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サプリメント広告の薬機法・景表法ガイド|弁護士が違反事例とNG表現、媒体別対策を徹底解説

「サプリメント広告の表現で注意すべきことは?」
「サプリメント広告が違反になるとどうなる?」

サプリメント広告の規制は年々厳しくなっており、意図せぬ違反で高額な課徴金を課されるケースが後を絶ちません。「知らなかった」では済まされないため、適切に制度を理解することが大切です。

本記事では、サプリメント広告に必須の「薬機法」と「景品表示法」の基本を弁護士が解説します。さらに、具体的なNG表現集や最新の違反事例と罰則、LP・SNS・アフィリエイトといった媒体別の対策まで紹介します。

自社のサプリメント広告が法規制に違反していないか不安な方は、専門家に相談することが大切です。丸の内ソレイユ法律事務所は、企業の薬機法・広告の法規制対応に精通した弁護士が在籍しています。個々の状況に応じて適切な解決策をご提案できるため、まずはお気軽にご相談ください。

サプリメント広告で知るべき2大規制「薬機法」と「景品表示法」

サプリメント広告を作成・運用するうえで避けて通れないのが法律の壁です。とくに「薬機法」と「景品表示法」は、重要かつ違反事例の多い2大規制といえます。

知らずに違反すれば、重い罰則を受けるリスクがあるため、本章でそれぞれの法律の核心を正確に理解しましょう。

規制の対象者:「何人も」(メーカー、代理店、アフィリエイター)が対象

「広告主(メーカー)の指示だから大丈夫」という考えは危険です。薬機法における広告規制の対象は「何人も」と定められています。

これは、広告に関わるすべての人を指します。具体的には、以下の全員が規制対象です。

  • サプリメントを製造・販売するメーカー
  • 広告の企画・運用を行う広告代理店
  • 商品を紹介するアフィリエイターやインフルエンサー

たとえメーカーから提供された素材をそのまま使っただけでも、アフィリエイターが責任を問われた事例は存在します。

自分の身を守るためにも、関わる全員が正しい知識を持つことが重要です。

薬機法(旧薬事法)とは?サプリメント広告における「4つの判断基準」

薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)は、医薬品等でないものについて、医薬品的な効果をうたうことを厳しく禁止しています。

サプリメント広告では、厚生労働省の通知に基づき、以下の4つの要素から医薬品に該当するか否かが判断されます。

判断基準内容
1. 成分(原材料)医薬品として「専ら使用される成分」を含んでいる、または含んでいるように誤認させる表示になっていないか
2. 剤型(形状)錠剤・アンプル・スプレーなど、医薬品を連想させる形状になっていないか
3. 用法・用量「1日◯回服用」「食後に摂取」など、医薬品のような明確な服用方法を示していないか
4.効果効能の標ぼう「治る」「改善する」「予防できる」など、医薬品の効果効能をうたっていないか

出典:厚生労働省|無承認無許可医薬品の指導取締りについて

サプリメント広告で問題となりやすいのが「4.効果効能の標ぼう」の基準です。たとえ事実であっても、「疾病の治療・予防」や「身体機能の増強」を示唆する表現は認められません。

違反した場合、2年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金又はこれらの併科が科されます(薬機法第85条)。

また、令和3年8月1日施行の改正法により、虚偽・誇大広告には対象商品の売上額の4.5%の課徴金が課されることとなりました(薬機法第75条の5の2)。

景品表示法(景表法)とは?「優良誤認」と「有利誤認」

景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)は、消費者が商品やサービスを選ぶ際の誤解を防ぐ法律です。広告において、実際よりも著しく良く見せる「不当表示」を禁止しています。

サプリメント広告では、とくに以下の2つの不当表示が問題となります。

優良誤認表示商品の品質や内容を、実際よりも著しく優れていると誤解させる表示です。
例:「飲むだけで-10kg」「医師100名が推奨」(客観的な根拠がない場合)
有利誤認表示商品の価格や取引条件を、実際よりも著しく有利(お得)であると誤解させる表示です。
例:「今だけ半額」(実際には長期間その価格で販売している場合)

景表法違反と判断されると、消費者庁から表示の取りやめを命じる「措置命令」が出されます。措置命令に違反した場合、2年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金の対象となります(景品表示法第46条)。

加えて、令和6年10月1日施行の改正法により、優良誤認表示・有利誤認表示については、措置命令を経ずに100万円以下の罰金を科す直罰規定が新設されました(景品表示法第48条)。

さらに、違反が認められると「課徴金」(原則として対象商品の売上額の3%)が課される可能性があります。ただ、課徴金額が150万円未満となる場合は賦課されません(景品表示法第8条第1項)。

健康増進法、食品表示法との関係性

サプリメント広告は、薬機法と景表法だけで完結しません。

以下の法律も密接に関連しています。

法律名概要とサプリメント広告への影響
健康増進法薬機法と同様に、食品(サプリメント)について「著しく事実に相違する表示」や「著しく人を誤認させるような表示」を禁止しています。
とくに健康保持増進の効果について、虚偽・誇大な表現を規制する点が重要です。
食品表示法商品パッケージの裏面表示(原材料名、内容量、栄養成分表示など)を規律する法律です。
広告(外面)とパッケージ(内面)の表示内容が食い違っていると、景表法違反(優良誤認)を問われる可能性があります。

これらの法律は、それぞれ規制する側面が異なります。

広告表現(薬機法・景表法・健康増進法)と、製品そのものの表示(食品表示法)が、すべて連動して適法でなければならない点を覚えておきましょう。

【ジャンル別】サプリメント広告NG表現・言い換え(OK)表現集

サプリメント広告で頭を悩ませるのが、具体的な「言葉選び」です。薬機法や景表法に違反しないためには、医薬品的な効果や断定的な表現を避け、食品として許容される範囲の表現に留めなければなりません。

本章では、特に違反事例が多い4つのジャンルについて、具体的なNG表現と、代替可能なOK表現の考え方を解説します。

  • ①ダイエット(痩身)系
  • ②美容(エイジングケア)系
  • ③腸内環境(便秘)系
  • ④免疫・疲労回復系

ただし、OK表現も組み合わせや文脈次第でNGとなるため、絶対的な正解ではない点にご注意ください。

関連記事:健康食品の広告に対する薬機法の規制

①ダイエット(痩身)系

ダイエット系サプリは、景表法の「優良誤認」と薬機法の「身体機能の変化」の観点から、厳しく監視されている対象の一つです。

「飲むだけ」「簡単」といった表現と、具体的な効果(痩せる、脂肪が消える)を組み合わせることはできません。

具体的なNG表と言い換えは、以下のとおりです。

NG表現(違反のおそれ)OK表現(言い換え例)
飲むだけで痩せるダイエット(※)をサポート
脂肪を燃焼・分解する燃える毎日を応援します
食欲を抑える食事のバランスが気になる方へ
腸内環境をリセット毎日のスッキリを助ける
体質改善サプリ美容と健康のベースに

(※)「ダイエット」という言葉自体は使用可能ですが、その意味は「(運動や食事制限と併用した)健康的な体重管理」を指す必要があります。「飲むだけで痩せる」という意味で用いることはできません。

あくまで「栄養補給」や「健康的な生活のサポート」という立ち位置を崩さないことが重要です。

関連記事:「ダイエット」の広告表現について

②美容(エイジングケア)系

美容(エイジングケア)系では、「老化(エイジング)」そのものを止める、あるいは「若返る」といった表現は薬機法違反となります。

また、シミやシワが「消える」といった皮膚科医薬品のような表現もできません。

「エイジングケア」という言葉は、「年齢に応じた栄養補給やお手入れ」という意味でのみ使用可能です。

以下、NG表現と言い換え例をまとめました。

NG表現(違反のおそれ)OK表現(言い換え例)
肌が若返る、アンチエイジング年齢に応じた栄養補給
シミ・シワが消えるハリのある毎日をサポート
肌を修復・再生する美容成分(コラーゲンなど)を補給
老化を防止する若々しい印象を目指したい方へ
白髪が黒髪に戻るツヤのある毎日を

美容系では、「うるおい」「ハリ」「ツヤ」といった、肌の物理的な状態や、栄養補給による健康的な印象を表現する言葉は許容されています。

一方、身体の組織機能や構造自体が変化するような表現は、厳しく禁止されている点に注意が必要です。

関連記事:「エイジングケア」という言葉は広告に使えるか?

③腸内環境(便秘)系

「便秘」は医学用語(疾病名)であるため、サプリメント広告で使用することは薬機法違反となります。「便通改善」「お通じが良くなる」といった、腸の機能が具体的に変化する表現も同様にNGです。

「スッキリ」「快調」といった言葉も、便通を直接的に連想させる文脈で使うと違反と判断されるリスクが高まります。

主なNG表現と言い換え表現の例は、以下のとおりです。

NG表現(違反のおそれ)OK表現(言い換え例)
便秘を解消・改善する毎日のリズムを整えたい方に
お通じが良くなるスッキリ(※)した朝を迎えたい
腸内を洗浄する内側からキレイをサポート
腸内環境改善善玉菌を(食品として)補う
デトックス(毒素排出)ため込まない食生活の補助に

※「スッキリ」という言葉は多義的ですが、便通改善の文脈で用いるとNGです。「気分的なスッキリ」など、健康的な生活習慣の比喩として用いる必要があります。

あくまで「乳酸菌」「食物繊維」といった食品成分の補給が目的である、という点を逸脱しない表現が求められます。

④免疫・疲労回復系

「免疫」や「疲労」に関する表現は、薬機法違反のリスクが高い分野とされています。

「免疫力を高める」「免疫アップ」は、身体の機能増強にあたり、明確な違反です。また、「疲労が回復する」「疲れが取れる」といった表現も、医薬品的な効果効能とみなされます。

主なNG表現と言い換え例は、以下のとおりです。

NG表現(違反のおそれ)OK表現(言い換え例)
免疫力を高める・アップ負けないカラダづくりをサポート
ウイルス対策、風邪予防季節の変わり目の体調管理に
疲労回復、疲れが取れるもうひと頑張りしたい時に
滋養強壮、精力増強エネルギッシュな毎日を送りたい方へ
抵抗力をつける元気に過ごしたい方への栄養補給

あくまで、「エネルギーチャージ」「頑張るあなたを応援」といった、栄養補給や気分的なサポートの表現に留める必要があります。身体の根本的な機能(免疫、疲労)に言及しないことが重要です。

【弁護士視点】グレーゾーン表現の判断基準

法令違反かどうかは、単語一つではなく広告全体の文脈で判断されます。そのため、「この表現なら大丈夫だろうか」など、グレーゾーンの判断は難しい問題です。

グレーゾーンの場合、最終的には、「一般消費者がどう受け取るか」が判断基準となります。弁護士がチェックする際に考慮するポイントは、以下のとおりです。

表現の強さ(断定・誇張)「必ず」「絶対」「100%」といった断定的な表現は、景表法(優良誤認)のリスクが極めて高いです。
根拠(エビデンス)の有無「No.1」「医師推奨」などをうたう場合、客観的で正確な調査データが必須です(景表法)。
打消し表示の適切さ「※個人の感想です」「※効果を保証するものではありません」といった小さな注釈(打消し表示)で、本文の誇大な表現の効果を打ち消すことはできません。
医薬品的な暗示(ビフォーアフター)写真やイラスト、グラフ、体験談などを用い、言葉を使わずに効果(痩せた、シミが消えた等)を暗示することも、薬機法違反とみなされます。

消費者が「これは医薬品と同じ効果がある?」と誤解する可能性がある表現は、違反になる可能性が高いです。表現に悩んでいる場合は独断で公開せず、必ず弁護士に相談するようにしましょう。

関連記事:健康食品の表示・広告の見方と違反事例

サプリメント広告の薬機法違反事例(2020~2025年)

2020年以降、特に行政指導や課徴金納付命令が目立った違反類型は、消費者のコンプレックスや不安を煽るジャンルに集中しています。

本章では、近年の典型的な違反事例のパターンと、違反した場合の重い罰則について具体的に解説します。

自社の広告が類似の表現を用いていないか、厳しくチェックしてみてください。

事例①「肝臓の機能改善」— 疾病の治療・予防の標ぼう

健康診断の結果を気にする層に向けたサプリメント広告で、「肝臓の機能改善」「数値が正常に」といった表現を用いたケースです。

これは、サプリメント(食品)があたかも疾病の治療や予防に効果があるかのようにうたうもので、薬機法違反の典型例といえます。

違反と判断されるポイントは、以下のとおりです。

  • 「肝臓」という具体的な身体の部位(臓器)に言及している点
  • 「機能改善」という、身体の組織機能の具体的な変化を標ぼうしている点
  • 「数値が下がる」など、医師による診断が必要な医学的効果を暗示している点

たとえ、そのサプリに含まれる成分に特定の研究データがあったとしても、サプリメント(食品)として販売する以上、医薬品的な効果は一切謳えません。

「乾杯の席が多い方へ」「翌朝のスッキリをサポート」など、具体的な疾病や機能から離れた、ライフスタイルに寄り添う表現に留める必要があります。

事例②「コロナ予防サプリ」— 未承認医薬品の広告

社会的な不安が高まる時期に、特定のウイルス名や感染症の名称を挙げ、「予防できる」と謳う広告も、悪質な違反事例とされました。

違反と判断されたポイントは、サプリメント(食品)であるにもかかわらず、特定の疾病(ウイルス感染症)の予防効果を標ぼうしている点です。

これらは、国が承認した「医薬品」でなければ広告できず、サプリメントが行えば「未承認医薬品の広告」に該当します。

「免疫力アップ」「抵抗力を高める」といった関連表現も、身体の組織機能の増強にあたり、同様に薬機法違反です。

「季節の変わり目の体調管理に」「負けないカラダづくりをサポート」といった、栄養補給や健康維持の範囲内に留める必要があります。

事例③「飲むだけで痩せる」— 景表法(優良誤認)と薬機法違反

ダイエット系サプリメントは、違反が多いジャンルの一つです。

「飲むだけで痩せる」「1か月で-10kg達成」といった表現は、景表法と薬機法の両方に違反する可能性があります。

景品表示法違反(優良誤認)の側面合理的な根拠(臨床試験データなど)がない限り、「飲むだけ」で「痩せる」という効果を謳うことは、実際の商品内容よりも著しく優れていると誤認させる「優良誤認表示」にあたります。
消費者庁は、こうした表示を行う事業者に対し、効果の根拠を示す資料の提出を求めます。根拠を示せなければ、措置命令や課徴金の対象です。
薬機法違反の側面「痩せる(痩身)」は、身体の組織機能の変化(脂肪の減少など)を意味します。
これを標ぼうすることは、医薬品的な効果を謳うことになり、薬機法違反にも該当します。

違反を避けるには、「運動時のエネルギーチャージに」「ダイエット中の栄養補給」など、あくまで運動や食事管理と併用する「食品」としての立ち位置を明確にする必要があります。

違反した場合の罰則:拘禁刑、罰金、そして「課徴金(売上の4.5%)」

万が一、薬機法や景品表示法に違反した場合、事業者は「社会的信用の失墜」と「金銭的ダメージ」という二重の打撃を受けます。

主なペナルティを以下の表にまとめました。

法律主な罰則(個人・法人)課徴金(行政処分)
薬機法(虚偽・誇大広告)【個人】2年以下の拘禁刑(※)または200万円以下の罰金
【法人】
200万円以下の罰金
違反期間中の対象商品の売上額の4.5%
景品表示法(優良誤認など)【個人】
(措置命令違反の場合)2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
【法人】
(措置命令違反の場合)3億円以下の罰金
違反期間中の対象商品の売上額の3%(最大3年間遡及)

※拘禁刑:2025年6月施行の改正刑法により、従来の「懲役刑」と「禁錮刑」が一本化されたもの

出典:e-Gov法令検索|医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
出典:e-Gov法令検索|不当景品類及び不当表示防止法

注目すべきは、薬機法の課徴金が「売上の4.5%」と、景表法の「3%」より重く設定されている点です。

これは、医薬品的な効果を偽る行為が、人の生命・健康に直結する重大な違反であるという行政の厳しい姿勢の表れといえます。

関連記事:陥りやすい薬機法(薬事法)違反の例と刑罰とは?

【媒体別】広告実践ガイド(LP・SNS・動画・アフィリエイト)

サプリメント広告の規制は、どの媒体で表示するかによっても注意点が異なります。

テキスト中心のLPと画像や動画が中心のSNSでは、違反とみなされるポイントが変わるのが特徴です。

本章では、主要な広告媒体ごとに、特有のリスクと実践的な対策を解説します。自社が利用する媒体の特性を理解し、適切な広告運用を行いましょう。

LP・Webサイト— 消費者庁の巡回監視とASP審査のポイント

LP(ランディングページ)や自社ECサイトは、商品購入の「入口」であり、最も情報量が多い媒体です。そのため、行政やASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)による監視が厳しい場所でもあります。

行政は、専用のシステムや「健食ウォッチャー」による人的監視で、Webサイトを常に巡回しています。とくに問題視されるのは、本文のテキストだけでなく、体験談やビフォーアフター写真、グラフなどによる「効果の暗示」です。

景表法における「打消し表示」(※個人の感想です)が、本文の優良誤認を打ち消すほど明瞭に記載されているかも厳しくチェックされます。

また、アフィリエイターに広告(案件)を解放する前に、ASPはLPの薬機法・景表法チェックを必ず行います。審査が通らなければ、アフィリエイト広告を開始できません。

一度違反が認定されると、デジタルタトゥーとして残り続けるリスクがあります。公開前に最も厳重なリーガルチェックが必要です。

SNS(Instagram, X, TikTok)— ステマ規制とインフルエンサー投稿

Instagram・X・TikTokなどのSNSは、拡散力が高い一方で、個人の投稿と広告の境界が曖昧になりやすい危険な媒体です。

景品表示法に基づき、ステルスマーケティング(ステマ)が明確に禁止されました。インフルエンサーに商品を提供して投稿を依頼する場合は、必ず「#PR」「#広告」「#プロモーション」といった明記が必須です。

これを怠ると、インフルエンサーではなく、広告主(メーカー)が景表法違反として措置命令の対象となります。

インフルエンサーの投稿が広告主の依頼・提供・指示によるものであれば「広告」と判断され、薬機法・景表法の規制対象になります。広告主の関与がない純粋な自主投稿は、薬機法上の規制対象には該当しません。

SNS運用では、投稿内容の管理体制を確立し、起用するインフルエンサーへの法規制教育を徹底することが不可欠です。

関連記事:景品表示法で規制されるステマ規制とは?過去のステマ事例紹介

YouTube・動画広告— 音声や映像による「効果の暗示」のリスク

YouTubeなどの動画広告は、テキスト広告よりも情報量が多く、視聴者の印象に残りやすい反面、特有のリーガルリスクが存在します。

薬機法や景表法の規制対象は、テキスト(文字)だけではないためです。

たとえば、音声で読み上げることはテキストで書くことと同義であり、薬機法違反になります。動画内のテロップも、同じく規制対象です。

また、サプリを飲んだ後にお腹がスリムになるような映像表現も、「痩身」という身体の変化を暗示する薬機法違反となります。

動画は、視聴者の感情に訴えかける力が強い分、一歩間違えれば重大な誤解を与えます。映像・音声・テキストの全てにおいて、医薬品的な効果を暗示していないか、入念なチェックが大切です。

アフィリエイト記事— 広告主(メーカー)の管理監督責任

アフィリエイターが作成する比較記事やレビュー記事は、消費者にとって有力な情報源ですが、広告主にとってはコントロールが難しい領域です。

しかし、2023年のステマ規制導入以降、広告主はアフィリエイト広告に対しても「管理監督責任」を負うことが明確化されました。

ASPやアフィリエイターに対し、明確な広告ガイドライン(NG表現集など)を提示することが大切です。

また、アフィリエイターの掲載記事を定期的にパトロールし、違反表現があれば修正を依頼しましょう。悪質な違反を繰り返すアフィリエイターとは、提携を解除することも重要です。

「アフィリエイターが勝手にやったこと」という言い訳は通用しません。自社のブランドイメージを守るためにも、管理体制の構築を急ぎましょう。

【事例研究】大手メーカーの広告LPはなぜ薬機法をクリアできるのか

「大手メーカーの広告では、効果を謳っているように見えるのになぜ大丈夫なのか?」と疑問に思うかもしれません。

その理由は、主に以下の3点です。

  1. 「トクホ」または「機能性表示食品」である
  2. 厳格な言葉選び(「OK表現」の範囲内)をしている
  3. リーガルチェックを徹底している

法律は、企業の規模によって緩くなったり厳しくなったりすることはありません。大手メーカーが薬機法をクリアできるのは、法律のルールを厳格に守った上で広告を作成しているからだと理解しておきましょう。

アフィリエイター・インフルエンサー個人の法的責任と対策

サプリメント広告の規制は、メーカーや広告主だけの問題ではありません。記事を作成するアフィリエイターや、商品を紹介するインフルエンサー個人も、薬機法や景表法違反の責任を問われるリスクを負っています。

本章では、個人が負うべき法的な責任と、身を守るための具体的な対策について解説します。

「広告主の素材をそのまま使った」場合の責任の所在

アフィリエイターやインフルエンサーが法的責任を問われるか否かは、「広告の作成にどれだけ関与したか」で判断されます。

広告主(メーカー)から提供されたバナーや紹介文(LP)を、一切変更せずそのまま掲載しただけの場合、原則として責任を問われる可能性は低いです。この場合、広告表現の責任は、その素材を作成した広告主にあるとみなされます。

ただ、明らかに違法な表現と知りながら掲載を続けた場合、薬機法違反の直接的な行為者として行政処分の対象となる可能性もゼロではありません。

また、刑事責任においては幇助犯(刑法第62条)として、民事責任においては共同不法行為者(民法第719条)として責任を問われる可能性があります。

素材をそのまま使う場合でも、最低限の法令知識を持ち、危険な広告主とは取引しない姿勢が重要です。

「独自に表現をリライトした」場合のリスク

個人の裁量で表現をリライトした場合は、法的責任を問われる可能性が高いです。

例えば、以下のようなケースが該当します。

  • メーカーのLPを参考に、自分の言葉でレビュー記事を作成した
  • SNSで、メーカーの意図を超えた効果(「便秘が治った」など)を投稿した
  • 提供された素材に「私個人の感想ですが、本当に若返りました」と付け加えた

これらは、アフィリエイターやインフルエンサー自身が「広告表現の作成者(広告主)」とみなされる行為です。

万が一、その表現が薬機法や景表法に違反した場合、行政指導や罰則、課徴金の対象となる可能性があります。

独自表現は訴求力を高められますが、責任もすべて自分で負う覚悟が必要です。

違反時の報酬没収・契約解除リスク(ASPガイドライン)

法令違反のリスクは、行政罰だけではありません。アフィリエイト・サービス・プロバイダ(ASP)も、独自の広告ガイドラインを設けています。

もし違反が発覚した場合、ASPから以下のようなペナルティを受ける可能性があるでしょう。

  • 該当記事の掲載停止・修正命令
  • 違反が続く場合、アカウントの停止・強制退会
  • 不正に発生したアフィリエイト報酬の全額没収
  • 広告主からの契約解除・提携解除

法令違反は、ASPや広告主との信頼関係を根本から破壊する行為です。長期的に収益を上げ続けるためにも、クリーンな広告運用が欠かせません。

個人が実践できる薬機法セルフチェックリスト

アフィリエイターやインフルエンサーが、記事公開前に最低限確認すべきセルフチェックリストを紹介します。

一つでも該当する場合は、表現の見直しが必要です。

チェック項目確認のポイント(例)
1.疾病の治療・予防をうたっていないか「便秘が治る」「風邪予防」「高血圧の改善」など
2.身体機能の変化をうたっていないか「免疫力アップ」「脂肪燃焼」「肌が再生する」など
3.特定の部位を明示していないか「腸内環境」「肝臓の機能」「血液サラサラ」など
4.断定的な表現を使っていないか「必ず」「100%」「絶対に痩せる」など
5.ビフォーアフターで効果を暗示していないか体重計の数字変化、シミが消えた写真比較など
6.医師の推薦を誤用していないか根拠なく「医師推奨」「医療機関で採用」など
7.体験談で効果を保証していないか「これを飲んだら疲れが取れた」など
※「個人の感想です」等の打消し表示を付しても、一般消費者が効果はあると認識する場合は違反となる可能性があります

※このリストはあくまで一部です。
※法令・判例の更新により、内容が変更される可能性があります。
※個別の事案については、事実関係・証拠・管轄当局の解釈・最新の法令改正等により結論が異なる場合があります。詳細は弁護士などの専門家にご相談ください。

少しでも迷ったら、より安全な表現に置き換えましょう。また、弁護士に相談し、適切な判断を仰ぐことも重要です。

【専門家視点】サプリメント広告規制の最新動向とデータ

サプリメント広告を取り巻く規制環境は、社会情勢や新たな違反事例に対応して常に変化しています。サプリメント広告の規制について理解を深めるためには、規制の歴史や動向を把握することも大切です。

ここからは、薬機法改正の歴史や違反の実態、自治体による監視指導の傾向を解説します。

薬機法改正の歴史タイムライン(2014年~2025年)

サプリメント広告に影響を与えた近年の法改正は、規制強化の一途をたどっています。主な法改正と広告への影響は、以下のとおりです。

年月法改正・動向広告への影響
1943年薬事法制定医薬品の製造・販売が制度化されました。
1960年薬事法の大改正副作用被害の増加を受け、製造承認制度が強化されました。
2014年医薬品・医療機器等法(薬機法)に名称変更「医薬品等」の定義が明確化され、広告規制の解釈が厳格化されました。
2019年医薬品ネット広告規制強化(景表法との連携)誇大表示対策、広告ガイドラインが整備されました。
2021年改正薬機法施行薬機法第66条第1項(虚偽又は誇大広告等の禁止)に違反する行為をした者に対して、売上の4.5%の課徴金制度が導入されました。
2023年10月ステマ規制(景表法)事業者の表示であることを隠した広告(ステルスマーケティング)が不当表示の対象となりました。

とくに2021年には、違反時の課徴金制度も導入されています。景表法(3%)より重い4.5%として設定されており、薬機法違反を厳しく取り締まる流れが明確になりました。

業界統計データで見る違反の実態

消費者庁の発表によると、令和5年度における景品表示法違反案件の調査件数は229件、そのうち措置命令44件、課徴金納付命令12件となりました。

また、令和5年度には、インターネット上の食品広告について「健康増進法第65条違反」の恐れがあるとして771事業者・792商品に改善指導が実施されています。

さらに令和7年度時点でも健康増進法に基づくインターネット監視が継続されています。1〜3月には108事業者・157商品、4〜6月には139事業者・140商品が虚偽・誇大表示として改善指導の対象となりました。

このように、毎年数百社規模で問題広告が把握されています。業界全体として景品表示法・健康増進法を踏まえた表現管理の徹底が急務であることが伺えるでしょう。

出典:消費者庁|令和5年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組
出典:消費者庁|インターネットにおける健康食品等の虚偽・誇大表示に対する改善指導について

自治体別(東京都・大阪府等)の監視指導の傾向

薬機法や景表法の監視は、国の機関だけでなく、各都道府県の薬務課や消費生活センターも行っています。

とくに東京都や大阪府といった大都市圏は事業者が多いため、監視が目立つ傾向があります。

東京都の傾向健康食品の広告監視(健食ウォッチャー)を積極的に実施しています。
WebサイトやSNSを網羅的にパトロールし、違反の疑いがある事業者には迅速に改善指導が入ります。
東京都独自のチェックリスト・注意喚起資料も公表している点が特徴です。
大阪府の傾向薬機法関連の処分事例・指導事例が多い自治体の一つです。
悪質なケースでは告発(刑事処分)に至った事例も存在します。

ただ、広告は全国の消費者に届くため、事業所の所在地に関わらず厳しくチェックすることが重要です。

サプリメント広告のリーガルチェックを弁護士に依頼するメリット

「自社でガイドラインを学べば十分」「広告代理店のチェックで問題ない」と考える企業は少なくありません。しかし、法律の解釈は日々更新されており、表面的な知識だけでは重大なリスクを見逃す可能性があります。

そのため、サプリメント広告という高リスクな分野においては、法律の専門家である弁護士による「リーガルチェック」を受けることが重要です。

リーガルチェックを弁護士に依頼すると、以下のようなメリットがあります。

  • メリット①:最新の法令・判例に基づく正確なジャッジ
  • メリット②:行政指導・訴訟リスクの最小化
  • メリット③:社内チェック体制の構築サポート(教育・研修)
  • メリット④:広告代理店・OEM企業との違い(法的責任の範囲)

以下、それぞれ具体的に解説します。

メリット①:最新の法令・判例に基づく正確なジャッジ

弁護士は、法律の条文だけでなく、日々更新される最新の判例や行政指導の通達に基づいて広告表現の適法性を判断してくれます。

薬機法や景表法の解釈は、時代と共に変化します。昨日までOKだった表現が、今日NGになることも珍しくありません。

とくに、「ステマ規制」の導入や「課徴金」の適用事例など、最新の法改正や運用実態を踏まえたジャッジは専門家でなければ困難です。

弁護士によるチェックは、その時点での「最も正確な法的見解」を得るための最良の手段といえるでしょう。

メリット②:行政指導・訴訟リスクの最小化

弁護士によるリーガルチェックを経るメリットとして、「予防法務」も挙げられます。

事前に弁護士が介入し、違法な表現の芽を摘んでおくことで、以下のような最悪の事態を回避することが可能です。

  • 消費者庁や保健所からの行政指導・措置命令
  • 薬機法違反による課徴金の納付(売上の4.5%)
  • 景表法違反による課徴金の納付(売上の3%)
  • 消費者からの集団訴訟(損害賠償請求)
  • 逮捕・拘禁刑といった刑事罰(悪質な場合)

一度でも行政処分を受けると、金銭的な損失に加え、企業のブランドイメージは著しく毀損します。事前にリスクを回避するうえで、弁護士の法的知識が役立つでしょう。

また、万が一違反となった場合にも適切に対処することが可能です。違反時のリスクを最小限に抑えたい場合は、弁護士の手を借りましょう。

メリット③:社内チェック体制の構築サポート(教育・研修)

弁護士への依頼は、単発の広告チェックに留まりません。継続的に依頼することで、自社のマーケティング部門や法務部門に対し、専門的な知見を提供してもらえます。

主なサポートは、以下のとおりです。

  • 社内向け広告ガイドラインの策定
  • 広告担当者向けの薬機法・景表法研修(セミナー)の実施
  • ASPやアフィリエイターへのレギュレーション教育

これにより、社内全体のコンプライアンス意識が向上します。

弁護士が「外部の専門家」として指導することで、社内の曖昧な運用を是正し、強固なチェック体制を構築するきっかけになるでしょう。

メリット④:広告代理店・OEM企業との違い(法的責任の範囲)

広告代理店やOEMメーカーも、広告表現のチェック(校閲)サービスを提供している場合があります。

しかし、彼らと弁護士とでは、法的責任の重みが全く異なります。主な違いは、以下のとおりです。

比較対象チェックの視点法的責任
広告代理店「売れる表現」や「媒体審査に通るか」という視点法的助言ではなく、万が一違反しても法的な責任は限定的
OEMメーカー「製品仕様」との整合性をチェックする視点広告全体の適法性を保証するものではない
弁護士「法令違反か否か」という純粋な法的視点弁護士法に基づき、専門家としての法的責任を負って助言を行う

弁護士は、弁護士法に基づき、法的な見解に責任を持ってアドバイスを行ってくれます。

「代理店が大丈夫と言ったから」は、行政や司法の場では言い訳になりません。法的なリスクヘッジを真剣に考えるならば、弁護士への相談は不可欠です。

サプリメント広告に関するよくある質問

医薬品の広告は禁止されていますか?

サプリメントが「病気を治す」「体機能が改善する」といった、医薬品のような効果を謳うこと(未承認医薬品の広告)は、薬機法によって厳しく禁止されています。

一方、国から承認を受けた正規の医薬品(例:風邪薬、胃薬など)は、もちろん医薬品としての広告が可能です。

ただし、その広告方法についても薬機法で厳格なルールが定められています。弁護士にリーガルチェックを受けてから公開するようにしましょう。

トクホ(特定保健用食品)・機能性表示食品なら効果を謳えますか?

国に届け出た範囲内であれば、限定的に効果を謳えます。これが、いわゆる「健康食品」(サプリメント)との大きな違いです。

トクホ(特定保健用食品)とは、国(消費者庁)が個別に審査し、有効性や安全性を許可した食品のことを指します。「おなかの調子を整える」「脂肪の吸収を穏やかにする」などの表現が可能です。

機能性表示食品とは、事業者の責任において、科学的根拠を消費者庁に届け出た食品のことを指します(国が審査したわけではない)。「目の疲労感を緩和する」「内臓脂肪を減らすのを助ける」などの表現が可能です。

ただし、これらも食品です。届け出た範囲を超える表現は、薬機法や景表法違反となります。

景品表示法で禁止されている「比較優良表示広告」とは何ですか?

「比較優良表示広告」とは、客観的な根拠なく競合他社の商品より著しく優れていると見せかける表示のことです。

たとえば、以下のような表示が該当する可能性があります。

  • 「A社製品より吸水率が3倍!」(公正な方法で比較したデータがない)
  • 「地域No.1の満足度」(自社に都合の良いアンケート結果だけを使っている)

他社と比較広告を行う場合は、その比較内容が「客観的・正確・最新」であり、全てのデータを公正に示していることが絶対条件となります。

安易な比較表現はリスクが高いため、できるだけ避けましょう。

弁護士への広告チェック費用はどのくらいかかりますか?

弁護士費用は、一般的に以下のような料金体系が考えられます。

料金体系概要費用の目安(一例)
スポット(単発)依頼LP1本、記事1本など、対象物ごとに費用が発生します。1本当たり1万円~
顧問契約(月額)月額固定費用で、範囲内のリーガルチェックや法律相談が何度でも可能です。月額5万円~

>>丸の内ソレイユ法律事務所の料金を見る

ただ、チェックする広告の量や媒体の種類(動画は高額になる傾向)、求める回答のスピード感などによって費用は変動します。

まずは複数の弁護士事務所に見積もりを依頼し、自社の事業規模や広告の頻度に合ったプランを選ぶことが大切です。

まとめ|リスク回避と売上向上のための「攻め」と「守り」の広告戦略

本記事では、サプリメント広告における薬機法・景品表示法の基本から、具体的なNG表現、そしてアフィリエイター個人の責任まで幅広く解説しました。

「痩せる」「治る」といった安易な表現は、消費者に過度な期待を抱かせ、健康被害や金銭トラブルの原因となり得ます。そのため、行政は「課徴金」という重いペナルティを課し、違反広告の撲滅に動いているのが特徴です。

広告表現に少しでも不安を感じたら、自己判断せず、必ず専門家である弁護士に相談するようにしましょう。

自社のサプリメント広告が法規制に違反していないか不安な方は、専門家に相談することが大切です。丸の内ソレイユ法律事務所は、企業の薬機法・広告の法規制対応に精通した弁護士が在籍しています。個々の状況に応じて適切な解決策をご提案できるため、まずはお気軽にご相談ください。

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