今回のインタビューは、東京都千代田区にある訪問診療専門の「医療法人社団有洸会 三番町クリニック」の西野輝泰院長にお話を伺いました。同クリニックと当事務所との関わり、そして医療機関における顧問弁護士の新たな役割について語っていただきます。
患者に寄り添う訪問診療の理念
最初は、中里が個人的に先生のクリニックを紹介されたご縁だそうですね。
西野院長
そうです、中里先生の御宅に最初にお邪魔したのは平成25年1月のことでした。東京には珍しい大雪の日でしたので、よく覚えています。その時に中里先生の印象は、とにかく「元気」「パワフルな女性」でしたね。以来、5年以上のお付き合いになります。
先生のクリニックは訪問診療専門ということですが、なぜそういう形態を選ばれたのでしょうか。
西野院長
個人的なことになりますが、私が大学時代6年のうちの5年間を、祖母と二人で生活していた経験が大きいです。徐々に認知機能が低下し、要介護となっていった祖母のそばにいながら、何もできない。病院や施設に連れていくのもままならない。そんな時、自宅に来てくれて、診察してくれるドクターがいれば、どんなに良いだろうかと考えていたのです。往診というスタイルは、古くから日本にあったスタイルですが超高齢化が進む中、同じようにお困りの方がいるのではと思い、訪問診療を始めました。
顧問弁護士契約を結んだ理由は、医師や従業員の法令遵守のため
それでは、先生が当事務所を顧問としていただいている理由はどういうところにありますか。
西野院長
医療法人の医師をはじめとする従業員全員が法令を遵守するだけでなく、倫理的にも正しい行動をとれるように、意識を高めたいと思っているからです。また、新しい事案があった時も、法人の判断を弁護士にすぐ確認できるということも大きいですね。例えば、新規事業などで自分が判断できないような案件があったとします。そんな時に身近に弁護士がいて、すぐに連絡が取れれば、その都度、確認することができますね。「きっと大丈夫だろう」と、自己判断をして、無駄なリスクを取らないように気を付けています。常に、「これは正しいですか」「法に抵触しませんか」という小さな疑問を気軽に聞くことで、コンプライアンスを維持できると思います。さらに、私がその姿勢を従業員全員に示すことによって法令遵守の意識を高めてほしいと思っています。
具体的にはどのような内容が考えられますか。
西野院長
例えば、医療法人が新しい事業を始めようとしたときに、医療法や医師法に照らし合わせて正しいのかどうか、もし、何らかの手続きが必要なら、どのような手続きを踏めばいいか。他社の事例や判例を調べてもらったり、その分野の専門家を紹介していただいたり。的確なアドバイスをいただけると大変助かります。いずれにしても私は、法令遵守の観点から気軽に相談できる弁護士さんというのは必要だと思っています。
いずれは医師賠償保険のような存在に
それは、西野先生のような訪問診療に限らず、他の医院・クリニックなどでもいえることですよね。
西野院長
顧問弁護士がいるということは、保険のようなバックアップとしての意味もあると思いますし、安心材料になっていると思います。医師がほぼ全員入っている「医師賠償保険」というものがあります。保険を使ったことのある医師は少ないと思うのですが、「この事案の判断はどうだろうか、弁護士に相談したいな」と思ったことのある医師やクリニック経営者は多いと思います。 これからの時代は、医師賠償保険だけでなくコンプライアンスの確認として、気軽に相談できる弁護士さんがいるといいと思います。法人や従業員が法令をきちんと遵守できているか、常に確認しながら進めることが、安心して業務を行うためには必要です。そういう意味で、保険に入るのが当たり前のように、弁護士さんと契約する医師やクリニック経営者は増えていくと思います。 また、私どもの医療法人が、どこよりも法令を遵守しているということを知っていただければ、患者様が安心して診療を受けていただけるようになるとも思っています。