「日焼け止めの訴求をしたいが、適切な表現がわからない」
「日焼け止めの広告規制にはどう対応すればいい?」
日焼け止め広告を担当するうえで、魅力的なコピーと複雑な法律規制との間で頭を悩ませている人は多いのではないでしょうか。売上を伸ばしたい一方、薬機法や景表法に違反すれば、行政指導やブランドイメージの失墜を招きかねません。
本記事では、日焼け止め広告に関わる薬機法・景表法の知識を徹底的に解説します。また、最新の「UV耐水性」表示義務化(2024年12月施行)への対応策から、具体的なNG表現の言い換え、法務チェックリストも紹介します。
自社の日焼け止め広告が違反していないか不安な方は、専門家に相談することが大切です。丸の内ソレイユ法律事務所は、企業の薬機法・広告の法規制対応に詳しい弁護士が在籍しています。個々のケースに応じて適切な解決策をご提案できるため、まずはお気軽にご相談ください。

日焼け止め広告に関わる「2つの法律」リスクマップ

日焼け止めの広告表現は、主に以下2つの法律によって厳しく規制されています。
- 薬機法
- 景表法
以下、それぞれ具体的に解説します。違反した場合、行政処分や課徴金納付命令の対象となり得るため、必ず確認しておきましょう。
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)
薬機法は、医薬品や化粧品などの品質、有効性、安全性を確保するための法律です。日焼け止めは、薬機法上「化粧品」または「医薬部外品(薬用化粧品)」に分類されます。
薬機法では、これらの分類ごとに広告で表現できる「効能効果」の範囲が厳密に定められているのが特徴です。定められた範囲を超える表現は、たとえ事実であっても広告で謳うことが認められていません。
薬機法が日焼け止め広告で規制する主なポイントは、以下のとおりです。
- 承認されていない効能効果の標榜(例:「シミが消える」「肌が再生する」)
- 安全性を過度に保証する表現(例:「副作用一切なし」「絶対安全」)
- 医師など専門家の推薦表現(例:「〇〇医師推奨」)
- 他社製品を誹謗中傷する比較表現
違反した場合、2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、またはその両方が課せられます(薬機法第85条)。また、虚偽・誇大広告には対象商品の売上額の4.5%の課徴金が課される点にも注意が必要です(薬機法第75条の5の2)。
景表法(不当景品類及び不当表示防止法)
景表法は、消費者がより良い商品やサービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守るための法律です。広告や商品パッケージにおいて、消費者に誤解を与えるような不当な表示を禁止しています。
景表法における不当表示は、主に「優良誤認表示」と「有利誤認表示」の2つに大別されます。
| 表示の種類 | 概要 | 日焼け止め広告での具体例 |
| 優良誤認表示 | 商品の品質や規格が、実際よりも著しく優れていると誤解させる表示 | 合理的根拠がないのに「国内最強のUVカット率」と表示する |
| 有利誤認表示 | 商品の価格や取引条件が、実際よりも著しく有利であると誤解させる表示 | 「今だけ半額」と表示しつつ、実際には長期間その価格で販売している |
違反した場合、消費者庁から違反行為の差止めや再発防止策の実施など「措置命令」が下されます(景品表示法第7条)。更に、措置命令に違反すると、2年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金が課されます(景品表示法第46条)。
加えて、令和6年10月には、優良誤認表示・有利誤認表示については、措置命令を経ずに100万円以下の罰金を科す直罰規定が新設されました(景品表示法第48条)。
また、対象商品・役務の売上額の3%を課徴金として納付(課徴金額が150万円未満の場合は対象外)(同法第8条)しなければなりません。
【2015-2025年】日焼け止め広告規制の変遷タイムライン

日焼け止めの性能表示に関するルールは、消費者の安全や国際基準との調和を図るため、定期的に見直されてきました。
とくにSPF値やPA分類の表示方法は、時代とともに大きく変化しています。これらの変遷を理解することは、現在の規制の背景を知る上で重要です。
ここでは、近年の主要な改正と最新の動向を時系列で解説します。
過去の主要改正(SPF50+統一、PA++++導入など)
日焼け止め市場の拡大に伴い、消費者の誤解を防ぐための表示ルールが整備されています。
国内では長らく「SPF50」が上限値とされてきました。しかし、測定技術の進歩と国際基準の変化に対応するため、2011年及び2012年に日本化粧品工業連合会が「SPF測定法基準」「UVA防止効果測定法基準」を改定しています。
主な変更点は、以下のとおりです。
| SPF値の上限変更 | 「SPF50」を超える製品について「SPF50+」という表示が統一的に導入されました |
| PA分類の追加 | 従来の「PA+」「PA++」「PA+++」に加え、UVA防止効果の最上位分類として「PA++++」が新設されました |
出典:日本化粧品工業連合会|紫外線防止効果測定法基準の改定とそれに伴う「PA++++」表示の追加
この改正により、メーカーはより高い紫外線防御効果を持つ製品の性能を、消費者に分かりやすく伝えられるようになりました。
【最新】2024年12月施行「UV耐水性表示」義務化とは?
これまで、日焼け止めの「水に強い」「汗に強い」といった耐水性の表現には、明確な統一基準がありませんでした。
各メーカーが独自の基準で試験を行い、「ウォータープルーフ」などと表示していました。消費者が製品の耐水性を客観的に比較できなかったのが特徴です。
この問題を解決するため、2024年12月から(正確には、発効日は2022年12月1日ですが、経過措置期間として2024年11月30日までの2年間は従前の表示を行えるものとされていました。)、日本化粧品工業連合会の自主基準に基づき、耐水性表示の標準化が導入されました。
「ウォータープルーフ」等を表示する場合には、この自主基準に沿った表示をするよう要請されています。
主な変更点は、以下のとおりです。
| 耐水性試験法の標準化 | 国際標準(ISO18861)に基づいた試験法を採用 |
| 耐水性表示の導入 | 試験結果に基づき、「UV耐水性★(または☆)」「UV耐水性★★(または☆☆)」の2段階で表示 |
| 表示の義務化 | 「ウォータープルーフ」など耐水性をうたう場合、上記の新表示をするよう要請 |
出典:日本化粧品工業連合会|紫外線防止効果に対する耐水性測定法基準
この改正により、消費者は「どの程度水に強いのか」を客観的な基準で比較検討できるようになっています。広告担当者は、既存製品のパッケージや広告表現の見直しが急務です。
薬機法編:日焼け止め広告「OK表現」「NG表現」早見表

薬機法を遵守する上で最も重要なのは、「化粧品」と「医薬部外品」の分類を理解することです。
日焼け止めはどちらの分類にも属する可能性があり、分類によって広告で使える「効能効果」の範囲が異なります。自社製品がどちらに該当するかを正確に把握することが、広告作成の第一歩です。
ここでは、それぞれの分類で認められる効能効果と、具体的なOK/NG表現を解説します。
【化粧品】で認められる効能効果(56項目)
化粧品(一般的な日焼け止め)の場合、広告で表現できる効能効果は、厚生労働省が定めた「56項目」の範囲内に限定されます。
この範囲を超えた表現は認められません。
56項目のうち、日焼け止め広告で主に使用される表現は以下のものです。
- (25)皮膚の水分、油分を補い保つ
- (26)皮膚の柔軟性を保つ
- (27)皮膚を保護する
- (28)皮膚の乾燥を防ぐ
- (36)日やけを防ぐ
- (37)日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ
化粧品で認められる表現は、「防ぐ」までです。「シミを消す」「肌を白くする」といった表現は、56項目の範囲を逸脱するため注意しましょう。
薬機法における化粧品の定義が知りたい場合は、以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:薬機法における化粧品の定義とは?法律上のポイントを解説
【医薬部外品(薬用化粧品)】で認められる効能効果
医薬部外品(いわゆる「薬用日焼け止め」)は、化粧品よりも一歩進んだ「有効成分」が配合されています。
そのため、化粧品の56項目の範囲に加え、承認された有効成分による特定の効果(例:美白、肌荒れ防止)を承認された範囲で謳うことが可能です。
医薬部外品で認められる主な効能効果の例は、以下のとおりです。
- 肌あれ・あれ性を防止
- あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・にきびを防ぐ
- メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ(美白効果)
- 日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ
ただ、「美白」とは、あくまで「メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ」ことを指します。医薬部外品であっても、「シミが消える」「病気が治る」といった医薬品的な表現はできません。
関連記事:薬機法に基づく医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器の“名称ルール”徹底解説―違反リスクを回避するために押さえるべきポイント
OK/NG表現 判定フローチャート
広告表現に迷った際、薬機法違反のリスクをセルフチェックできる簡易的な思考フローを紹介します。
以下のステップで、表現が適切かどうかを判断してください。
| ステップ1.製品分類の確認 | 製品は「化粧品」か「医薬部外品」のどちらか |
| ステップ2.効能効果の範囲チェック | ・化粧品の場合:その表現は「化粧品の56項目の範囲内」であるか・医薬部外品の場合:その表現は「承認された効能効果の範囲内」であるか |
| ステップ3.医薬品的な表現のチェック | 「治る」「治療」「再生」「殺菌」など、病気の治療や予防、身体機能の変化を暗示する言葉を使っていないか |
| ステップ4.安全性の保証チェック | 「絶対安全」「100%」「副作用なし」など、効果や安全性を過度に保証していないか |
| ステップ5.専門家の推薦チェック | 「医師推奨」「美容家〇〇先生も絶賛」など、専門家が推薦している表現を使っていないか(原則NG) |
上記のいずれかのステップで問題があった場合は、その広告表現は薬機法違反となる可能性が高いため、言い換えが必要です。適切な表現がわからない場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。
よくあるNG表現と言い換え例(比較表)
日焼け止め広告でとくに注意すべきNG表現と、薬機法の範囲内で伝えるためのOKな言い換え例を比較表にまとめました。
これらの表現は、意図せず使用してしまいがちなため、細心の注意が必要です。ぜひ参考にしてみてください。
| NG表現(違反の恐れあり) | OK表現(言い換え例) | 解説 |
| シミが消える | メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ | 医薬部外品。化粧品は「日やけによるしみ、そばかすを防ぐ」まで。 |
| アンチエイジング | エイジングケア(年齢に応じたお手入れ) | 「アンチ(抗う)」はNG。「エイジングケア」を注釈付きで使用するのは可能。 |
| デトックス効果 | 肌を清浄にする/洗浄する | 「デトックス(解毒)」は医薬品的。「清浄」や「洗浄」に留める。 |
| 肌が再生する | 肌にうるおいを与える | 「再生」や「修復」はNG。保湿に関する表現に言い換える。 |
| リフトアップ | 被膜効果で肌がピンと張った印象に(物理的効果の明記) | マッサージ効果や物理的な被膜効果であることを明記しない限りNG。 |
| 美白になる | メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ(美白) | 「肌自体が白くなる」と誤認させる表現はNG。「美白」の使用には注釈が必要。 |
上記で紹介したNG表現や言い換え表現は、一部に過ぎません。また、実際には、一つ一つのワードではなく、広告全体から審査されます。自社の広告で詳細なチェックをしたい場合は、弁護士に相談してみてください。

なお、「美白」表現はルールが細かく設定されているため、とくに注意が必要です。以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:薬用化粧品(医薬部外品)における美白表現の範囲|広告表現で気をつけるべきポイントとは?
景表法編:「最強」「No.1」表示のリスクと対策

消費者の目を引くために、「最強」「最高峰」「No.1」といった最大級の表現を使いたくなるかもしれません。しかし、これらの表現は景表法上の「優良誤認表示」にあたるリスクが高いです。
もし使用する場合は、表示内容が事実であることを裏付ける「合理的根拠」を、厳密に用意する必要があります。以下、具体的に解説します。
「最強」「最高峰」を使いたい場合の法的要件
「最強」「最高峰」といった表現は、原則として客観的な根拠がない限り使用できません。
もし、これらの表現を使用したい場合は、以下の要件を満たす必要があります。
| 根拠の明確化 | 何において「最強」なのか、その範囲を明確に示す必要がある(例:「自社製品内において最強のUVカット効果」) |
| 客観的データの保持 | その主張が事実であることを証明する、客観的なデータ(試験結果など)を保有していることを証明する必要がある |
| 併記(打消し表示) | 「最強」という言葉のすぐ近くに、根拠となる範囲(例:「※当社比」)を、消費者が認識できる大きさで明瞭に記載する必要がある |
「最強」という言葉の魅力は大きいですが、法的要件を満たすハードルは高いです。安易に使用するのではなく、「SPF50+、PA++++」といった客観的な事実を訴求しましょう。
「No.1」「シェア1位」表示の注意点(合理的根拠の提示)
「No.1」や「シェア1位」といった順位や実績に関する表示も、景表法で厳しく規制されています。これらの表示を行うには、消費者に誤解を与えないための「合理的根拠」が欠かせません。
「No.1」表示で提示すべき合理的根拠の要件は、以下のとおりです。
| 調査機関の明記 | 信頼できる第三者の調査機関(例:〇〇リサーチ、〇〇マーケティング)による調査であることを示さなければならない |
| 調査時期の明記 | いつの時点での「No.1」なのかを示す必要がある(例:「2024年〇月調査時点」) |
| 調査範囲(カテゴリー)の明記 | どの市場、どのカテゴリーでの「No.1」なのかを正確に示す必要がある(例:「〇〇(地域)における30代女性向け日焼け止めクリーム市場」) |
| 表示の近接 | 根拠は、「No.1」の表示のすぐ近くに、明瞭に記載する必要がある |
根拠があいまいな「No.1」表示は、景表法違反とみなされる典型的なパターンです。何より、調査結果を正確かつ適正に引用する必要があります。不安な場合は弁護士に相談するとよいでしょう。
関連記事:No.1表示、高評価%表示に注意!消費者庁からNo.1表示に関する実態調査報告書が公表されました
【弁護士監修】日焼け止め広告 法務チェックリスト30

広告表現のコンプライアンスは、「知っているか」「知らないか」が命運を分けます。
日焼け止め広告の出稿前、あるいは制作中に、法務リスクがないかをセルフチェックできるリストを作成しました。
薬機法と景表法の両面から、違反しやすいポイントをまとめています。「いいえ」になる項目がないかチェックしてみてください。
薬機法チェックリスト(15項目)
薬機法では、製品の分類(化粧品・医薬部外品)に基づき、効能効果の範囲を厳格に定めています。
以下のチェックリストを参考に、薬機法に違反していないかを確認してみましょう。
| No. | チェック項目 |
| 1 | 製品は「化粧品」「医薬部外品」のどちらか明確か |
| 2 | 「シミが消える」「シワが無くなる」と表現していないか |
| 3 | 「肌が若返る」「細胞が再生する」など医薬品的表現はないか |
| 4 | 「アンチエイジング」を注釈なしで使用していないか |
| 5 | (化粧品の場合)表現は「化粧品の56項目」の範囲内か |
| 6 | (医薬部外品の場合)表現は「承認された効能効果」の範囲内か |
| 7 | 「美白」を「メラニンの生成を抑え〜」の注釈なしで使っていないか |
| 8 | 「デトックス」「解毒」といった表現を使用していないか |
| 9 | 「改善」「治療」という言葉を使っていないか |
| 10 | 「安全」「安心」「副作用なし」と安全性を保証していないか |
| 11 | 「医師推奨」「〇〇クリニック公認」と専門家の推薦を謳っていないか |
| 12 | 他社製品を具体的に名指しして「劣っている」と誹謗していないか |
| 13 | 配合成分について、成分単体の効果を過剰に謳っていないか |
| 14 | 「治る」と表現していないか(「防ぐ」は表現可の場合も) |
| 15 | 「アトピー肌用」「敏感肌でも絶対安心」など特定の症状・肌質への効果を保証していないか |
景表法チェックリスト(15項目)
景表法は、消費者に誤解を与える「ウソ」や「大げさ」な表示(不当表示)を禁止しています。
以下のチェックリストを参考に、景表法に違反していないかを確認してみましょう。
| No. | チェック項目 |
| 1 | 「最強」「最高」を使用する際、合理的根拠(※当社比など)を明記しているか |
| 2 | 「No.1」「売上1位」を使用する際、第三者機関の調査データを明記しているか |
| 3 | 「No.1」の根拠(調査時期、調査範囲、調査機関)は、表示のすぐ近くにあるか |
| 4 | 「世界初」など唯一無二の表現に、客観的な証明はあるか |
| 5 | ビフォーアフター写真で、過度な画像加工や演出を加えていないか |
| 6 | (ビフォーアフター)「※効果には個人差があります」等の注釈を明記しているか |
| 7 | 「今だけ半額」など、実際には継続しているキャンペーンを限定的に見せていないか(有利誤認) |
| 8 | 「通常価格〇〇円」の「通常価格」は、最近相当期間販売した実績のある価格か(二重価格表示) |
| 9 | 根拠なく、「絶賛」といった表現を使用していないか |
| 10 | 愛用者の「お客様の声」が、事実とかけ離れた内容(個人の感想の範囲を超えたもの)になっていないか |
| 11 | SNS広告で「#PR」「#広告」の記載を忘れていないか(ステルスマーケティング規制) |
| 12 | 根拠データの文字が小さすぎ、読めない(打消し表示が不明瞭)状態になっていないか |
| 13 | 「期間限定」の終了時期を明記しているか |
| 14 | 「全額返金保証」の条件(送料負担、申請期限など)を明瞭に記載しているか |
| 15 | 2024年12月以降、「ウォータープルーフ」を謳う際、「UV耐水性★」表示を欠いていないか |
広告規制(薬機法・景表法)で弁護士に相談すべき理由とタイミング

一般的な広告表現のチェックであれば、社内の法務部や広告代理店、コンサルタントも行えます。
しかし、こと薬機法・景表法が関わる領域、特に日焼け止めのような健康・美容製品においては、「広告法務に精通した弁護士」への相談が重要です。
その理由と、相談すべき具体的なタイミングを解説します。
なぜ広告代理店やコンサルタントではなく弁護士なのか?
広告代理店やコンサルタントは、マーケティングや「売れる表現」のプロフェッショナルです。法律の知識を持っている場合がありますが、その専門性は「法律解釈」そのものにはありません。
弁護士は、法律の条文解釈、過去の判例、行政指導の傾向に基づき、その表現が法的に「セーフ」か「アウト」かを適切に判断してくれます。また、「アウト」の場合の法的リスクや対処法まで具体的に把握している点が特徴です。
以下、広告代理店・コンサルタントと弁護士の違いを表にまとめました。
| 比較項目 | 弁護士 | 広告代理店・コンサルタント |
| 専門性 | 法律の解釈とリスク判断 | マーケティング、売れる表現 |
| 視点 | 守り(法的リスクの最小化) | 攻め(売上の最大化) |
| 強み | 行政指導や訴訟時の対応 | トレンドの把握、クリエイティブ制作 |
広告代理店・コンサルタントは、売上の最大化など「攻め」の表現を提案してくれる一方、弁護士は「守り」の観点から適切に法的なブレーキをかけてくれます。
ビジネスの持続的な成長のためには、両者の意見をバランスよく取り入れることが重要です。
相談すべきタイミング1:広告出稿「前」のリーガルチェック
広告出稿前であれば、以下のタイミングで弁護士による事前のリーガルチェック(広告審査)を受けることが大切です。
- 新商品のローンチ(LP、パッケージ、PR戦略)の確定前
- 大規模な広告キャンペーン(TVCM、Web広告)の出稿前
- 「最強」「No.1」など、景表法リスクの高い表現を使用する前
- インフルエンサーマーケティングの契約・投稿内容の確定前
広告は、一度世に出てしまうと、取り消しや修正に多大なコストがかかります。それだけでなく、行政指導が入ればブランドイメージは大きく毀損するでしょう。
事業継続にも大きく影響するため、できるだけ広告出稿前にチェックを受けることが大切です。
相談すべきタイミング2:行政(保健所・消費者庁)から指摘を受けた「直後」
万が一、保健所(薬機法)や消費者庁(景表法)から広告表現に関する指導や調査の通知が来た場合は、すぐに弁護士に相談することが大切です。
行政からの指摘を受けると、法的措置(販売停止、課徴金納付命令など)を受ける可能性があります。社内や広告代理店だけで対応を協議するのは危険です。
このタイミングで弁護士に相談することで、以下の内容で行政対応を任せられます。被害の最小化を実現できるでしょう。
- 行政の意図を正確に読み取り、法的主張を組み立てる
- 報告書や改善計画書の作成を法的にサポートする
- 最悪の事態(課徴金や刑事罰)を避けるための交渉を行う
弁護士が最善の対応策を講じる時間を確保するためにも、できるだけ指摘を受けた直後に相談することが重要です。

日焼け止め広告に関するよくある質問
化粧品広告でNGワード(「治る」「改善」など)は?
薬機法上、化粧品の広告で「医薬品的な効能効果」を暗示する表現は厳しく禁止されています。
以下は、日焼け止め広告に限らず、化粧品広告全般で使用できない代表的なNGワードです。
| 病気の治療・予防 | 治る・改善・治療・予防(※) |
| 身体機能の変化 | 再生・修復・増殖・若返る・アンチエイジング |
| 特定の効果 | シミが消える・シワがなくなる・リフトアップ(物理的効果の明記なし) |
| 精神への作用 | ストレス解消 |
| 安全性 | 安全・安心・副作用がない |
※「(日やけによる)シミ・そばかすを防ぐ」「にきびを防ぐ」など、承認された効能効果の範囲内での「防ぐ」は使用可能
上記で紹介したものは、あくまで一部に過ぎません。上記以外にも、グレーゾーンとされる表現は存在します。
自社の表現が適切か不安な場合は、一度弁護士に相談してみましょう。
「ノンケミカル」「紫外線吸収剤フリー」は謳えますか?
「ノンケミカル」や「紫外線吸収剤フリー」は、一般的に「紫外線散乱剤」のみを使用した日焼け止めを指す表現として使われます。これらは、事実であれば謳うことが可能です。
ただ、景表法上の「優良誤認表示」とならないためには、その製品が本当に紫外線吸収剤を一切配合していないことが絶対条件となります。
また、以下の2点には注意が必要です。
- 定義の明確化:何を指して「ノンケミカル」と言っているのか、合理的に説明できる必要がある
- 消費者の誤認:安全性を過度に保証するような見せ方は薬機法や景表法に抵触する恐れがある
事実に基づいた成分特徴の表示として、節度を持って使用することが求められます。
インフルエンサーにPR投稿を依頼する場合の注意点は?
2023年10月から施行された景表法のステルスマーケティング規制(ステマ規制)により、インフルエンサーへのPR依頼も厳格な管理が必要です。
事業者(広告主)の依頼による投稿であることを、消費者が明確に認識できる表示が義務付けられました(「#PR」「#広告」など)。
また、インフルエンサーの投稿内容は、広告主(事業者)の広告とみなされます。インフルエンサーが違反した場合、その責任はインフルエンサー個人ではなく、依頼した事業者(広告主)が問われる点が特徴です。
そのため、インフルエンサーが薬機法違反の表現(例:「シミが消えた」)を使わないよう、広告主が事前にレビューし、修正を依頼しなければなりません。
依頼時に、広告主側で「使ってはいけない表現リスト」をインフルエンサーに共有することが不可欠です。
出典:消費者庁|令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。
弁護士法人による広告チェックの費用相場は?
広告チェック(リーガルチェック)の費用は、弁護士法人や依頼する広告のボリューム、契約形態によって大きく異なります。
一般的な相場観として、以下のような料金体系があります。
| 契約形態 | 費用相場(目安) | 特徴 |
| スポット契約 | 1万円~/件 | LP1本、バナー広告5点など、単発で依頼する場合 |
| 顧問契約 | 月額5万円~ | ・広告法務に特化したプラン・チェック頻度が多い場合や、日常的な法務相談もしたい場合に適している |
※上記はあくまで目安であり、弁護士の経験や事務所の規模によって変動します。
スポット契約とは、必要なときに単発で依頼する契約形態です。広告1本ごとに費用が発生するため、コストを抑えつつピンポイントでリーガルチェックを依頼したい場合に向いています。
一方、顧問契約とは、毎月の定額料金で複数回の広告チェックや継続的な法務相談ができる契約形態です。広告運用の頻度が高い企業や、法務体制を強化したい事業者に向いています。
自社の広告量やリスク管理の必要性を踏まえて、適切な契約形態を選びましょう。

まとめ|日焼け止めの広告を出すなら専門家に相談しましょう
日焼け止め広告における薬機法・景表法の規制は、消費者を守るために存在し、年々厳格化しています。とくに2024年12月施行の「UV耐水性表示」や、昨今のステマ規制の強化は、広告担当者が必ず把握しておきたい最新動向です。
この記事で解説したOK/NG表現やチェックリストを参考に、薬機法や景表法に違反していないかを確認しましょう。
しかし、法律の解釈は専門的であり、グレーゾーンの判断も多く存在します。少しでも迷いが生じたときや、行政から指摘を受けてしまったときは、弁護士に相談しましょう。
自社の日焼け止め広告が違反していないか不安な方は、専門家に相談することが大切です。丸の内ソレイユ法律事務所は、企業の薬機法・広告の法規制対応に詳しい弁護士が在籍しています。個々のケースに応じて適切な解決策をご提案できるため、まずはお気軽にご相談ください。
