化粧品等の広告を作成するにあたって、ぐんぐんと肌の奥深くまで成分が浸透することを示して、化粧品等の効果が実によく発揮されるというイメージを消費者に印象付けたいということは多いと思います。
しかしながら、肌への浸透に関する表現については、必ずしも無制限に表現できるものではありませんので、その点に注意しなければなりません。
1 化粧品における浸透表現について
(1)まず、化粧品については、化粧品等の適正広告ガイドラインにおいて、浸透といった表現は、化粧品の効能効果が確実に発生するかのような暗示や効能効果の範囲を超える効果を暗示するおそれがあるため、原則として記載しないこととされています。
例外的に認められているのは、化粧品の作用する範囲が角質層までであることが明記され、かつ、効能効果を保証したり、効能効果の範囲を逸脱したりするものではない場合です。
上記はあくまでガイドラインによる規制であり、違反したからといって直ちに薬機法違反になるものではありませんが、浸透等の表現によって肌の深部への影響を暗示すれば、やはり薬機法上違反となるおそれがあります。
(2)では、具体的にどういった表現であればリスクが小さいかというと、例えば、「角質層まで浸透する」「肌に浸透※※角質層まで」といった表現であれば、作用部分が角質層に限定されていることが明らかであり、効能効果の範囲を超えないものと考えられます。
「※角質層」と注記をしておけば、リスクがないのだと思われるかもしれませんが、そうではありません。
たとえば、「肌の奥深く※※角質層」といった表現については、角質層に限らず、真皮部分等も含め、肌の奥深くに作用する効果を暗示してしまい、医薬品的効能効果を暗示するおそれがあります。このように医薬品的効能効果を暗示することとなれば、ガイドラインとの関係だけでなく、薬機法違反となるリスクが出て来ます。
(3)また、見落としがちなのが、アニメーションによる浸透表現です。
たとえば、化粧品の成分が浸透していく様子を皮膚のアニメーションと成分を表す矢印等で示すものです。
これは浸透表現以外にも言えることですが、広告表現は個々の文章表現だけでなく広告全体の印象から法令違反の内容を暗示することも認められませんので、当然アニメーション部分で化粧品の効能効果の範囲を超えた効果を暗示してはいけません。
したがって、そういったアニメーションの場合にも、作用範囲が角質層部分までであることを明示するのが望ましいと言えます。
2 医薬部外品における肌への浸透表現について
一方で、医薬部外品の場合、事実に基づき承認を得た効能効果の範囲であれば、肌の真皮への作用を訴求することができます。
医薬部外品の場合、有効成分の作用機序について承認を得ており、その範囲で広告をすることが認められているので、承認を受けた際に真皮への作用があることが作用機序として認められている場合には、当該真皮部分への作用にも言及することができます。
もっとも、これは有効成分についての話であるため、有効成分以外の成分については、同様には考えられないことに注意が必要です。