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  • 課徴金制度のあらまし
  • 課徴金額の算定
  • 課徴金の納付
  • 課徴金の対象となる行為
  • 課徴金の減額
  • 景表法で禁止されている行為

【課徴金制度のあらまし】

Q: 課徴金って何ですか?

2016年4月1日、不当な表示をした事業者に対し、課徴金を課すことができる改正景表法が施行されました。この改正は、昭和37年に景表法が制定されてから、もっとも大きなものであり、事業者に与える影響も大きなものです。課徴金は、最大、3年間の売上げの3パーセントの額になりますから、課徴金が課された場合、経営に与える影響は甚大です。この記事では、どうして課徴金制度がつくられたのか、どのような場合に事業者が課徴金を支払わなければならないのか、その金額はどのように計算されるのか、課徴金の金額に不満があるときはどうしたらいいか、どのようにして課徴金を支払うのか、課徴金を支払わなかったらどうなるかなど、実務的な観点から、ご説明していきます。

Q: 課徴金に不服があるときはどうしたらいいですか?

課徴金を納めるよう求める命令を「課徴金納付命令」といいますが、例えば、課徴金を納めること自体について不服がある場合や課徴金の金額に不服がある場合には、事業者は、不服申し立てをすることができます。方法は2つあります。ひとつめは、行政不服審査法第4条第1号に基づき、消費者庁長官に対して審査請求を行う方法です。もうひとつは、行政事件訴訟法第3条第2項に基づき、処分取消訴訟を行う方法です。

Q: どうして課徴金制度が作られたのですか?

一番大きなきっかけは、平成25年秋に表面化した、ホテルやレストラン等でのメニュー表示問題です。当時、有名ホテルやレストラン等で「バナメイえび」を「芝えび」と表示したり、冷凍保存魚を「鮮魚」と表示したりするなどしていたことが公になり、社会問題となりました。当時、私は、法務省刑事局に所属しており、国会で「何らかの方法でこのような不適切な表示を処罰することはできないか。」などという質問が出た場合に備えて、あらゆる関連法令を調べたのですが、このような行為をしたことをもって直ちに刑事罰を与えることができるような規定は当時、見当たりませんでした。逆に言えば、十分な抑止力のある法律が見当たらない状況であったからこそ、原材料名を偽るなどした問題のある表示が横行していたわけです。このような状況は、やはり国会でも問題視され、まず、平成26年6月に都道府県知事に不当表示に対する措置命令(措置命令については、あとで詳しくご説明します。)を行う権限が与えられるなどの法改正、平成26年11月には、課徴金制度を新設する法改正が行われました。その後、課徴金に関して必要事項を定めた景表法施行令、景表法施行規則が定められ、平成28年4月1日から、課徴金制度の運用が始まったのです。

Q: どのような場合に課徴金を支払わなければならないのですか?

事業者が優良誤認表示や有利誤認表示をした場合には、一部例外はありますが、課徴金を払わなければなりません。優良誤認表示とは、例えば、15万kmも走行した中古自動車に走行距離1万kmと表示するような場合です。有利誤認表示とは、例えば、いつも1万円で売っている商品に、「期間限定、今だけ半額で1万円」などと表示する場合です。自社の商品やサービスにこのような不当な表示をした事業者には、課徴金が課せられる可能性があるわけです。

【課徴金額の算定】

Q: 課徴金の金額はどのように計算されますか?

課徴金の金額は、問題となる表示をした商品やサービスの売上げの3パーセントに、問題の表示をしていた期間(最大3年)を掛けて計算されます。例えば、小売業者がいつも5万円で売っていた商品を「今だけ優待価格5万円」と表示して、3年間にわたって、毎年3億円分販売していたとします。そうすると、3億円の3パーセントに3年を掛けた、合計900万円が課徴金の額になります。

Q: メーカーが不正な表示をした商品を小売業者に販売し、小売業者がさらにその商品を小売りした場合、売上げの金額はどのようにして決められるのですか。

例えば、衣料品のメーカーAが「綿100パーセント」と表示した、実は「ポリエステル100パーセント」の商品を小売業者Bに納品し、小売業者Bがこれを小売した場合、衣料品メーカーAにとっての売上げは、衣料品メーカーAが小売業者Bに売却した商品の金額になります。そして、小売業者Bの売上げは、小売業者Bがお客さんに販売した商品の金額になります。

Q: 不正な表示をした商品を購入したお客さんが商品を返品しましたが、その場合、売上金額はどのように計算されますか?

有利誤認表示や優良誤認表示をした商品を買ったお客さんがその商品を返品した場合、その商品の金額を売上げ金額から控除することができます。

Q: 課徴金の額は、売上げに3パーセントを掛けて計算できるようですが、3パーセントという割合をもっと低くしてもらうことはできませんか?

できません。たしかに、「不正な表示」が悪質であればあるほど高い割合、悪質でなければ低い割合とするという考え方もありえます。しかし、「不正な表示」がどれだけ悪質かを判断するには、時間がかかりますし、行政庁が個別に決めた割合に不満や不公平感を持つ事業者が必ず出てくることになります。そこで、景表法は、売上げに掛ける割合を3パーセントと一律にこちらが、指定された内容を

Q: 課徴金の金額はどのように計算されますか?

課徴金の金額は、問題となる表示をした商品やサービスの売上げの3パーセントに、問題の表示をしていた期間(最大3年)を掛けて計算されます。
例えば、小売業者がいつも5万円で売っていた商品を「今だけ優待価格5万円」と表示して、3年間にわたって、毎年3億円分販売していたとします。そうすると、3億円の3パーセントに3年を掛けた、合計900万円が課徴金の額になります。

Q: メーカーが不正な表示をした商品を小売業者に販売し、小売業者がさらにその商品を小売りした場合、売上げの金額はどのようにして決められるのですか。

例えば、衣料品のメーカーAが「綿100パーセント」と表示した、実は「ポリエステル100パーセント」の商品を小売業者Bに納品し、小売業者Bがこれを小売した場合、衣料品メーカーAにとっての売上げは、衣料品メーカーAが小売業者Bに売却した商品の金額になります。そして、小売業者Bの売上げは、小売業者Bがお客さんに販売した商品の金額になります。

Q: 不正な表示をした商品を購入したお客さんが商品を返品しましたが、その場合、売上金額はどのように計算されますか?

有利誤認表示や優良誤認表示をした商品を買ったお客さんがその商品を返品した場合、その商品の金額を売上げ金額から控除することができます。

Q: 課徴金の額は、売上げに3パーセントを掛けて計算できるようですが、3パーセントという割合をもっと低くしてもらうことはできませんか?

できません。たしかに、「不正な表示」が悪質であればあるほど高い割合、悪質でなければ低い割合とするという考え方もありえます。
しかし、「不正な表示」がどれだけ悪質かを判断するには、時間がかかりますし、行政庁が個別に決めた割合に不満や不公平感を持つ事業者が必ず出てくることになります。
そこで、景表法は、売上げに掛ける割合を3パーセントと一律にすることで、すばやく、簡単に、課徴金の金額を計算できるようにしたのです。

Q: 売上げに掛ける割合が3パーセントと一律であることは分かりましたが、どうして3パーセントなのですか。その根拠を教えてください。

課徴金の制度に関する法律を立案した方々によると、この3パーセントは、消費者庁が設置された平成21年以降、不当な表示が行なわれ、措置命令が出された事案での事業者の売上高営業利益率を計算したところ、その中央値が3パーセントであったため、この数字を採用したとのことです。
売上高営業利益率とは、営業利益を売上高で割ったものですが、経済産業省のホームページを見ますと、少し古いデータですが、中小企業、大企業とも4%程度の数字となっています。売上高営業利益率は、一般的に、小売業者では低く、不動産や医薬品会社では比較的高いとされており、課徴金の金額を計算するのに、一律3パーセントとすることは、公平ではないようにも思われますが、業種別に割合を変えることは煩雑であり、行政の効率を考えると一律に3パーセントと決めたことも合理性があるものと思われます。

なお、小売業界は、売上高営業利益率が低い業界であるといわれており、不当な表示が行なわれた商品の売上高の3パーセントの課徴金を支払うと、手元に残る利益はほとんどないか、場合によってはマイナスとなる可能性もあります。
不当な表示で得た収益はすべて課徴金として支払わせ、事業者に利益を残さないようにしようという法律の意図が3パーセントという数字からは明らかになっています。

【課徴金の納付】

Q: 課徴金を支払ったら損金として計上することができますか?

できません。課徴金を損金に算入できるとしてしまうと、実質的に事業者の経済的な不利益が小さくなってしまいます。

例えば、事業者が500万円の課徴金を支払った場合、これが損金に算入できることになれば、課税所得が減り、所得税額や法人税額が減少することになります。課徴金を課すのは、不当な表示をすることが経済的にわりに合わないと事業者に思ってもらい、不当な表示を抑止するためです。
売上額の3パーセントというのは、多くの事業者にとって、不当な表示をしたことにより得られた利益をすべて吐き出させる水準です。もし課徴金の損金算入が認められてしまうと、所得税額や法人税額の軽減を通じて、不当な表示をしたことによる利益が事業者に残ってしまうことになります。
そうすると、「課徴金を払ったとしても、不当な表示をしたほうが得だ」ということになってしまい、事業者が不当な表示を止めようと思わなくなってしまいます。そもそも、課徴金の制度が作られた理由は、課徴金を支払わせることで、不当な表示が行なわれないようにするためでしたから、この目的を達成するためには、課徴金の損金算入を認めるわけにはいかないのです。

Q: 課徴金はいつまでに支払わなければなりませんか?

課徴金を課せられた事業者のところには、「課徴金納付命令書」が送られてきます。この命令書には、納めなければならない課徴金の金額、課徴金の金額の計算の根拠、課徴金の対象とされた行為、課徴金を納めなければならない期限などが書いてあります。課徴金は、この課徴金納付命令書が出された日から7か月以内に納めなければなりません。

Q: 督促状に書いてある期限までに課徴金を支払わなかったらどうなりますか?

課徴金納付命令が執行される可能性があります。具体的には、課徴金納付命令を受けた者の財産が差し押さえられ、最終的には競売などの手続きを経てお金に変えられ、国に納められることになります。
なお、景表法は、事業者の資産等の調査できる権限を行政庁に与えていますから、課徴金を支払わなければならない事業者名義の資産は、照会により明らかにされることになります。

Q: 督促状を送られることによるペナルティはありますか?

あります。課徴金を納めなければならない日の翌日から、実際に課徴金を納付した日まで、年14.5パーセントの延滞金を支払わなければならなくなる可能性があります。
景表法には、「延滞金を徴収することができる。」(景表法第18条第2項)と書いてありますので、延滞金を必ず支払わなければならないかというと、そうではない場合もあるようですが、督促が行なわれた後は、高率の延滞金を払わなければならなくなる可能性がある点は、注意が必要です。

Q: 課徴金を納めるよう命じられた会社を他の会社と合併させてしまえば、課徴金を払わなくてよくなりますか?

いいえ、存続後の会社が課徴金を払わなければなりませんので、合併をしたとしても課徴金を払わなくてよくなるわけではありません。

【課徴金の対象となる行為】

Q : 不当な表示にまったく影響されずに商品やサービスを購入したお客様からの売上げについても課徴金が課せられるのですか?

そうなります。例えば、いつも5万円で売っていた商品を「今だけ優待価格5万円」と表示して販売していたとします。お客様は、いつも5万円で売っていて、「今だけ5万円」が事実とは違うことを十分知りながら商品を購入していたとします。このような場合であっても、課徴金の計算方法は変わりません。課徴金の額は、不当な表示がお客様に実際に影響を与えたかどうかにかかわらず、Q○の計算式で計算されることになります。

Q : 不当な表示であると知らずに商品やサービスを販売していましたが、課徴金を払わなければならないのですか。

払わなければならない可能性があります。例えば、衣料品の小売業者Aが、卸売業者Bから「カシミヤ100パーセント」であると説明を受けたセーターを仕入れ、売り場に「カシミヤ100パーセント」のポップを立ててこれを販売していましたが、実は、このセーターは、「ポリエステル100」だったとします。小売業者Aは、手触りがカシミヤと違うとは思いましたが、卸売業者Bの説明をそのまま信じて「ポリエステル100パーセント」のセーターをお客さんに売っていました。

この例では、小売業者Aは、商品の表示が実際と違うことを知りませんでしたが、このような場合も課徴金を支払わなければならないのでしょうか。残念ながら、このような場合であっても小売業者Aは、セーターの売上げに応じた課徴金を支払わなければなりません。
もちろん、A社に「ポリエステル100パーセント」のセーターを「カシミヤ100パーセント」であると説明して販売したB社も課徴金を支払わなければなりません。
どこかで実態と異なる表示が行われると、それを信じてさらに販売した事業者に対しても課徴金が課される可能性があるわけです。

Q: 不当な表示であると知らずに商品やサービスを販売していた場合は、必ず課徴金を払わなければいけないのですか。

払わなくてよい場合もあります。前の記事では、「払わなければならない可能性がある」と言っておきながら、ここでは「払わなくてよい場合もある」、いったいどちらなのかと思われると思います。
ここが少し複雑なところなのですが、次の厳しい3つの条件をすべてクリアした場合には、課徴金が課せられません。

問題となった表示が不当表示であることを知らなかったことある程度の注意をしていたと認められること不当表示をしていた全期間、①と②の要件を満たすことそれでは、これから、これらの条件をひとつひとつ見ていきましょう。
まず、「①問題となった表示が不当表示であることを知らなかったこと」ですが、これは、事業者が行っていた表示が「不当表示」、具体的には、「優良誤認表示」や「有利誤認表示」であることを知らなかったということです。

ここで、「優良誤認表示」とは、商品やサービスの品質等が実際より著しく優れていると勘違いさせる表示等であり、「有利誤認表示」とは、商品やサービスの価格や取引条件等が実際よりも著しく有利であると勘違いさせる表示等です。和牛でないのに和牛と表示するのが「優良誤認表示」の典型例、いつも1万円なのに「今だけ半額1万円」などと表示するのが有利誤認の典型例でしたね。
次に、「②ある程度の注意をしていたと認められること」ですが、例えば、小売業者は、メーカーから提供される書類を見るなどして、おかしい点がないかどうか自ら確認していた場合には、この条件がクリアされたといえるでしょう。

Q13の例をもう一度みていただきたいのですが、この例では、小売業者Aは、卸売業者Bの説明を鵜呑みにしていますし、商品の品質も「カシミヤ100パーセント」と「ポリエステル100パーセント」では大きく違うはずなのに、なんの疑問も抱かずにそのままお客さんに販売しています。この例では、やはり「②ある程度の注意をしていた」とは認められないでしょう。

最後に、「③不当表示をしていた全期間、①と②の要件を満たすこと」についてですが、①事業者が不当表示の途中で、表示が不当であると気づいてしまっていたり、②不当表示の途中で注意をしなくなってしまった場合には、課徴金の支払いを免れないことになります。
例えば、Q13の例で、「ポリエステル100パーセント」のセーターを「カシミヤ100パーセント」と表示して販売していた小売業者Aが、顧客からのクレームをきっかけにセーターが「カシミヤ100パーセント」ではないと知ったとします。しかし、その後も「カシミヤ100パーセント」という表示を改めずに販売を継続していたとすると、販売の全期間の売上げ3パーセントの課徴金を支払わなければなりません。「カシミヤ100パーセント」であると信じて販売していた期間についても課徴金を支払わなければならなくなりますから、表示が不当表示に当たると知った時点で販売をやめるのがよいと思われます。

Q: 不当表示であると知っていながら商品・サービスを販売していても課徴金を払わなくていい場合があると聞きましたが、本当ですか。

ほんとうです。事業者が、商品やサービスの品質が実際よりもとてもよいと誤解されるような表示等(優良誤認表示)をしたり、商品やサービスの価格が実際よりもとても有利であると誤解されるような表示等(有利誤認表示)をしたりすると、課徴金を支払わなければならない可能性があります。例えば、「純金のネックレス」と表示した商品が実は「金の含有率が40パーセント」だった場合、この表示は優良誤認表示になりますし、「東京で一番安い」と表示しているが、実は競合店の価格をまったく調査していなかった場合、この表示は有利誤認表示になります。

そして、課徴金の額は、優良誤認表示や有利誤認表示をした商品やサービスの売上高の3パーセントですから、問題の表示をした商品の売上げが3000万円なら、90万円、1億円なら、300万円が課徴金の金額になりそうです。

しかし、景表法は、このようにして計算した金額が150万円よりも少ない場合、課徴金を課すことができないと定めています。要は、景表法上、問題がある表示をしたとしても、金額を計算したら150万円に満たない場合、課徴金はなしになるということです。

Q: どうして課徴金が課されない場合があるのですか?

商品やサービスの品質が実際よりもとてもよいとか(優良誤認)、価格が実際よりもお客さんにとても有利である(有利誤認)と誤解されるような表示をして商品やサービスを販売したとしても、その商品やサービスの売上高の3パーセントが150万円に満たない場合、課徴金は課せられません。これには2つの理由があります。

1点目が行政の都合です。金額が小さい案件についてまで課徴金を支払わせることになると、件数が多くなりすぎ、行政側の負担が大きくなってしまいます。場合によっては、行政側の人件費のほうが高くついてしまうかもしれません。ですから、150万円という一定の金額を定め、それ以上の案件についてだけ、課徴金を支払わせることにしたわけです。

2点目が、問題のある表示をしたとしても、その規模が小さければ消費生活への影響が小さいと考えられる点です。100億円の売上げがある商品やサービスに問題がある表示をした場合と、1000万円の売上げしかない商品やサービスに問題がある表示をした場合では、消費者に与える影響が大きく違います。影響が小さいものについては、課徴金を払わせなくても、消費生活への影響が小さいからいいだろうというと法律を作る側が考えたということです。

このような理由から、優良誤認表示や有利誤認表示をした商品の売上高の3パーセントが150万円を超えない場合には、言い換えれば、問題のある商品の売上高が5000万円を超えない場合には、課徴金を支払う必要はないということになります。もっとも、課徴金を支払わなくてよいとしても、措置命令等が出されることがありますので、まったくの無罪放免というわけではないことにご注意ください。

【課徴金の減額】

Q: 課徴金を減額してもらうことはできますか?

できます。課徴金には減額の制度が大きく分けて2つあります。ひとつは、不当な表示をしていたことを事業者が自ら「報告」することで課徴金が半分になる制度、もうひとつが不当な表示をしていた商品を購入したお客さんに一定の金額を返金することで、課徴金が減額される制度です。

Q: 返金の対象となるのはどのようなお客さんですか?

返金の対象になるのは、不当な表示をした商品やサービスを購入した一般のお客さんです。
どのようなお客さんが返金の対象になるかについては、政令で定められています。具体的には、課徴金の対象となる期間内に、不当な表示がされた商品の引渡しを受けたり、サービスを受けたりしたお客さんが返金の対象となります。

もちろん、お客さんが課徴金の対象期間内に商品を購入・サービスを受けたというだけでは足りず、例えば、商品の領収書やサービスに関する契約書等の資料がなければ、返金の対象のお客さんとは認められません。返金の対象となるお客さんについては、ある程度これを厳格に決めないと、例えば事業者が自分の関係者に対し、多額の返金をして、課徴金の減額を受けるなどというずるいやり方が横行してしまうかもしれません。そのため、返金の対象となるお客さんかどうかは、領収書等の資料で決めることにしたのです。

Q: 返金を申し出たお客さんにしか返金してはいけないのですか?

申出をしたお客さんに対する返金だけが、課徴金減額の対象となります。もし、申出をしないお客さんに返金をしたとしても、課徴金は全く減額されません。これは、返金を受けるかどうかはお客さんが自由に判断すべきことだからです。ですから、例えば、問題のある表示をした通信販売業者が、お客さんの名簿を利用して、いっせいに返金をしたとしても、このような返金はお客さんの申出に基づかないため、課徴金減額の対象になりません。

Q: 返金の対象となるお客さんが、返金の申出をしてきました。商品の返却を条件にして返金をすることはできますか?

できますが、返金した金額は、課徴金減額の対象になりません。課徴金の減額が認められるためには、返金の対象となるお客さんの申出があれば、無条件に返金をすることが必要です。

Q: お客さんに返金すると課徴金の額を減らしてもらえるのですか?

複雑な手続きが必要となりますが、返金した額に応じて、課徴金の額が減額されます。なお、返金に伴う様々なコストを考えると、返金したことにより減額される課徴金の額より、返金に必要な費用のほうが大きくなる場合もあり得ます。ですから、支出する金額を減らしたいという観点からすれば、お客さんへの返金が合理的ではない場合もあり得ます。

しかし、企業イメージの観点からすると、問題がある表示をしたことを認めて謝罪し、返金も行なった企業と、返金をせず、単に課徴金を支払ったに留まる企業とでは、消費者に与える印象に相当の違いが生じるように思われます。

課徴金のみを支払うという選択をするか、顧客への返金も視野に入れるかは、経営的な判断となりますが、企業のブランドイメージの維持のためには、積極的に返金を行うという選択肢も十分検討に値するものと思われます。

Q: どうしてお客さんに返金することで課徴金の額を減らす制度ができたのですか?

この制度は、事業者とお客さんの双方にメリットがあります。まず、企業側のメリットですが、返金をすることにより課徴金を減らしてもらえますし、お客さんに返金をしたということで、ブランドイメージも維持できるかもしれません。

次に、お客さんのメリットですが、事業者側から自主的に返金をしてもらうことで、被害の回復が簡単にできます。もし、このような制度がなければ、事業者は自主的には返金をしないかもしれません。そうすると、消費者は、最終的には訴訟により、事業者からお金を取り戻すしかありません。しかし、不当表示の案件では、①不当な表示があったから商品/サービスを購入したという因果関係を立証するのが難しいといわれています。

また、②お客さんに生じた損害額がいくらなのかを決めることも簡単ではありません。そもそも、③損害額自体が小額なので、訴訟でお金を取り戻そうとしても、費用倒れに終わってしまう可能性も高いのです。結局、不当表示の案件では、訴訟により事業者からお金を取り戻すのは事実上、困難なのです。
課徴金の減額制度が設けられたことにより、事業者が自主的に返金をするようになれば、消費者は特段の負担なく被害を回復することができます。このような効果を狙ったのが、返金による課徴金減免の制度なのです。

Q: お客さんに返金することで、どれくらい課徴金を減らしてもらえますか?

この点については、内閣府令が詳しく定めています。具体的には、事業者が返金した金額が、返金の申出をしたお客さんが購入した商品・サービスの価格よりも多い場合は、返金の申出をしたお客さんの購入額が課徴金から減額されます。

また、事業者が返金した金額が、返金の対象となり、返金の申出をしたお客さんが購入した商品・サービスの価格以下である場合には、事業者が返金した金額が課徴金から減額されます(施行規則第16条第1項)。具体的な例で説明しますと、中古車販売業者が、中古車のメーターを3万km分巻き戻して販売していたとします。問題となる期間は1年で、メーターを巻き戻して販売した車の代金は5億円だったとします。

そうすると、課徴金の金額は、5億円の3パーセントで1500万円になります。その後、この事業者は、適切な手続きをとって、お客さんに返金をしました。返金を申し出たお客さんが5人で、この5人に販売した車の合計額は1000万円だったとします。事業者は、これらのお客さんに対し、合計1100万円を返金したとしましょう。すると、事業者が返金した金額が返金の申出をしたお客さんが購入した商品の価格よりも多くなりますから、この場合は、返金の申出をしたお客さんの購入額である1000万円が課徴金から減額されることになり、事業者が払わなければならない課徴金は500万円になります。

また、返金を申し出たお客さんが5人で、この5人に販売した車の合計額は1000万円だったとして、事業者が返金した金額が200万円にとどまったとします。この場合には、事業者が返金した金額が、返金の申出をしたお客さんが購入した商品の価格よりも少なくなりますから、少ない金額の200万円が課徴金から減額されることになり、事業者が払わなければならない課徴金は1300万円になります。

このように、課徴金から減額できる金額の上限が決められているのは、返金の申出をしたお客さんに過大な返金を行い、その全額を課徴金から減額することを許してしまうと、被害回復を促すという課徴金減額制度の趣旨が実現できなくなってしまうからです。

Q: お客さんにはいくら返金すればよいのですか。商品価格の全額でしょうか。

お客さんに返金する金額については、事業者が自由に決めることができます。ただ、お客さんへの返金額が「商品・サービスの購入額の3パーセント未満」であった場合には、このような返金は課徴金減額の対象にはなりません。このような小額の返金については、手間と時間ばかりがかかるため、課徴金の減額というメリットを与えないこととしたのです。

Q: お客さんに返金するための手続きを説明してください。

お客さんに返金するための手続きは複雑です。まず、第一の条件として、①政令で決められたお客さんに対し、②そのお客さんが返金を申し出た場合に、③購入額の3パーセント以上の金額を、④現金か銀行振り込みの方法で返金する必要があります。

第2の条件として、どのようにして返金をするかの計画を立てて、それを消費者庁に提出し、認定を受けなければなりません。この計画を「実施予定返金措置計画」といいますが、この計画については、その記載内容やいつまでに返金を行なうかなどについて、たくさんの決まりごとがあります。

Q: 実施予定返金措置計画とはなんですか。

課徴金を減額してもらうためには、どのようにして返金をするかの計画を立てて、それを消費者庁に提出し、認定を受けなければなりません。この計画を「実施予定返金措置計画」といいます。

Q: お客さんに不当な表示をした商品・サービスの替わりになる商品やサービスを提供したり、金券を渡したりすることで課徴金を減らしてもらうことはできますか。

できません。課徴金を減額してもらうためには、お客さんに現金を渡したり、お客さんの銀行口座にお金を振り込んだりしなければなりません。

Q: どうして替わりの商品やサービスの提供では課徴金を減らしてもらえないのですか。

お客さんは、事業者の問題のある表示により、自由に商品・サービスを選択できる機会を奪われたわけです。そのお客さんに金銭以外の方法、例えば代わりの商品を渡したところで、お客さんが自由に商品・サービスを選べなかったことに変わりありません。

お客さんに金銭を渡せば、お客さんは、その金銭で自由に商品・サービスを選ぶことができますから、その意味で問題のある表示により自由に自分の考えで商品やサービスを選ぶことができなかったという問題は解決されたことになります。

このような考えから、課徴金の減額が認められるためには、替わりの商品やクーポンではだめで、金銭をお客さんに渡すことが必要とされたのです。

Q: 「報告」により課徴金を減額してもらうための条件はなんですか?

事業者は、商品やサービスの品質が実際よりもとてもよいとか(優良誤認)、価格が実際よりもお客さんにとても有利である(有利誤認)と誤解されるような表示をして商品やサービスを販売した場合、その商品やサービスの売上高の3パーセント分の課徴金が課されます(なお、その額が150万円に満たない場合、課徴金は課せられません。)

しかし、これからご説明する一定の条件がクリアできれば、この金額が半額になります。
第1の条件は、優良誤認や有利誤認といった景表法上、問題のある表示をした事業者が、消費者庁長官にそのような問題のある表示をしたことを報告することです。イメージとしては、自首のようなものです。

なお、細かい点ですが、課徴金の減額が認められるためには、代表権を持った役員が「報告」をしなければなりません。代表権のない役員や従業員から報告しても、課徴金の減額に必要な「報告」にはあたりませんから、問題がある表示をしていたことを報告するときは、代表権のある方からするようにしてください。

第2の条件は、行政による調査が始まる前に「報告」することです。行政庁が問題のある表示を見つけて調査を始めた後に「報告」をしても、課徴金は半額になりませんよ、ということです。課徴金を半額にする制度は、問題のある表示をしている事業者に対し、自分から「報告」をすれば、「課徴金が軽くなりますよ」というインセンティブを与えることで、問題のある表示をしていたことを事業者自らに報告させ、行政庁による調査の手間を省くことで、効率的に問題のある表示をやめさせようとするものです。

ですから、行政庁が問題のある表示を発見し、調査を始めてしまったものについては、行政庁の手間が省ける程度が小さく、いまさら事業者にインセンティブを与える必要が乏しいので、課徴金の減額は認められないのです。

Q: わざと不当な表示をしていた場合でも「報告」すれば課徴金を減額してもらえますか?

例えば、健康食品の小売業者の代表が商品の売上げを上げるため、本当は他社と同じくらいの栄養成分しか入っていないのに、わざと「栄養成分が他社の4倍!」などとパッケージに記載した飲料を販売していたとします。ところがその後、代表者が心変わりし、消費者庁長官に対し、このような問題のある表示をしていたことを報告した場合、課徴金の減額をしてもらえるのでしょうか。

結論から言うと、このような場合でも、一定の条件がクリアできれば、問題なく課徴金の減額をしてもらうことができます。景表法では、問題がある表示がわざとされていたか、それともミスで行なわれていたかに関係なく、課徴金の減額を認めているのです。皆さんの中には、わざと問題のある表示をしたのだから、減額をしなくてもいいのではないかと思われた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、景表法の目的は、そもそも、消費者が問題のある表示に惑わされて商品やサービスを選択してしまうことがないようにすることですから、問題の表示が結果として早く解消されるのであれば、事業者がわざと問題の表示をしたのか、ミスでしたのかは重要ではないのです。

Q: 不当な表示をしていたことを「報告」して課徴金が半分になった結果、その金額が90万円になりました。課徴金の額が150万円よりも少ないときには、課徴金を支払わなくてよいと聞いたことがあるのですが、この場合も課徴金を払わなくてよいのですか?

残念ながら、課徴金を支払う必要があります。問題のある表示をしていた商品やサービスの売上高の3パーセントが150万円に満たない場合、課徴金は課せられません。

しかし、150万円に満たないかどうかは、「報告」をしたことで減額される前の金額で判断されますから、減額の結果、課徴金の金額が90万円になったとしても、課徴金を支払わなければならないのです。

【景表法で禁止されている行為】

景品表示法Q&A:はじめに

このページをごらんになっている方は、景品表示法に新しく設けられた「課徴金」に興味をお持ちなのだと思います。景表法は、商品を販売する事業者の方、サービスを提供する事業者の方に広く関係する法律なのですが、これまであまり目立たない部類の法律だったように思います。
しかし、平成26年11月、景表法が改正され、あらたに課徴金制度ができました。そして、平成28年4月1日から、課徴金制度の運用が始まっています。この制度は、かいつまんで言うと、事業者がその販売する商品に著しく大げさであったり、お客さんに著しく有利であると誤解させたりするような不当な表示をした場合、その商品の売上げの3%、しかも3年分のお金を国に納めなければならないという制度です。

例えば、小売業者が安価な輸入牛肉を「黒毛和牛」として販売していたとします。1年の売上げが3億円、3年で9億円だったとすると、その3%の2700万円もの課徴金が課せられることになります。
これは、事業者にとって、相当にインパクトのある金額です。これまで、このような表示をしていた事業者は、うわさや顧客離れによる事実上の制裁を受けていましたが、今後はさらに売上げの3%、3年分の課徴金を支払わなければならないわけです。しかも、この制度では、「知らなかった」という弁解が簡単には通りません。小売業者が「黒毛和牛」として仕入れた牛肉が実は「輸入牛肉」だった、小売業者はそれを知らずに販売した、そのような場合であっても課徴金を支払わなければならない場合があるのです。

このページは、法律の内容をQ&A方式にして、できる限りわかりやすくしています。最初から順に読まなくても、知りたい項目のところだけを読めば内容が分かるよう、記述の重複をいとわず、丁寧に記述したつもりです。また、法律の内容を説明するときには、できる限り正確性を保つよう努力しながら、思い切って分かりやすい言葉に言いかえるようにしています。

この記事を通じて、ともすれば経営上の大きなリスクとなる課徴金について、ご理解を深めていただければ幸いです。

Q: 景表法に違反するとどうなりますか?

景表法に違反する表示をすると、過去3年間の売上げの3%分の課徴金を払わなければならなくなる可能性があります。課徴金のほかに、消費者庁は、景表法に違反する表示について、事業者に対し、そのような表示をやめ、再発防止策を講じるよう命令(措置命令といいます。)を出すことがあります。措置命令で、例えば「今後1年間、チラシ、新聞、テレビ等による広告をしたときは、その広告物を消費者庁へ提出すること」を義務付けることもあります。

消費者庁は、措置命令を出した場合、その内容をホームページ等で公表しますから、違反した事業者の名称が広く知られることになります。

Q: 何が禁止されているのですか?

景品表示法が禁止しているのは、「不当な表示」(法第5条)です。「不当な表示」は、大きく3つに分類されます。第一に「優良誤認表示」といわれるタイプ(法第5条1第二に「有利誤認表示」といわれるタイプ(法第5条第2項)第三に「その他誤認されるおそれのある表示」タイプ(法第5条第3項)です。

Q: 「表示」とは具体的にどんなものですか?

例えば、チラシ、パンフレットや説明書、ポスターや看板、新聞や雑誌に掲載された広告、テレビCM、ウェブサイト等、さまざまな媒体に掲載された広告や表示がすべて、「表示」(法第2条第4項)に含まれます。

「表示」という言葉からは、少し想像しにくいかもしれませんが、電話や訪問でお客さんに商品を説明するときのセールストーク、実演販売のときのトークもすべて「表示」に含まれます。」
「表示」は広い概念なので、お客さんに商品やサービスを売るための手段のほぼすべてが「表示」に当たり得ます。

Q: 禁止される優良誤認とは何ですか?

優良誤認(法第5条第1項)には、2つのケースがあります。実際のものよりも著しく優良であると示すケースと競争業者のものよりも著しく優良であると示すケースです。簡単に言うと、実際は違うのに、商品やサービスがとてもいいものであるとか、ライバルの会社よりもとてもいいものであるとの内容の表示をすることが優良誤認表示です。

実際のものよりも著しく優良であると示すケース

商品・サービスの品質や規格、その他の内容について、実際のものよりも著しく優良であるとお客さんにに誤解させる表示は不当表示となります。

  • 「松坂牛」と表示していたが、実は輸入牛肉
  • 「天然ダイヤ」と表示していたが実はガラス
  • 「果汁80パーセント」と表示していたが、実は無果汁
  • 「走行距離1万km」と表示していたが、実は15万km
  • 競争業者のものよりも著しく優良であると示すケース

実際はそうではないのに、商品・サービスの品質や規格などが競争業者のものよりも著しく優良であるとお客さんに誤解させる表示は不当表示となります。

  • 「世界で当社だけが持つ技術です。」と表示していたが、実は他社も同じ技術あり
  • 「○○試験合格率No1」と表示していたが、実は競合他社と違う方法で集計
  • 「栄養成分が他社の2倍」と表示していたが、実は他社と同量の成分
  • 「他社比、解像度3倍」と表示していたが、実は根拠なし

ほかにも・・・

  • 利用者の体験談やアンケートを用いて、食事制限することなく痩身効果が得られるような表示をしていたが、実際にはその内容はねつ造されたものであり、効果の実証データも根拠のないものであったケース
  • 超音波によってゴキブリやネズミを駆除すると表示していたが、実際にはそのような効能は認められず、表示の根拠もなかったケース

などが優良誤認とされています。

Q: 禁止される有利誤認とは何ですか?

有利誤認(法第5条第2項)には、2つのケースがあります。

実際のものよりも著しく有利であると誤認されるケース

商品・サービスの価格その他の取引条件について、実際のものよりも著しく有利であるとお客さんに誤認される表示は不当表示となります。

  • 「外貨定期預金 今なら年利○パーセント」と表示していたが、実は手数料が引かれる前の利率が表示されており、手数料を引くと実際の受取額は表示の5分の1
  • 「引越し料金、今なら6割引!」と表示していたが、実は常に6割引とされる料金
  • 「お徳用、12枚セットの洋食器」と表示していたが、実はばら売りと同じ値段
  • エアコンの販促キャンペーンの景品について「当選本数○○本」と表示していたが、実は当選本数はもっと少ない

競争業者のものよりも著しく有利であると誤認されるケース

実際はそうではないのに、商品・サービスの価格や取引条件などが、競争業者のものよりも著しく有利であるとお客さんに誤認される表示は不当表示となります。

  • 「地域一番の安さ」と新聞折込チラシに表示したが、実は価格調査をしておらず、安いかどうかわからない
  • 「他社商品の2倍の内容量」と表示していたが、実は他社と同程度の内容量
  • 「手数料なし、24回分割払いで買えるのは当社だけ」と表示していたが、実は他社も同様の条件で商品を販売

ほかにも・・・

  • 販売している商品の一部だけが4割引なのに、「全品4割引セール」などと表示したケース

菓子類の包装について、内容量を多く見せるための過大包装などが有利誤認とされています。

また、不当表示の典型例として、架空のメーカーの希望小売価格を表示したり、実際に販売したことがない価格を「通常販売価格」と表示して、その価格からの割引率を表示したりして自社の販売価格を安く見せかける、いわゆる二重価格表示があります。

このような価格表示は、消費者による適切な商品選択を妨げることから、典型的な不当表示とされています。

Q: 優良誤認や有利誤認で出てくる「著しく」とはどういう意味ですか?

この記事をごらんの皆さんの中には、優良誤認や有利誤認のところで「著しく」という言葉に疑問をもった方がいらっしゃるかもしれません。実際のものより「著しく優良であると示す表示」が不当表示として禁止されるなら、「著しく」なければ不当表示にならないのではないかと思われた方、実はそのとおりなのです。広告、宣伝には、多少なりとも誇張・誇大が含まれるのはむしろ当然であり、事実だけを伝えていては広告、宣伝の効果は上がりません。そこで、誇張の程度が「著しい」場合に限って、これを禁止しているのが景表法なのです。それでは、「著しい」かどうかはどのように判断すればよいのでしょう。

この点について、明確な基準があるわけではありません。例えば、優良誤認の記事であげた「走行距離1万kmと表示していたが、実は走行距離15万km」の例についてですが、走行距離を15分の1にしているわけですから、社会常識から考えて、これは「著しく」優良であると示す表示をしたといえるでしょう。しかし、これが「走行距離14万9999kmと表示していたが、実は走行距離15万km」だったら、「著しく」優良であると示す表示をしたとはいえないのではないでしょうか。それでは、走行距離の表示を1万3000kmにしたらどうか、1万kmにしたらどうかと考えていくと、やはりある時点から、「著しく」優良であると示す表示をしたと評価されることになると思います。ただ、それがどこなのかを一律に示すことは困難であり、「著しい」かどうかは、社会通念にしたがってケースごとに判断していくほかないように思われます。

Q: その他誤認されるおそれのある表示とはなんですか?

優良誤認表示や有利誤認表示のほかにも、商品やサービスについて、お客さんに誤解されるおそれがある表示をしてはならないとされています(法第5条第3項)。経済社会は複雑なので、優良誤認表示や有利誤認表示を禁じるだけでは不十分な場合が考えられます。そのような場合、一般の消費者に誤認されるおそれがある表示を特に指定して、個別にそのような表示を禁じているのです。

現在、景表法に基づいて①無果汁の清涼飲料水等についての表示、②商品の原産国に関する不当な表示、③消費者信用の融資費用に関する不当な表示、④不動産のおとり広告に関する表示、⑤おとり広告に関する表示、⑥有料老人ホームに関する不当な表示の6つの類型が定められています。

無果汁の清涼飲料水等についての不当な表示

無果汁・無果肉又は果汁5%未満の清涼飲料水、乳飲料類、アイスクリームなどについて、「無果汁・無果肉」であること、果汁・果肉の割合(%) を明瞭に記載しない場合、以下の表示は不当表示となります。
◦果実名を用いた商品名や説明文の表示
◦果実の絵、写真、図案の表示
◦果汁・果肉と似た色、香り、味(=表示)

商品の原産国に関する不当な表示

原産国がどこか一般消費者には簡単には分からない場合に、次のような表示をすると不当表示になります。
◦原産国以外の国名、地名、国旗等の表示
◦原産国以外の国の事業者、デザイナー名、商標などの表示
◦国内産の商品について文字表示の全部又は主要部分が外国の文字で示されている表示
◦外国産商品について文字表示の全部又は主要部分が和文で示されている表示

消費者信用の融資費用に関する不当な表示

消費者金融等の融資に関する費用について、実質的な年率が簡単にわかるように書いていない場合、例えば融資費用の金額を表示することなどは不当表示になります。

不動産のおとり広告に関する不当な表示

実在せず、取引ができない不動産を広告に載せたりすることは不当表示になります。

おとり広告に関する不当な表示

広告に掲載されている商品が実はごく少数しか用意されていないのに、そのことが明示されていない場合等が不当表示になります。

有料老人ホームに関する不当な表示

例えば、夜間における最小の介護職員や看護師の数など、介護職員等の数がはっきりと書いていない広告は不当な表示になります。

Q: 景表法で禁止されている不当な表示であると指摘されたケースはどうやったら調べられますか?

消費者庁-景品表示法内の「景品表示法関係公表資料」をご覧いただければと思います。

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