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広告における最上級表現に注意!違反時の罰則や言い換え表現・確認すべき点を徹底解説

「業界No.1」「最高品質」といった最上級表現は、広告の訴求力を高める効果的な手法です。しかし、十分な根拠なく使用すると景品表示法違反と判断され、企業名の公表や課徴金が科されるリスクがあります。

宣伝・販促部門の担当者にとって、「どこまでなら使えるのか」「どんな根拠が必要なのか」という判断は、日々の業務で直面する重要な課題です。

本記事では、広告表現における最上級表現の規制内容、違反した場合の罰則、安全に使用するための条件から、訴求力を保ちながら言い換える実践的なテクニックまで徹底解説します。最上級表現のリスクを正しく理解し、法令を遵守しながら効果的な広告戦略を実現しましょう。

広告表現の法的リスクに不安がある場合や、景品表示法に関する専門的なアドバイスが必要な場合は、「弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所」へご相談ください。豊富な企業法務の実績を持つ弁護士が、貴社の広告戦略を法的側面から支援し、安全で効果的なマーケティング施策の実現をサポートします。

広告で注意すべき「最上級表現」とは?基本情報を解説

最上級表現は、商品やサービスの優位性を強調する広告手法です。しかし、景品表示法(景表法)では、根拠のない最上級表現を厳しく規制しています。まずは最上級表現の基本的な定義と、なぜ規制されるのかを理解しましょう。

最上級表現とは

最上級表現とは、商品やサービスが他と比較して最も優れていることを示す表現です。「最高」「最大」「No.1」「日本一」「業界トップ」といった言葉が代表例となります。これらの表現は、消費者に「これを選べば間違いない」という強い印象を与えるものです。

そのため、広告における訴求力が高い反面、消費者の商品選択に大きな影響を及ぼします。景品表示法(景表法)では、最上級表現を使用すること自体を禁止しているわけではありません。ただし、客観的な根拠なく使用した場合、消費者を誤認させる「優良誤認表示」「有利誤認表示」として規制の対象となります。

最上級表現が規制される理由

最上級表現が景表法で規制される理由は、消費者の自主的かつ合理的な商品選択を保護するためです。「No.1」「最高品質」といった表現は、消費者の購買判断に直接的な影響を与えます。

もし根拠のない最上級表現を使用した場合、消費者は誤った情報に基づいて商品を選ばなければなりません。例えば、実際には品質が劣る商品を「最高品質」と信じて購入し、期待した効果や品質が得られないような事態が発生してしまいます。

さらに公正な競争環境の維持という観点からも、最上級表現の規制は重要です。根拠のない最上級表現を使った事業者が有利になれば、真面目に品質向上に取り組む事業者が不利になります。このような不公正な競争を防ぐためにも、景表法が根拠のない最上級表現を厳しく規制している理由です。

出典:消費者庁|景品表示法

景品表示法における最上級表現の3つの種類

最上級表現には、大きく分けて3つの種類があります。それぞれ規制される理由や注意点が異なるため、広告制作時には各類型の特徴を理解しておきましょう。

1.最大級表現|「最高峰」「業界トップ」

最大級表現は、商品やサービスが最上位にあることを直接的に示す表現です。例えば以下のような言葉が該当します。

  • 最高峰
  • 最高級
  • 最上位
  • 業界トップ
  • トップレベル

これらの表現は、明確な順位付けや評価基準が存在することを示唆する表現です。そのため、使用する際には、何を基準に「最高」なのかを明確にし、その根拠を示さなければなりません。

例えば「業界トップの販売実績」と表示する場合、どの期間・どの市場・どの調査に基づくのかを明示する必要があります。根拠を示さずに最大級表現を使用すると、消費者に対して優良誤認を与えるため注意が必要です。

2.比較表現|「No.1」「日本初」「唯一」

比較表現は、他の商品やサービスと比較して優位性を主張する表現です。以下のような表現が代表例となります。

  • No.1
  • 売上第一位
  • 顧客満足度1位
  • 日本初
  • 業界初
  • 唯一

比較表現は、具体的な比較対象や比較基準の存在を強く示唆する表現です。消費者は「第三者機関の調査結果に基づいている」と認識しやすい傾向があります。そのため、これらの表現を使用する場合には、以下の情報を必ず明示しなければなりません。

  • 調査実施機関の名称
  • 調査実施時期
  • 調査対象の範囲
  • 調査方法

例えば「顧客満足度No.1」と表示するなら、「〇〇調査会社による2024年3月実施の全国1,000名を対象としたインターネット調査」といった具体的な情報の記載が求められます。

出典:消費者庁|No.1表示に関する実態調査について

3.絶対的表現|「絶対」「100%」「完璧」

絶対的表現は、例外や条件を認めない断定的な表現です。以下のような言葉が該当します。

  • 絶対
  • 100%
  • 完璧
  • 必ず
  • 確実
  • 万全

これらの表現は、商品やサービスの効果や品質について、一切の例外がないことを約束する表現です。しかし現実には、すべての消費者に対して100%の効果を保証できる商品はほとんど存在しません。個人差、使用環境、使用方法など、さまざまな要因によって結果は変わります。

そのため、絶対的表現を使用すると、実態と異なる期待を消費者に抱かせることになりかねません。特に健康食品や美容商品、教育サービスなどで絶対的表現を使用すると、優良誤認として問題になる可能性が高くなります。

最上級表現が景品表示法違反となるケース例

最上級表現は、適切な根拠があれば使用できます。しかし、以下のようなケースでは景品表示法違反として、措置命令や課徴金の対象となる可能性があります。

1.客観的な根拠・調査がない

基本的な景表法違反のパターンは、客観的な根拠や調査結果が存在しないケースです。最上級表現を使用する際には、必ず客観的なデータや第三者機関による調査結果を用意しなければなりません。

違反パターン具体例
根拠なしの最上級表現「売上No.1」と表示しながら、実際には販売実績の集計すら行っていない
主観的判断による表示社内の感覚や希望的観測に基づいて「業界トップクラス」と表示する

消費者庁は、優良誤認の疑いがある場合、事業者に対して15日以内に合理的根拠資料の提出を求めることができます。この期間内に資料を提出できない場合、または提出された資料が合理的根拠として認められない場合、優良誤認とみなされます。

出典:消費者庁|打消し表示に関する実態調査報告書

2.調査範囲が狭すぎる

客観的な調査を実施していても、その調査範囲が極端に狭い場合は問題となります。

問題となるケース具体例
調査範囲と表示の不一致全国展開している商品で「売上No.1」と表示しながら、実際には特定の地域や店舗だけの調査結果に基づいている
限定的な比較対象自社製品3種類だけを比較して「当社製品の中で顧客満足度No.1」と表示し、あたかも業界全体で1位であるかのように誤認させる
サンプル数の不足調査対象者が極端に少なく、統計的に有意な結果とは言えない

調査範囲は、表示内容と整合している必要があります。「日本一」と表示するなら全国規模の調査が必要であり、「業界No.1」と表示するなら業界全体を対象とした調査でなければなりません。

3.実態と異なる調査結果を引用している

調査結果自体は存在するものの、その内容を不正確に引用したり、都合の良い部分だけを抜き出して引用したりしているケースも違反となります。

違反パターン具体例問題点
部分的な引用総合満足度では3位だったにもかかわらず、特定の項目だけを取り出して「満足度No.1」と表示調査結果の一部だけを都合よく切り取り、全体の結論とは異なる印象を与える
古い調査結果の使用5年前の調査結果を現在の状況であるかのように表示調査時期が古すぎて、現在の実態を反映していない

調査結果を引用する際には、その内容を正確かつ適正に表示し、消費者に誤解を与えないように明示しなければなりません。調査時期についても記載し、最新の状況を反映した根拠資料を使用することが重要です。

最上級表現が景品表示法違反となった場合の罰則・リスク

景品表示法違反は、法的措置だけでなく、企業の信頼やブランドイメージに深刻な損害を与えます。違反が発覚した場合に科される可能性のある罰則とリスクを理解しておきましょう。

消費者庁や都道府県知事から「措置命令」を受ける

景品表示法違反が認められた場合、消費者庁または都道府県知事から措置命令が発令されます。措置命令で命じられるのは、以下のような内容です。

  • 違反行為の差し止め
  • 一般消費者への誤認排除措置(新聞広告などでの訂正告知)
  • 再発防止策の策定と実施
  • 今後同様の違反行為を行わないことの誓約
  • 役員及び従業員に対する景品表示法の周知徹底

措置命令の内容は、消費者庁のウェブサイトで企業名とともに公表されます。この公表により、違反内容が広く知られることになり、企業の信用に大きな打撃を与えかねません。措置命令を受けた企業は、指定された期間内に適切な対応を取る必要があります。

適格消費者団体による差止請求を受ける

景表法では、適格消費者団体が不当表示を行う事業者に対して、差止請求を行うことができます。適格消費者団体とは、内閣総理大臣の認定を受けた消費者保護団体です。これらの団体は、多数の消費者に被害を及ぼす恐れのある不当表示について、事業者に対して以下の請求ができます。

  • 不当表示の差し止め
  • 不当表示の予防に必要な措置

差止請求を受けた場合、企業は速やかに対応することが重要です。対応が遅れると、裁判に発展し、さらに大きな社会的注目を集めることになります。

出典:消費者庁|消費者団体訴訟制度とは

売上額に応じて「課徴金の支払命令」が出される

優良誤認や有利誤認に該当する不当表示を行った場合、課徴金納付命令の対象となります。

項目内容
課徴金の算定方法違反行為期間における対象商品・サービスの売上額×3%
最低金額150万円(これ未満の場合、課徴金納付命令は発令されない)
減額制度自主報告による減額(第9条)では、違反行為を自主的に消費者庁に報告した場合、課徴金額の50%が減額される。返金措置による減額(第10条・第11条)は購入者に対して返金を行った場合、返金額分が課徴金の算定基礎となる売上額から控除される
性質行政処分(前科にはならない)

例えば違反行為期間中の売上額が3億円の場合、課徴金は900万円(3億円×3%)となります。売上規模が大きい商品で違反が認められると、数千万円から億単位の課徴金が科される仕組みです。

なお、自主的に返金措置を行った場合には返金額分が課徴金から減額され、違反を自主申告した場合は課徴金額が最大50%減額される制度があります。

出典:消費者庁|景品表示法への課徴金制度導入について

措置命令に従わない場合は「刑事罰」が科される

措置命令に従わない場合、刑事罰の対象となります。措置命令を受けた後、指定された期間内に適切な対応を取らなかった場合や、命令内容を無視して違反表示を継続した場合などが罰則の対象です。

罰則の種類対象者罰則内容適用要件
措置命令違反に対する罰則違反行為者(代表者など)2年以下の懲役または300万円以下の罰金措置命令に従わない場合
措置命令違反に対する罰則法人(両罰規定)3億円以下の罰金措置命令に従わない場合
直罰規定(2024年10月1日施行)個人・法人問わず100万円以下の罰金故意に優良誤認・有利誤認を行った場合

2024年10月に施行された直罰規定により、措置命令を経ることなく、故意の違反表示に対して直接罰金が科される可能性もあります。刑事罰が科されると前科が付くため、企業の社会的信用だけでなく、役員個人のキャリアにも深刻な影響を及ぼす制裁です。

出典:消費者庁|【令和6年10月1日施行】改正景品表示法の概要

違反が公表されて社会的信用を喪失する

法的措置以上に深刻なのが、社会的信用の失墜です。措置命令や課徴金納付命令は公表されるため、メディアやSNSで大きく報道されます。「不適切な広告を行った企業」という印象は、長期にわたって企業イメージを損ない続けるものです。具体的に発生する影響は、以下のような内容となります。

  • メディアでの報道拡散
  • SNSでの批判・炎上
  • 既存顧客の離反
  • 新規顧客獲得コストの増大
  • 取引先からの信用低下
  • 採用活動への悪影響
  • 株価の下落(上場企業の場合)
  • 株主代表訴訟のリスク

ブランドイメージの回復には、長い時間と多大なコストがかかります。目先の売上のために不適切な最上級表現を使用することは、長期的に見れば大きな損失につながることを理解しておきましょう。

出典:消費者庁|景品表示法違反行為を行った場合はどうなるのでしょうか

最上級表現を広告で安全に使うための2つの必須条件

最上級表現は、適切な条件を満たせば使用することができます。安全に使用するために、必須条件を理解して実践しましょう。

1.最上級表現の根拠となる「客観的な調査結果」があること

最上級表現を使用する際の第一条件は、客観的な調査結果が存在することです。客観的な調査結果とは、以下のような特徴を持つものが該当します。

要件内容
第三者機関による調査独立した第三者機関(調査会社、業界団体など)が実施した調査であることが望ましい。自社調査でも認められる場合はあるが、調査方法の客観性と透明性が厳しく問われる。
統計的に有意なサンプル数調査対象者が極端に少ない場合、統計的に有意な結果とは言えない。一般的には、数百名以上のサンプル数が必要とされる。
適切な調査範囲表示内容と調査範囲が整合している必要がある。「日本一」なら全国規模、「業界No.1」なら業界全体を対象とした調査でなければならない。
最新の調査結果調査時期が古すぎる場合は、現在の状況を反映していないとみなされる。一般的には、1年以内の調査結果が望ましいとされている。

これらの要件を満たす調査結果を事前に準備し、15日以内に提出できる状態で保管しておくことが重要です。消費者庁から根拠資料の提出を求められた際に対応できなければ、優良誤認とみなされるリスクがあります。

2.調査結果を「正確かつ適正に引用」していること

客観的な調査結果があっても、その引用方法が不適切であれば違反となります。調査結果を正確かつ適正に引用するためには、以下の3つの点に注意が必要です。

要件具体的な内容
1.調査情報の明示調査実施機関名、調査実施時期、調査対象範囲、調査方法といった情報を広告内に明記する
2.調査結果の正確な引用調査結果の一部だけを都合よく切り取らず、正確に引用する
3.比較対象の明確化「No.1」と表示する場合、何と比較してNo.1なのかを明確にする

最上級表現を使用する広告内には、調査実施機関名、調査実施時期、調査対象範囲、調査方法といった情報を必ず明記しなければなりません。これらの情報は、打消し表示として小さく記載するのではなく、消費者が容易に認識できる大きさと位置に表示しましょう。

さらに調査結果の一部だけを都合よく切り取ってはいけません。総合評価ではなく特定項目だけを取り出す場合は、その旨を明確に表示する必要があります。

もし「No.1」と表示する場合、何と比較してNo.1なのかを明確に記載しましょう。「当社製品の中でNo.1」なのか「業界全体でNo.1」なのか、消費者が誤認しないよう正確に表示することが重要です。

出典:消費者庁|不実証広告規制

最上級表現に頼らない!安全な言い換え表現と訴求テクニック

最上級表現のリスクを避けつつ、訴求力を保つには、適切な言い換え表現を活用することが有効です。ここでは、実務で使える安全な表現方法を紹介します。

1.「トップクラス」「有数」など事実に基づく表現

絶対的な1位を主張するのではなく、上位グループに属していることを示す表現は、比較的安全に使用できます。

リスクの高い表現安全な言い換え表現
「業界No.1」「業界トップクラス」「業界有数」
「日本一」「国内屈指」「国内トップレベル」
「最高品質」「高品質」「プレミアム品質」
「最も人気」「高い人気を誇る」「多くのお客様に選ばれている」

これらの表現は、絶対的な順位を主張するものではないため、1位でなくても使用できます。ただし、「トップクラス」と表示する場合も、ある程度の根拠(例:業界上位3位以内)を持っておくことが望ましいでしょう。

2.「従来比〇%」「お客様満足度〇%」など実績・数値で示す表現

最上級表現を使わなくても、具体的な数値を示すことで訴求力を持たせることができます。

表現の種類具体例
比較対象を明確にした数値表現「従来品と比較して30%軽量化」
「当社2020年モデルと比べて燃費が20%向上」
「前年同期比で売上150%増加」
顧客満足度など実績に基づく数値「お客様満足度92%(2024年3月当社調べ、n=500)」
「リピート率85%を達成」
「10万人以上のお客様にご利用いただいています」

これらは最上級表現を使用せず、商品やサービスの優位性を伝えられる表現です。数値を示す際は、その根拠となる調査時期、調査方法、サンプル数を併記することで、消費者に対する信頼性が高まります。

3.「~を目指す」「~に挑戦する」など姿勢を示す表現

現状の実績ではなく、企業の目標や姿勢を示す表現も効果的です。最上級表現のような断定的な主張を避けつつ、企業の志向性や取り組みを消費者に伝えることができます。

表現の種類具体例特徴
目標を示す表現「業界No.1を目指して」「最高品質の実現に向けて」「お客様満足度日本一を目標に」現時点で1位であると主張しているわけではないため、景表法違反のリスクは低い
企業姿勢を示す表現「品質へのこだわり」「お客様第一主義」「妥協のないモノづくり」抽象的な表現ではあるが、企業の価値観や姿勢を伝えることで、ブランドイメージの構築につながる

ただし、これらの表現も、実態が伴っていない場合は問題となる可能性があります。「お客様第一主義」と謳いながらクレーム対応が劣悪な場合など、実態と大きく乖離している場合は注意が必要です。企業姿勢を示す表現を使用する際も、その表現に見合った実際の取り組みや体制を整えておくことが重要です。

最上級表現の景表法違反を防ぐために確認したい5つのポイント

広告を公開する前に、以下の5つのポイントをチェックすることで、景表法違反のリスクを大幅に軽減できます。

1.客観的な根拠があるか

最上級表現を使用する場合、必ず以下の点を確認しましょう。

  • 調査データや試験結果など、客観的な根拠資料が存在するか
  • その根拠資料は、第三者機関によるものか、または客観性が担保されているか
  • 根拠資料は15日以内に提出できる状態で保管されているか

根拠資料がない場合、または根拠として不十分な場合は、最上級表現の使用を見送るべきです。「社内の感覚では1位だと思う」といった主観的な判断は、根拠として認められません。

2.根拠の内容と時期が妥当か

根拠資料があっても、その内容や時期が適切でなければ意味がありません。表示内容と調査範囲は必ず一致させる必要があります。広告で主張する範囲と実際の調査対象範囲が異なる場合、消費者に誤認を与えるため注意が必要です。

表示内容必要な調査範囲
「日本一」「全国No.1」全国規模の調査
「業界No.1」業界全体を対象とした調査
「地域No.1」該当地域を対象とした調査
「当社製品の中でNo.1」自社製品全体の比較

例えば、東京都内だけの調査結果で「日本一」と表示すれば、調査範囲と表示内容に大きな乖離があり、消費者を誤認させることになります。

さらに調査した時期や情報が古すぎる場合、現在の状況を反映していないとみなされるため、調査時期の妥当性にも注意が必要です。一般的には、1年以内の調査結果を使用することが望ましいとされています。

3.比較対象を明確にしているか

「No.1」「最高」といった表現を使用する場合、何と比較しているのかを明確にする必要があります。明確にすべき比較対象は、以下のような内容です。

  • 競合製品との比較なのか
  • 自社の従来製品との比較なのか
  • 業界全体との比較なのか
  • 特定のカテゴリー内での比較なのか

比較対象が曖昧だと、消費者が実際よりも広い範囲で優れていると誤認する可能性があります。「当社従来品比」「同価格帯製品との比較」など、比較対象を明示することが重要です。

出典:比較広告に関する景品表示法上の考え方

4.消費者が誤認しない表現になっているか

客観的な根拠があっても、表示方法によっては消費者を誤認させる可能性があります。打消し表示を使用する場合、以下の点を確認しましょう。

  • 強調表示と同一視野に入る場所に配置されているか
  • 文字サイズは消費者が認識できる大きさか
  • 背景色と区別でき、容易に読み取れる色か
  • 表示内容は消費者が理解できる平易な表現か

例えば、広告の目立つ部分に「効果実感率95%」と大きく記載しながら、画面の下部に極小文字で「※n=20名の社内モニター調査」と記載するような場合、打消し表示として機能していないとみなされます。

さらに個々の表現は正確でも、広告全体として消費者に誤解を与える場合は注意が必要です。広告を客観的に見て、一般消費者がどのように理解するかを検討するようにしましょう。

5.根拠資料は適切に保管できているか

消費者庁から根拠資料の提出を求められた場合、15日以内に提出する必要があります。そのため、根拠資料は以下のように適切に保管しておきましょう。

項目内容
保管すべき資料調査報告書(調査機関名、調査時期、調査方法、調査結果の詳細を含む)、試験データ(試験機関名、試験方法、試験結果を含む)、専門家の意見書、契約書や発注書(第三者機関に調査を依頼した場合)
保管方法すぐにアクセスできる場所に保管する、デジタルデータとして保存し検索しやすい状態にする、広告表示と根拠資料を紐付けて管理する、広告掲載期間終了後も一定期間保管する

根拠資料の保管が不十分だと、いざというときに提出できず、優良誤認とみなされるリスクがあります。特に複数の広告キャンペーンを同時に展開している場合、どの広告にどの根拠資料が対応しているかを明確に管理することが重要です。根拠資料の管理体制を整備し、担当者が変わっても適切に対応できる仕組みを構築しておきましょう。

出典:消費者庁|事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針

最上級表現に関するよくある質問

「当社比」や「個人の感想です」と書けば最上級表現を使用できる?

「当社比」や「個人の感想です」といった打消し表示があれば、どんな表現でも許されるわけではありません。

例えば「業界No.1の性能(当社比)」といった表示は、矛盾した表現です。「業界No.1」と表示すれば、消費者は業界全体との比較だと理解します。正しくは「当社従来品と比較して性能が30%向上」のように、比較対象を明確にした表現を使用すべきです。

さらに体験談や口コミに「※個人の感想であり、効果を保証するものではありません」と記載するケースがあります。この打消し表示があっても、体験談の内容が明らかに誇大である場合、または商品の効果として一般的に期待できない内容である場合は、優良誤認となる可能性があります。

打消し表示に頼るのではなく、そもそも誤認を生まない正確な表現を心がけることが基本です。

出典:消費者庁|打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点

プレスリリースやオウンドメディアの記事でも景表法の対象になる?

景表法の「表示」とは、広告だけでなく、商品やサービスの内容・取引条件について、事業者が消費者に向けて行う全ての情報提供を指します。そのため、以下のようなものも景表法の規制対象です。

  • テレビCM、新聞広告、雑誌広告
  • インターネット広告、SNS広告
  • 自社ウェブサイト、オウンドメディアの記事
  • プレスリリース
  • 商品パッケージ、カタログ
  • 店頭POP、チラシ
  • メールマガジン、DM

プレスリリースやオウンドメディアの記事であっても、商品やサービスに関する情報を発信している以上、景表法の規制対象となります。最上級表現を使用する際は、媒体を問わず、客観的な根拠を確保し、適切な表示を心がけることが重要です。

違反してしまった場合はどう対応すればよい?

自社の広告で景表法違反の疑いがある表示を発見した場合、速やかに以下の対応を取りましょう。

段階対応内容相談先・実施事項
1.初期対応違反の疑いがある表示の一時停止社内の法務・コンプライアンス部門に報告
2.専門家への相談法的リスクの評価と対応策の検討景表法に詳しい弁護士に相談
3.是正措置広告の修正・停止、消費者への周知弁護士のアドバイスに基づき実施
4.自主申告検討確約手続の利用を検討消費者庁への自主申告により措置命令回避・課徴金減額

確約手続とは、事業者が自主的に違反行為を申告し、是正措置を約束することで、消費者庁の調査や措置命令を回避できる制度です。確約手続を利用すると、措置命令による企業名の公表を避けることができ、課徴金も減額される可能性があります。

違反を発見した時点で迅速に対応し、ダメージを最小限に抑えるようにしましょう。「誰も気づいていないから大丈夫」と放置せず、速やかに専門家に相談することが重要です。

出典:消費者庁|確約手続に関する運用基準

まとめ|客観的な根拠を準備し、適切に「最上級表現」を使用しよう

最上級表現は、適切な根拠と正確な引用があれば、広告での使用が可能です。しかし、根拠なく使用した場合、景品表示法違反として措置命令や課徴金の対象となり、企業の信頼を大きく損なうリスクがあります。

広告担当者が取るべき対策としては、まず客観的な調査結果を確保し、適切に保管することが不可欠です。調査範囲や時期が妥当か、比較対象が明確か、消費者が誤認しない表現になっているかを確認しましょう。

最上級表現に頼らなくても、「トップクラス」などの安全な表現、具体的な数値での訴求、企業姿勢を示す表現など、効果的な代替手段は多数存在します。景表法は「知らなかった」では済まされない法律です。日頃から法令遵守を意識した広告運用を心がけることが、長期的な企業価値の向上につながります。

広告表現が景表法に抵触しないか不安な場合や、措置命令のリスクを事前に回避したい場合は、「弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所」にご相談ください。景表法の専門知識を持つ弁護士が、広告公開前のリーガルチェックから社内ガイドライン策定まで、法令違反を未然に防ぐための実践的なサポートを提供します。

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