するため、規制が緩和されています。
ただし、「共同」と認められるには、複数事業者による実質的な協力関係、費用負担の分担、共同での告知実施など、消費者庁が定める具体的な要件を満たす必要があります。
総付景品
総付(そうづけ)景品とは、懸賞(抽選や優劣)によらず、商品・サービスの利用者や来店者に対して、もれなく提供する景品類を指します。
「先着○名様」「購入者全員プレゼント」といった企画がこれに該当し、抽選や競争を伴わないため、懸賞とは区別されるのが特徴です。
主に、以下のような企画が総付景品に該当します。
| 具体的な企画例 | 規制上の注意点 |
| 来店者全員にもれなく配布するノベルティグッズ | 取引価額1,000円未満として扱われ、上限は200円となることが多い。 |
| 商品購入者全員に提供するおまけやサンプル品 | 取引価額(商品価格)を正確に算定し、上限額(取引価額の20%など)を超えないかを確認。 |
| 資料請求者全員へのプレゼント | 取引を伴わない場合は上限200円の規制を受ける。 |
総付景品は「もれなく提供」という性質上、より多くの消費者に景品が行き渡る仕組みです。そのため、景品の価額制限は、懸賞(一般懸賞・共同懸賞)よりも厳しく設定されています。
企業にとっては実施しやすい施策ですが、取引価額に応じた上限額(取引価額の20%など)を厳守しなければなりません。
景表法におけるプレゼントの景品の上限額と金額制限
景品類には、プレゼントの提供方法ごとに上限金額が定められています。
上限額を超える景品を提供すると、景表法違反となり、消費者庁からの措置命令や課徴金納付命令の対象となる可能性があります。
企業の信用に関わる重大なリスクを避けるためにも、懸賞と総付景品の具体的な上限額と、その算出方法を正確に理解しましょう。
懸賞による景品の上限
一般懸賞と共同懸賞の景品には、「一人あたりの最高額」と、「企画全体の総額」の二重の制限が設けられています。
以下が上限金額の計算基準です。
| 懸賞の種類 | 取引価額 | 景品の最高額 | 総額の制限 |
|---|---|---|---|
| 一般懸賞 | 5,000円未満 | 取引価額の20倍まで | 売上予定総額の2%以内 |
| 一般懸賞 | 5,000円以上 | 10万円まで | 売上予定総額の2%以内 |
| 共同懸賞 | 取引価額に関わらず | 30万円まで | 売上予定総額の3%以内 |
一般懸賞において、景品の最高額は取引価額が5,000円未満の場合は、取引価額の20倍までと定められています。
例えば、1,000円の商品購入者を対象とした懸賞の場合、最高額は2万円(1,000円×20倍)までです。
一方、取引価額が5,000円以上の場合、景品の最高額は一律10万円が上限となります。
どちらの場合も、懸賞によって提供される景品類の総額は、その懸賞に関わる商品・サービスの売上予定総額の2%以内に収めなければなりません。
共同懸賞の場合は、一般懸賞よりも大規模な企画が可能なように優遇されており、最高額は30万円、総額は売上予定総額の3%以内が上限です。
総付景品の上限と算出方法
総付景品(購入者全員、来店者全員に提供するもの)の上限額は、景品を受け取るために必要な取引の価額によって、以下のように定められています。
| 取引価額 | 景品の最高額 | 総額の制限 |
|---|---|---|
| 1,000円未満 | 200円まで | なし |
| 1,000円以上 | 取引価額の20%まで | なし |
※懸賞とは異なり企画全体の総額規制はありません。
総付景品の場合、取引価額が1,000円未満であれば、景品の最高額は一律200円です。
例えば、500円の商品を購入した全員にノベルティを配布する場合、ノベルティの価額は200円以内に収める必要があります。
一方、取引価額が1,000円以上の場合、景品の最高額は取引価額の20%までです。例えば、5,000円の商品購入者全員に景品を配布する場合、最高額は1,000円(5,000円×20%)までとなります。
なお、来店者全員に配布するグッズなど、商品の購入を伴わない場合の取引価額算定については、個別のケースごとに判断が必要です。
一般的には上限200円の規制が適用されることが多いですが、適切な判断のため消費者庁の公式ガイドラインで最新の基準を確認し、複雑なケースについては景品表示法に詳しい専門家に相談することをおすすめします。
景表法違反となるプレゼントの例
プレゼント企画の中には、一見問題がないように見えても、景表法の「過大な景品類の制限」または「不当表示の規制」に違反するリスクがあります。
ここでは、実際の事例を参考に、違反となりやすい4つのパターンを紹介します。自社の企画に類似する点がないか、慎重に確認しましょう。
会員登録を前提としたプレゼント企画
無料の会員登録をした人全員、または抽選でプレゼントを提供する企画は、「取引」に付随するか否かによって規制対象となるかが決まります。
消費者庁の見解として、「会員登録自体に経済的対価が伴わない場合には、取引に付随する経済上の利益の提供(一般懸賞)には該当しません」という見解です。
つまり、商品の購入や有料サービスの利用といった「取引」がなく、無料の会員登録だけでプレゼントを提供する場合、原則として景表法の対象外になる場合があります。
ただし、以下のようなケースは規制対象となることがあるため、注意が必要です。
- 会員登録と同時に有料サービスの利用が開始される場合
- 登録時にクレジットカード情報など、実質的に取引と評価できる情報を提供させる場合
- 登録によって、実質的に商品購入やサービス利用を義務付ける内容になっている場合
このような場合は、景品類に該当し、総付景品または一般懸賞の規制対象となる可能性があるため、企画の実態を慎重に確認することが重要です。
当選者数や提供条件を偽装したプレゼント企画
消費者庁は過去に、複数の漫画雑誌の読者プレゼント企画において、実際よりも当選者数を水増しして表示していた出版社に対し、景表法違反(有利誤認表示)に基づく措置命令を出しています。
この事例では、雑誌の懸賞において「抽選で〇名様にプレゼント」と記載していたにもかかわらず、実際には景品を発送しなかったり、当選者数よりも少ない数しか発送しなかったりの事実が確認されました。
さらに、紙面で当選者を発表する際には、架空の名前を使用する行為まで行われていました。
このように、当選者数を水増しして表示する行為や、景品の提供を偽るような行為は違反と判断されます。消費者に「当選確率が高い」「応募すれば得をする」と誤解を与え、不当な応募を誘引したとみなされるからです。
| 問題となりやすい表示 | 規制される理由 |
| 実際の当選者数よりも多い人数を告知する | 当選確率が実際より高いと誤認させる(有利誤認表示) |
| 応募条件(例:購入必須、特定地域限定)を曖昧に記載して誤解を招く | 取引条件が実際より有利だと誤認させる(有利誤認表示) |
| 景品の提供時期や方法を不明確にする | 取引条件が実際より有利だと誤認させる(有利誤認表示) |
企画の実施前に、告知内容が事実と完全に一致しているか、そして景品の提供実態を正確に記載することが、違反を避けるために不可欠となります。
アンケート回答者に対して謝礼を渡す企画
アンケート回答者への謝礼提供時は、景品規制の対象となるかの判断が重要です。アンケート謝礼は、提供方法や告知方法によって景品規制の対象となる場合があります。
以下のように、不特定多数への広告を伴う場合や、継続的な取引を促す目的がある場合は注意が必要です。
| 規制対象となる可能性のあるパターン | 内容 |
| 不特定多数への広告を伴う場合 | 新聞やウェブサイトなど、不特定多数の消費者に向けた広告で「アンケートを実施中!回答いただいた方に○○をプレゼント!」といった告知を行う場合、それは「顧客を誘引するための手段」とみなされます。 |
| 取引の継続を目論んでいるとみなされる場合 | アンケートを継続的に実施することで、顧客に取引の継続を促しているとみなされる場合も、「顧客を誘引するための手段」として景品規制の対象となる可能性があります。 |
景品規制には、「謝礼が、景品ではなく、仕事の対価として支払う正当な報酬と認められる場合は、規制対象外になる」という例外ルールが存在します。
例えば、仕事の報酬として認められるのは、専門家への調査依頼費やモニターへの作業代など、提供された労力や情報に見合う高額な金額を指します。
一方、商品やサービスに関する簡単なアンケートへの回答に対する金品などの提供は、「仕事に見合う正当な報酬」とは認められません。 そのため、アンケート謝礼は原則として「経済的な利益」と見なされます。
もし、顧客獲得や販売促進を目的としたアンケートと判断された場合、謝礼は景品類として規制対象となり、その金額に上限が適用されることになります。
SNS投稿やフォローを前提にしたプレゼント企画
SNSでのフォローや投稿を条件としたプレゼント企画は、その条件に「取引の付随性」があるか否かによって、以下のように景品規制の対象となるかが区別されます。
| 企画の条件 | 規制の適用 | 規制の判断理由 |
| フォロー&リツイートのみ | 規制対象外となる可能性 | 取引に付随しないオープン懸賞と判断できる場合 |
| 商品画像投稿で当選確率優遇 | 一般懸賞として規制対象となる可能性 | 取引(商品)に密接に関連する行為を条件としているため。 |
| 商品購入+SNS投稿 | 規制対象(一般懸賞) | 商品の購入という取引を条件としているため。 |
具体的には、消費者庁のウェブサイトで示されている、以下のようなケースも規制対象になる可能性があります。
| SNSにおいて当社アカウントをフォローし、指定したハッシュタグを付けて投稿することで応募できる懸賞企画を考え、さらに、当社商品の画像や使用感を併せて投稿してくれた場合には、通常よりも当選確率が2倍となる。 |
このように、SNS投稿を応募条件とする場合、事業者が販売促進目的で投稿を求めていると判断されると、景品の上限額規制(一般懸賞)が適用される可能性があります。
「フォローやリツイートなどの単なる拡散を求めるだけか」「商品購入や利用促進を条件にしているか」によって、景表法の規制対象かどうかを判断しやすくなります。
景表法を守って安全にプレゼント企画を行うポイント
景表法に違反しないプレゼント企画を実施するには、法令の正確な理解に基づいた適切な運用が不可欠です。
ここでは、企業がコンプライアンスを守りながら、効果的なキャンペーンを展開するために実践すべき5つのポイントを解説します。
1.景品ごとの上限金額を守って企画する
プレゼント企画を実施する際は、まず自社の企画が「一般懸賞」「共同懸賞」「総付景品」のどれに該当するかを正確に判断することが、法令遵守の出発点です。分類によって適用される上限金額が大きく異なります。
企画を設計する際に確認すべき項目は、以下のとおりです。
| 対応ポイント | 内容 |
| 企画の分類判定 | 「一般懸賞」「共同懸賞」「総付景品」のどれに該当するか |
| 取引価額の正確な算定 | 景品を受け取るために消費者が支払う金額(取引価額)を正確に把握する。 |
| 景品の価額設定 | 景品の価額には、仕入れ価格ではなく、市場における通常の小売価格を用い、上限額に余裕を持った設定をする。 |
例えば、1,000円の商品購入者を対象とした一般懸賞の場合、景品の最高額は2万円(1,000円×20倍)までとなります。
この上限額をギリギリで攻めるのではなく、余裕を持った価額設定を心がけることで、予期せぬリスクを回避できます。
2.景品と値引きの違いを理解して企画を実施する
景品類と値引きは、法律上明確に区別されており、値引きは景品規制の対象外です。この違いを正しく理解することは、コスト削減と法令違反の回避の両面で重要となります。
景品と値引きの具体的な違いと扱い方は以下のとおりです。
| 項目 | 値引き | 景品類 |
|---|---|---|
| 定義 | 商品価格そのものを引き下げる | 取引に付随して別の利益を提供 |
| 規制 | 規制対象外 | 上限額の規制あり |
| 具体例 | 10,000円の商品を8,000円で販売 | 10,000円の商品購入者に2,000円のギフト券 |
実務上のポイントは、代金が安くなっているのが値引きと判断されることが多いですが、別の物や権利(ポイント、ギフト券など)をもらっている場合は、景品と判断される可能性があります。
企画の性質に応じて、値引きとして扱うか景品類として扱うか、正しく設計しましょう。
3.ノベルティや無料配布も「景品」として扱われる点に注意する
「無料だから問題ない」という誤解は、景表法違反につながる非常に危険な思い込みです。
来店者全員に配布するボールペンや、資料請求者全員へのサンプル提供など、取引に付随して提供されるノベルティや無料配布物も、総付景品として規制の対象となります。
無料配布でも規制対象となる代表的なケースは以下のとおりです。
- 来店者全員へのノベルティグッズ配布
- 資料請求者全員へのサンプル提供
- イベント参加者全員へのプレゼント(※参加が取引と認められる場合)
- SNSフォロワー全員へのグッズ配布(※取引付随性がない場合はオープン懸賞)
取引を伴わない場合の総付景品の上限額は200円までです。複数の景品を組み合わせて提供する場合は、その合計額が上限を超えないかを厳密に確認しましょう。
4.消費者庁のガイドライン・業種別告示を確認して適用ルールを理解する
景表法は、すべての企業に共通する基本ルールに加え、業種や企画の形態によって細かなルール(告示・指針)が定められています。法令遵守を確実にするため、常に最新の情報を一次情報源から確認することが重要です。
自社の企画に適用される正確なルールを把握するために、以下の情報源を定期的に確認しましょう。
| 参照先 | 内容 |
| 消費者庁の景品表示法関連ページ | 景品規制に関する運用基準やQ&Aの最新版を確認。 |
| 業種別の告示や指針 | 不動産業や医療業など、特定の業種には独自の規制が設けられている場合があるため、必ず該当告示を確認する。 |
最新の情報を定期的に確認し、法改正や運用の変更に対応することで、自社のコンプライアンス体制をより強く保つことができます。自社だけで判断が難しい場合は、専門家に相談することも有効です。
出典:景品表示法
5.景表法に強い弁護士に依頼をする
プレゼント企画の法令遵守には、法律の専門的な解釈と実務経験が必要です。景品表示法に詳しい弁護士を相談役にすることで、違反リスクを低減できます。
弁護士に相談する具体的なメリットは、以下の表のように企画の準備段階から問題発生時まで、幅広い内容を相談できる点です。
| 法務対応のポイント | 内容 |
| 企画内容の事前リーガルチェック | 企画段階で潜在的な違反リスクを指摘してもらう。 |
| 景品規制の適用判断に関する助言 | 複雑なケースでの景品規制の適用(一般懸賞かオープン懸賞かなど)を正確に判断する。 |
| 違反の疑いをかけられた際の迅速な対応 | 消費者庁からの問い合わせや調査に対し、適切に対応する。 |
企業のコンプライアンス体制を強化し、「知らなかったでは済まされない」事態を避けるためにも、専門家との連携は非常に重要です。
景表法とプレゼント企画に関するよくある質問
景表法の金額は何%で決まる?
景表法における景品の上限金額は、「何%」という一律のルールで決まるわけではありません。景品類の種類によって、「〇倍」「〇円」「〇%」という複数の制限が適用されます。
特に、企画全体の総額と総付景品の最高額については、パーセンテージ(割合)で上限が定められています。
景品類の種類ごとの上限は、以下の表のとおりです。
| 景品類の種類 | 取引価額 | 最高額 | 総額 |
|---|---|---|---|
| 一般懸賞 | 5,000円未満 | 取引価額の20倍 | 売上予定総額の2% |
| 一般懸賞 | 5,000円以上 | 10万円 | 売上予定総額の2% |
| 共同懸賞 | 問わず | 30万円 | 売上予定総額の3% |
| 総付景品 | 1,000円未満 | 200円 | なし |
| 総付景品 | 1,000円以上 | 取引価額の20% | なし |
一般懸賞の場合、取引価額の20倍(取引価額が5,000円以上の場合は10万円)までが最高額です。総額は売上予定総額の2%以内となります。
共同懸賞の場合、最高額は30万円まで、総額は売上予定総額の3%以内です。
総付景品の場合、取引価額が1,000円未満なら200円まで、1,000円以上なら取引価額の20%までが上限となります。
このように、景品の上限額は、最高額が取引価額の倍数や定額で決まる一方で、総額や一部の最高額が割合(パーセンテージ)で決められています。企画の種類ごとに適切な上限を守ることが重要です。
ポイント還元やキャッシュバックはどう扱われる?
ポイント還元やキャッシュバックは、景品類として扱われる場合と、値引きとして扱われる場合があります。
ポイント還元・キャッシュバックの扱いは、以下の表のとおりです。
| 提供方法 | 扱い(実質) | 規制の適用 | 実務上の判断基準 |
| 購入者全員に一律付与(例:購入金額の1%還元) | 値引き | 規制対象外 | 価格そのものの引き下げとみなされるため。 |
| 抽選で一部の購入者に高額付与 | 景品類(懸賞) | 上限額の規制あり | 偶発性により景品目的の誘引性が高いため。 |
| 条件達成者に付与(例:3か月連続利用でボーナス付与) | 景品類(総付景品) | 上限額の規制あり | 取引に付随して別の経済的利益を提供しているため。 |
購入金額に応じて一律に付与されるポイントは、値引きとして扱われ、景品規制の対象外です。
しかし、抽選で一部の購入者にのみ高額なポイントを付与する場合は、懸賞景品として規制の対象となります。
また、キャッシュバックも同様に、全員に一律で提供される場合は値引き、抽選や条件付きの場合は景品類として扱われるのが基本です。
企画の設計次第で扱いが大きく変わるため、「全員一律か、一部の人のみか」「抽選要素があるか」を基準に、慎重に判断することが求められます。
業種ごとに規制が異なる場合はある?
景表法の基本的なルール(不当表示の規制や景品類の上限額規制)は、原則としてすべての業種に共通して適用されます。
しかし、特定の業種においては、景表法の下で定められた独自の細かな規制や、業界団体による自主的な規制が上乗せされる形で存在する場合があります。
| 業種 | 特有の規制の有無 | 規制の主な内容 |
| 一般業種 | 基本ルールのみ適用 | 景表法の「一般懸賞」「総付景品」の基本ルールが適用。 |
| 不動産業 | あり(告示・公正競争規約) | 広告表現や景品提供について、一般景品規制よりも厳格な基準が設定されている。 |
| 医療業 | あり(告示・公正競争規約) | 景品提供に関する独自の制限や、医療広告ガイドラインによる規制がある。 |
| 新聞業 | あり(公正競争規約) | 新聞の普及を目的とした景品(例:購読契約への付随景品)に関する独自の規制がある。 |
| その他 | あり(公正競争規約) | その他、特定の商品・サービスの公正競争規約が設定されている業種では、独自の規制がある。 |
例えば、不動産業や医療業などでは、消費者保護の観点から、広告表現や景品提供についてより厳格な基準(公正競争規約など)が設けられていることが一般的です。
自社の業種に特有のルール(公正競争規約や業界の自主基準)がないか、業界団体や消費者庁の情報を確認することが非常に重要です。不明な点がある場合は、法令遵守を確実にするためにも、専門家に相談し、適切な対応を取りましょう。
まとめ|景表法を理解して安心・安全なプレゼント企画を進めよう
プレゼント企画やキャンペーンは、消費者との信頼関係を築くうえで有効な手段ですが、景表法への正しい理解と遵守が欠かせません。
景品類の種類ごとに定められた上限金額や提供条件を守り、誤解を招く表現を避けることが、長期的に企業ブランドを守ることにつながります。
特に、SNSやWeb広告で実施するプレゼントキャンペーンは、拡散力が大きい分、一つの不適切な表現や景品設定が法令違反とみなされるリスクも高まります。
「これくらいなら大丈夫だろう」という安易な判断が、後に企業の信用失墜や行政処分に発展するケースも少なくありません。
本記事を参考に、自社のプレゼント企画が景表法に抵触していないかを今一度チェックし、安全で効果的なプロモーション設計を行いましょう。
広告・キャンペーン運用の現場では、迅速かつ正確な法的判断が求められます。
「弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所」では、薬機法・景表法の実務経験が豊富な弁護士が、企画段階からのリーガルチェックや運用後のトラブル対応まで一貫サポートしています。法令を踏まえたキャンペーン設計に不安がある場合は、ぜひお気軽にご相談ください。
