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育毛剤広告の薬機法・景表法違反リスクと対策|弁護士がNG表現を解説

「育毛剤の広告を出したいけど、違反しないか不安…」
「どこまでがセーフで、どこからがアウトなのか、基準が知りたい」

コンプライアンスの重要性は理解していても、商品の良さをアピールするために広告表現に頭を抱えている担当者様も多いのではないでしょうか?

本記事では、2024年〜2025年にかけて行政処分事例が目立ち、監視の目が一段と厳しくなっている「育毛剤広告」について、弁護士の視点から薬機法・景表法のNGラインと具体的な対策を解説します。

企業の信頼を失うリスクを回避するためにも、ぜひ参考にしてみてください。

自社の育毛剤広告が法律に違反していないか不安な方は、専門家に相談することが大切です。丸の内ソレイユ法律事務所は、企業の薬機法・広告の法規制対応に詳しい弁護士が在籍しています。個々の製品や状況に応じて適切な解決策をご提案できるため、まずはお気軽にご相談ください。

育毛剤広告の法的リスクとは?相次ぐ措置命令とYMYL領域の重要性

育毛剤を含むヘルスケア商品は、広告表現において高度なコンプライアンス意識が求められる分野の一つです。

単なるマナーの問題ではなく、違反をすれば巨額の課徴金や社名公表、最悪の場合は逮捕に至るリスクがあります。

なぜこれほどまでに厳しく規制されるのか、その背景と現状を解説します。

なぜ育毛剤広告は厳しく規制されるのか?(YMYL領域)

育毛剤は、端的に言えば、薄毛改善(主に男性向け)を目的とした商品です。薄毛に悩む人の弱みにつけこんで、本来であれば、育毛効果等のない商品を購入させるなどといったことも起こりうる商品です。

また、育毛剤は、医薬部外品(多くの育毛剤が医薬部外品です、)と医薬品の双方があり、脱毛防止や育毛を目的とする物が医薬部外品、発毛効果が認められる物が医薬品と大別することができます。ちなみに、効能効果が穏やかな物については、化粧品に分類される物もあり、商品として様々な物があります。

さらに、近年、AGAなどは、クリニックでも相談や治療をしており、育毛剤の商品の広告に嘘や誇張があれば、消費者の適切な治療機会の損失につながる可能性もあります。

そのような背景もあり、過去にも、育毛剤について、景表法に基づく行政処分なども含めた処分が出されています。

法律ではありませんが、Googleの検索品質評価ガイドラインでも、「YMYL(Your Money or Your Life)」という概念が重視されています。これらは、人々のお金や健康、人生に重大な影響を与えるジャンルを指すものです。

各企業も、自主的な広告基準なども設けていますので、法律の他にも広告媒体やECモールなどの自主的な広告基準も遵守するようにした方が良いでしょう。

【事例】2024年〜2025年に起きた措置命令・業務停止命令

近年、広告主だけでなく、広告代理店やアフィリエイターまでもが処分の対象となるケースが増えています。

2023年10月の「ステマ規制(景品表示法の指定告示)」施行も相まって、アフィリエイターやインフルエンサーなどへの監視も一層強まっていると言えるでしょう。

直近の傾向として、以下のような事例で行政処分(措置命令など)が下されています。なお、2つ目の事例は、特定商取引法に基づく業務停止命令の事案です。

年代違反内容の概要処分のポイント
2024年アフィリエイト広告の管理不備による措置命令(景品表示法)広告主自身ではなく、アフィリエイターが作成したバナー広告等で「短期間で発毛効果」「白髪の状態が改善し黒髪が生える効果」といった虚偽の表示が行われていました。
東京都は、「アフィリエイト広告も広告主の責任である」とし、広告主に対して措置命令を下しました。これは、広告主がアフィリエイターの暴走を放置することのリスクを明確に示した事例です。
東京都|SNS上のバナー広告から遷移したアフィリエイト広告により、育毛剤について不当表示を行っていた通信販売事業者に対し、景品表示法に基づく措置命令
2024年「初回安価」に見せかけた定期購入への業務停止命令(特定商取引法)「初回1,980円」などと強調し、数万円の支払い義務が発生する定期購入条件を極めて小さな文字で表示していたことなどが「顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為」と認定され、3カ月間の業務一部停止命令を受けました。
東京都|美容液・育毛剤の通信販売事業者3社及び代表取締役に対し、特定商取引法に基づく業務停止命令

「知らなかった」「外注先がやったこと」という弁明は通用しません。事業者は、自社の広告すべてに対して法的責任を負う覚悟が必要です。

出典:消費者庁|令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります

「薬機法」とは?育毛剤の分類と広告ルール

広告を作る際、まず確認しなければならないのが、その商品が法的にどのカテゴリーに属するかどうかです。カテゴリーによって「言えること」と「言えないこと」の境界線は明確に異なります。

ここでは、多くの人が混同しやすい「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」の違いを解説します。

関連記事:薬機法とは?簡単にわかりやすく解説|規制内容・違反事例・対策まとめ

育毛剤は「医薬部外品」?「化粧品」?

一般的に育毛剤として販売されている商品の多くは、「医薬部外品」に分類されます。

一方で、AGA治療薬などの発毛剤は「医薬品」、頭皮ケアを主とする養毛剤は「化粧品」に該当するのが特徴です。

薬機法では、承認を受けていない効能効果や、実際を上回る効能をうたう広告が禁止されています(薬機法第66条)。つまり、医薬部外品である育毛剤の広告で、医薬品レベルの「発毛する」「毛が生える」といった表現を使うことは法律違反です。

商品のラベルや承認内容を必ず確認し、適切なカテゴリー区分を把握することから始めましょう。

関連記事:薬機法における化粧品の定義とは?法律上のポイントを解説

図解:医薬品(発毛剤) vs 医薬部外品(育毛剤) vs 化粧品(養毛剤)

各カテゴリーの違いを理解するために、以下の比較表を確認しましょう。自社の商品がどこに位置するかによって、訴求の限界ラインが決まります。

区分一般的な名称目的・定義認められる表現の限界(例)
医薬品発毛剤・病気の治療・予防・効果が認められた成分を配合・「発毛」・「毛を生やす」・「壮年性脱毛症の改善」
医薬部外品育毛剤・防止・衛生・人体への作用が緩やかなもの・「育毛」・「薄毛・脱毛の予防」・「発毛促進」・「かゆみを防ぐ」
化粧品養毛剤スカルプケア・清潔・美化・健やかに保つ・人体への作用がさらに緩やか・「頭皮を健やかに保つ」・「ハリ・コシを与える」・「フケを抑える」

このように、医薬部外品(育毛剤)はあくまで「今ある毛を育て、抜け毛を防ぐ」ことを目的としたものであり、医薬品のように「毛のない部分から新たに毛を生やす」といった発毛効果までは標ぼうできません

一線を越える表現をすると、景表法や薬機法違反となるため、注意が必要です。

関連記事:薬機法に基づく医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器の“名称ルール”徹底解説―違反リスクを回避するために押さえるべきポイント

医薬部外品(育毛剤)で承認されている「効能効果」一覧

医薬部外品の育毛剤では、厚生労働省によって認められた特定の「効能効果」の範囲内でのみ広告表現が許されています。

これらで認められた効能効果の範囲を超えて、新たな効果をうたうことはできません。文言を工夫する場合も、この一覧に含まれる効能の範囲に収まるようにする必要があります。以下のリストにある言葉は、原則として広告に使用可能です。

  • 育毛(今ある毛を育てる)
  • 薄毛(の悩み、予防など)
  • かゆみ(の防止)
  • 脱毛の予防
  • 毛生促進(もうせいそくしん)
  • 発毛促進(はつもうそくしん)※「発毛」単体はNG
  • ふけ(の防止)
  • 病後・産後の脱毛
  • 養毛

出典:厚生労働省|試験問題の作成に関する手引き(平成19年8月)第4章別表 4-1.医薬部外品の効能効果の範囲

「発毛促進」とは言えても、「発毛」と言い切ることはできません。「促進」という言葉があるかないかで、適法か違法かが分かれることを覚えておきましょう。

見落とし厳禁!「景品表示法(景表法)」の2つの罠

薬機法と並んで注意が必要なのが「景品表示法(景表法)」です。

薬機法が「効果効能の範囲」を規制するのに対し、景表法は「顧客を不当に誘引する嘘や大げさな表現」を規制します。

以下では、とくに注意すべき「2つの誤認」について解説します。

罠1:優良誤認表示(効果・実績のウソ)

優良誤認とは、商品の中身や効果が、実際よりも「著しく優良である」と消費者に誤解させる表示のことです(景品表示法第5条1号)。

優良誤認とみなされる表示の主な例は、以下のとおりです。

根拠のないNo.1表示客観的な調査に基づかない「満足度No.1」「医師が推奨する育毛剤No.1」などの表記
過剰なビフォーアフター特殊な照明や加工を用いた写真や、短期間での劇的な変化(実際にはあり得ない効果)を示す写真
「打消し表示」の悪用消費者が「誰でも効果が出る」と誤認するような小さく見にくい打ち消し表示

上記に違反していると判断されると、消費者庁から「合理的な根拠」の提出を求められます。15日以内に根拠を提出できなければ、優良誤認表示として行政処分等の対象になるため注意が必要です。

罠2:有利誤認表示(価格・条件のウソ)

有利誤認とは、価格や取引条件が、実際よりも「著しくお得である(有利である)」と誤解させる表示のことです(景品表示法第5条2号)。定期購入トラブルの温床ともなっており、特商法とも絡んで厳しく取り締まられています。

有利誤認とみなされる表示の主な例は、以下のとおりです。

二重価格の不正「通常価格10,000円→今だけ1,000円」と謳いながら、実際には通常価格での販売実績がほとんどない場合
「初回無料」の悪用大きく「0円」と表示しながら、実は数ヶ月の継続購入が条件で、総支払額が高額になることを隠している場合
期間限定の嘘「カウントダウンタイマー」などで「あと1時間で終了」と見せかけ、更新するとタイマーがリセットされる(いつでも安い)手法

ユーザーを騙してクリックさせるような手法は、短期的にはCV(コンバージョン)を生むかもしれません。しかし、長期的にはブランド毀損と法的制裁を招く可能性があります。

関連記事:優良誤認と有利誤認の違いは?それぞれの特徴や違反防止策を弁護士が徹底解説

【カテゴリ別】ヘアケア広告 OK/NG表現 早見チェックリスト

ここでは、実際の広告制作現場ですぐに使えるOK/NG表現のリストを紹介します。

代替表現のアイデアとしてご活用ください。

早見表:訴求したい内容別 OK/NGライン

医薬部外品の育毛剤広告を作成する際のOK/NG表示を表にまとめました。左側のNG表現を使いたい場合は、右側の OK表現に言い換えて使用しましょう。

訴求したい内容NG表現(使用不可)OK表現(使用可能・言い換え例)
毛を生やす・髪が生える・ハゲが治る・発毛力がすごい・育毛(毛を育てる)・発毛促進・毛髪の成長を助ける
効果の確実性・絶対生える・みるみるフサフサに・永久にハゲない・ハリ、コシを与える・ボリューム感のある印象へ・自信を取り戻す
成分の浸透・毛根の奥まで浸透・細胞を活性化・遺伝子に作用・角質層まで浸透・頭皮環境を整える・有効成分が留まる
若返り・20代の頃の髪に戻る・アンチエイジング・若返り効果・若々しい印象に・年齢に応じたケア・健やかな頭皮へ
安全性・副作用なし・100%安全・アレルギーも安心・低刺激設計・パッチテスト済み
※「すべての方に刺激が起きないわけではありません」の注記必須

ルールに縛られて窮屈に感じるかもしれませんが、制約の中でいかに商品の魅力を伝えるかが広告担当者・マーケターの腕の見せ所です。

法律を守ることで顧客からの信頼を守ることにもつながるため、必ずOK表現に言い換えましょう。

【ケース別】ビフォーアフター・医師推薦…グレーゾーンの判断基準

法律の条文だけでは判断が難しい「グレーゾーン」について、ケース別に解説します。

  • ケース1:ビフォーアフター写真・体験談
  • ケース2:「血行促進」「内部に浸透」
  • ケース3:医師・美容師・専門家の推薦

「他社がやっているから大丈夫」という考えは危険です。具体的なケースをもとに、境界線を明確にしましょう。

ケース1:ビフォーアフター写真・体験談

育毛剤(医薬部外品)の広告において、摘発リスクが高く、かつ行政が厳しく監視しているのが「ビフォーアフター写真」です。

原則として、医薬部外品の効果効能の範囲において、使用による「劇的な身体的変化」を写真で保証することは認められていません。

たとえ事実であっても、写真から「確実に生える」という印象を受けるなら、医薬部外品の効能効果の範囲(育毛・予防)を逸脱していると判断されるためです。

消費者庁のガイドラインでは、打消し表示(※個人の感想です等の注釈)があったとしても、写真自体の訴求力が強すぎる場合は注釈が無効であると明記されています。

出典:消費者庁|不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針-事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置について-

以下の表を参考に、適切な表現で使用しましょう。

完全NGの例・頭皮が透けている状態から、フサフサに変化した写真・「たった1ヶ月でここまで!」という期間指定の比較・別人の写真や、光の当て方を変えて増えたように見せる加工
使用可能な範囲(極めて限定的)・使用感の比較(ベタつきがない、など)・頭皮の汚れが落ちて清潔になった様子の比較

客観的な裏付けのない「生えた」「治った」「人生が変わった」と過激な感想は、掲載できません。消費者に対し「誰でも同じ効果が得られる」という誤解を与えるため、優良誤認表示とみなされます。

出典:厚生労働省|医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について

ケース2:「血行促進」「内部に浸透」

成分の作用機序(メカニズム)に関する表現も、薬機法で厳格なルールが存在します。

とくに「内部に浸透」や「血行促進」は、コピーライティングで頻繁に使われますが、以下の制限を厳守する必要があります。

表現カテゴリOK表現の条件NG表現(違反リスク大)
浸透表現・「角質層まで」という注釈が必須・範囲を限定すれば使用可能・毛根まで浸透・真皮まで届く・奥深くまで効く
血行促進承認された効能効果に「血行促進」が含まれる場合のみ使用可能・血流を改善してハゲを治す・血管を再生する・血行を良くして発毛させる

とくに注意が必要なのは「浸透」です。

「毛根まで届く」と書きたくなりますが、医学的・法的に医薬部外品の育毛剤は「角質層(皮膚の死んだ細胞の層)」までしか浸透しないとされています。

これを超えて「奥深くまで届く(真皮や皮下組織)」と表現することは、医薬品であることを暗示するため、違反となります。

また、図解イラストを用いる際も、矢印が皮膚の奥深くまで突き刺さっている描写はNGとなるため、角質層の範囲内で留める描写が必要です。

出典:厚生労働省|医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について

ケース3:医師・美容師・専門家の推薦

権威付け(オーソリティ)のために医師や専門家を起用するケースも増えていますが、ここにも大きな罠があります。

厚生労働省の基準には、「医薬関係者、理容師、美容師(中略)が指定し、公認し、推せんし(中略)等の広告を行ってはならない」と定められています。つまり、「医師が推薦するから効果がある」と消費者に誤解させる広告はできません。

専門家の言葉は一般人の言葉よりも信頼度が高いため、少しの誇張でも消費者の判断に強い影響を与えるとして、規制が厳しく適用されます。

医師の推薦におけるNGライン・「医師も認めた発毛効果」と書くこと・特定の商品の効能効果を医師が保証すること・公的機関が認めたかのような誤解を与える表現
許容される範囲・「成分の配合バランス」についてコメントする・「頭皮ケアの重要性」について一般論を語る・商品開発の「監修」を行った事実を伝える

医師を起用する場合は、あくまで「開発の協力者」や「成分の解説者」という立ち位置に留め、効能効果の保証にならないよう細心の注意が必要です。

キャスティング会社を通じて医師のコメントをもらう場合でも広告主側が最終的な法的責任を負うため、納品されたコメント内容を鵜呑みにせず、必ずチェックしてから出稿しましょう。

出典:厚生労働省|医薬品等適正広告基準

【立場別】アフィリエイト・SNS・動画広告の法的リスクと回避策

広告手法の多様化に伴い、法的責任の所在も変化しています。

ここでは、広告主、アフィリエイター、そして動画制作者が負うべき責任と対策を解説します。

広告主(EC事業者)の責任:「アフィリエイターのせい」は通用しない

かつては、アフィリエイターが勝手に行った誇大広告について、広告主が「指示していない」として責任を逃れようとするケースもありました。しかし、広告主の管理責任が厳格化されていることは世間に浸透しているといっても過言ではなく、そのような言い訳は通用しません。

消費者庁『アフィリエイト広告等に関する検討会報告書』では、「広告主は、アフィリエイターによる表示についても、広告主自らの表示として責任を負う」とされています。「アフィリエイターが勝手にやった」という弁明は、原則として認められません。

「知らなかった」では済まされないため、定期的なWebパトロールや、ASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)を通じた厳格な掲載基準の通達が必須です。

出典:消費者庁|アフィリエイト広告等に関する検討会報告書

アフィリエイター・インフルエンサーが注意すべき点

アフィリエイター自身も、景品表示法や薬機法の対象となり得ます。

とくに2023年10月から施行された「ステマ規制(景品表示法の指定告示)」により、広告であるにもかかわらず、広告であることが分かりにくい表示をすることは違法となりました。

これまでのような「個人の感想ブログ」の体裁であっても、アフィリエイトリンクがある以上は事業活動とみなされ、法令遵守が求められます。

守るべき項目は、以下のとおりです。

  • PR表記の徹底
  • 体験談の捏造禁止
  • 転載・借用のリスク

投稿の冒頭など、分かりやすい位置に「広告」「PR」「プロモーション」と明記しなければなりません。また、使用していない商品を使用したように装うことや、画像の加工は詐欺的な行為とみなされます。

加えて、他サイトのビフォーアフター画像を無断で使用することは、著作権侵害かつ景表法違反の二重苦となるため注意が必要です。

出典:消費者庁|「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準

動画・SNS広告特有の注意点(テロップ、ナレーション)

YouTube、TikTok、Instagramリールなどの動画広告では、文字情報だけでなく、音声(ナレーション)や映像の流れ全体が審査対象となります。

動画は情報量が多く、視聴者の感情を動かしやすいため、静止画以上に「全体的な印象」に対して優良誤認かどうか判断される点が特徴です。

とくに、以下の項目は要注意です。

  • テロップと音声の不一致
  • 打消し表示の視認性
  • ユーザーライクな演出

画面では「育毛」と書いてあっても、ナレーションで「生える!」と言っていれば違反です。また、「※個人の感想です」などの注釈が、スマホ画面で判読できないほど小さかったり、表示時間が短すぎたりする場合も、無効となります。

さらに、一般人の口コミのような動画であっても、内容に嘘があれば優良誤認となります。動画広告は情報量が多いため、静止画以上に細部までのチェックが必要です。

違反しないために弁護士に相談すべき理由と「広告チェック」の流れ

社内のチェック体制だけで、刻々と変化する規制に対応するのは限界があります。

安全かつ攻めの広告運用を行うために、専門家である弁護士の活用を検討しましょう。

なぜ自己チェックだけでは危険なのか?

自社でチェックを行う場合、どうしても「売りたい」「コンバージョンさせたい」というバイアス(偏り)がかかります。

また、担当者の知識がアップデートされていなかったり、ネット上の不正確な情報を鵜呑みにしたりするリスクもあるでしょう。

とくに「文脈(コンテキスト)」の判断は難しく、個々の単語はOKでも、前後の組み合わせでNGとなるケースも珍しくありません。専門的な知識がなければ、見抜くことが困難です。

弁護士に広告チェックを依頼する3つのメリット

薬機法・景表法に精通した弁護士に広告チェックを依頼することで、以下のメリットが得られます。

  • 行政処分のリスクを最小化できる
  • 「適法な言い換え」の提案がもらえる
  • 社内リソースの節約と安心感

過去の事例や最新の運用基準に基づき、客観的かつ厳格なチェックが可能です。単に「NG」と指摘するだけでなく、「こう書けばOK」という代替案を得られるため、訴求力を維持できます。

また、法務担当者の負担を減らし、マーケティングチームは安心してクリエイティブ制作に専念することが可能です。

関連記事:リーガルチェックとは?やり方や注意点・弁護士に依頼する費用を徹底解説

広告チェック・ご相談の流れ

一般的な法律事務所における、広告チェック(リーガルチェック)のフローを紹介します。 依頼から納品までは、早ければ数日、通常は1週間程度が目安です。

最近ではチャットツールやメールだけで完結するサービスも多く、以前ほどハードルの高いものではありません。

主な流れは、以下のとおりです。

ステップ内容
1. お問い合わせチェックしたいLP(ランディングページ)、記事、動画などのURLや原稿を送付します
2. お見積り分量や媒体に応じて費用が提示されます
3. 専門家による審査弁護士が薬機法、景表法、特商法などの観点から細かくチェックします
4. レポート提出NG箇所とその理由、修正案が記載されたレポートが納品されます
5. 修正・再確認指摘に基づいて修正した原稿を、再度最終確認します

関連記事:広告規制については弁護士に相談すべき?メリット・注意点や適切なタイミング・費用を徹底解説

育毛剤広告に関するよくある質問

「育毛剤」と「発毛剤」の違いは?

配合成分と認められる効果が異なります。

「発毛剤」は医薬品(第1類医薬品など)で、「新たな毛を生やす(発毛)」効果が認められているのが特徴です。第1類医薬品の販売には、薬機法第36条の6第1項により、薬剤師による書面を用いた情報提供が義務付けられています。

一方、「育毛剤」は医薬部外品で、今ある毛を育て、抜け毛を防ぐ効果(育毛・脱毛予防)が主目的となっています。

広告で「発毛」「毛が生える」と言い切れるのは、原則として医薬品のみです。育毛剤でこれらの表現を使うと、虚偽表示になります。

両者を混同して「育毛剤で発毛!」と謳うことは明確な法律違反となるため、分類表示を必ず確認しましょう。

ビフォーアフター写真は絶対に使えませんか?

育毛剤(医薬部外品)でビフォーアフター写真を使用することは、実質的にほぼ不可能です。「使用前後の毛髪量の変化」を示す写真は、たとえ事実であっても「効能効果の保証」とみなされます。

例外的に認められる可能性があるのは、「頭皮の洗浄前後の比較(角栓が取れた様子)」など、毛髪の量や質以外の物理的な変化を示す場合のみです。 

これについても、前後の文脈で「だから毛が生える」と暗示している場合はNGとなるため、安易な使用はおすすめしません。

アフィリエイターも罰せられますか?

アフィリエイターも罰せられる可能性があります。

基本的な処分対象が広告主であることに変わりはありません。しかしながら、薬機法は、広告の主体を限定しておらず、アフィリエイターも対象としています。また、景表法も改正により、悪質な優良誤認や有利誤認に該当する事案については刑事罰を用意しています。共犯の形で、アフィリエイターが処罰される可能性は否定できません。

また、法的処分だけでなく、ASPのアカウント停止(BAN)、報酬の没収、広告主からの損害賠償請求といったペナルティを受けるリスクもあるため、注意が必要です。

広告チェックはどのくらいの費用と時間がかかりますか?

依頼先や分量によりますが、数万円〜数十万円が相場です。

LP(ランディングページ)1本あたり1万円〜10万円程度が一般的です。納期は、早ければ2〜3営業日、通常は1週間程度が多いでしょう。

行政処分を受けた際の課徴金やブランド毀損の損失を考えれば、事前のチェック費用は非常に安価な保険といえます。

スポット(単発)依頼だけでなく、月額顧問契約(月額5万円〜など)のプランを用意している弁護士事務所もあるため、継続的にチェックを依頼したい場合は検討してみてください。

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まとめ|育毛剤の広告規制について理解を深め、適切な広告を出稿しよう

育毛剤の広告は、薬機法と景表法という2つの法律によって厳格に規制されています。「売れる表現」と「違法な表現」は紙一重であり、一歩間違えれば行政処分によって事業が停止する可能性も高いです。

ルールを守ることは、事業を守るだけでなく、悩みを抱える消費者に誠実に向き合うことでもあります。クリーンで適法な広告運用を目指し、持続可能なビジネスを構築しましょう。

自社の広告が法律に違反していないか不安な場合は、独断で判断せず専門家に相談することも重要です。無料相談を実施している法律事務所もあるため、まずは相談してみましょう。自社の育毛剤広告が法律に違反していないか不安な方は、専門家に相談することが大切です。丸の内ソレイユ法律事務所は、企業の薬機法・広告の法規制対応に詳しい弁護士が在籍しています。個々の製品や状況に応じて適切な解決策をご提案できるため、まずはお気軽にご相談ください。

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