「この広告表現、景品表示法(景表法)に引っかからないだろうか?」
「優良誤認と有利誤認って、結局どう違うの?」
広告やキャンペーンの企画・運用を担当していると、こうした不安を感じる場面は少なくありません。景表法違反は、措置命令による企業名の公表や課徴金の納付だけでなく、ブランドイメージの低下というリスクにつながる行為です。
本記事では、広告担当者が必ず押さえるべき「優良誤認」と「有利誤認」の違いを、法的根拠から具体例、違反防止策までわかりやすく解説します。自社の広告表現がどちらのリスクに該当するのかを判断し、適切な予防対策を行っていきましょう。
広告表現の法的リスクに不安がある場合は、景表法に詳しい「弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所」へご相談ください。豊富な企業法務の実績を持つ弁護士が、貴社の広告戦略をサポートし、効果的なマーケティングをご提案します。

優良誤認・有利誤認が含まれる景品表示法(景表法)とは?
景品表示法(景表法)※正式名称:不当景品類及び不当表示防止法は、消費者の自主的かつ合理的な選択を確保し、公正な競争環境を維持するための法律です。企業が過剰な景品を出したり、事実と異なる・大げさすぎる広告を出したりするのを規制することで、公正な競争を保つ役割を果たしています。
景表法で特にチェックが厳しいのが、消費者の適切な判断を妨げる「不当表示」です。その中でも特に重要な、「優良誤認表示(第5条第1号)」と「有利誤認表示(第5条第2号)」という2つの区分があります。違反が認められた場合、事業者に対して以下の措置が科される可能性を理解しておきましょう。
| 罰則の種類 | 対象者 | 罰則内容 | 適用要件 |
| 措置命令違反に対する罰則 | 違反行為者(代表者など) | 2年以下の懲役または300万円以下の罰金 | 措置命令に従わない場合 |
| 法人 | 3億円以下の罰金 | 措置命令に従わない場合 | |
| 直罰規定(2024年10月1日施行) | 個人・法人問わず | 100万円以下の罰金 | 故意に優良誤認・有利誤認を行った場合 |
広告担当者は、この2つの表示規制の違いを正確に理解し、日々の広告運用に活かす必要があります。
出典:消費者庁-景品表示法
関連記事:景表法(景品表示法)とは?ガイドラインの内容や注意すべき広告表現を弁護士が解説
優良誤認と有利誤認の主な違い

優良誤認と有利誤認は、いずれも景表法が禁止する不当表示です。しかし、規制対象となる表示内容が異なります。この違いを理解することで、自社広告のどの部分にリスクがあるのか的確に判断していきましょう。
1.対象となる表示内容が異なる
優良誤認と有利誤認の最も重要な違いは、規制される表示の対象です。
優良誤認は「商品・サービスの品質、規格、性能などの内容」に関する表示を規制します。つまり、「何を買うか」という、商品そのものの中身に関する誤認です。
一方、有利誤認は「価格、その他の取引条件」に関する表示を規制します。「いくらで買えるか」「どんな条件で取引できるか」という取引のプロセスに関する表示が対象です。
| 項目 | 優良誤認 | 有利誤認 |
| 規制対象 | 商品・サービスの品質、性能、内容、規格など | 価格、その他の取引条件(割引、キャンペーン期間など) |
| 誤認の焦点 | 「何を買うか」(商品自体の価値) | 「いくらで、どんな条件で買えるか」(取引の有利性) |
| 典型例 | 「国産」と表示したが実は外国産、効果がないのに「痩せる」と表示 | 架空の通常価格で割引を偽装、終了しない「期間限定」 |
この区別を正しく理解し、広告の各要素がどちらのリスクに該当するかを判断しましょう。
2.法的根拠が異なる
優良誤認と有利誤認は、いずれも景品表示法第5条で規定される不当表示ですが、その法的根拠は異なる条項に分かれています。
| 項目 | 優良誤認 | 有利誤認 |
| 法的根拠 | 景表法第5条第1号 | 景表法第5条第2号 |
| 特別な制度 | 不実証広告規制あり(15日以内の資料提出義務) | 不実証広告規制なし |
| 行政処分 | 措置命令、課徴金納付命令 | 措置命令、課徴金納付命令 |
| 罰則 | 同様(直罰100万円以下の罰金等) | 同様(直罰100万円以下の罰金等) |
どちらも同様に、消費者の適切な選択を妨げる不当表示として規制されています。これらは違反した場合の行政処分(措置命令、課徴金納付命令)や罰則の内容に差はありません。
ただし、優良誤認には「不実証広告規制」という制度が設けられており、事業者が表示の根拠資料を15日以内に提出できない場合、優良誤認とみなされます。この制度は有利誤認には適用されないため、品質・性能に関する表示を行う際は、特に厳格な証拠管理を行わなければなりません。
優良誤認とは?品質・内容に関する不当表示

優良誤認表示は、商品やサービスの本質的な価値に関する誤解を消費者に与える表示です。実際の品質よりも優れていると見せかけることで、消費者の適切な商品選択を妨げてしまいます。
優良誤認の定義(景表法第5条第1号)
景表法第5条第1号は、事業者が商品・サービスの品質、規格その他の内容について、以下のような表示を禁止しています。
- 実際のものよりも著しく優良であると示す表示
- 事実に相違して競争事業者のものよりも著しく優良であると示す表示
これらは「著しく」という要件があるため、一般的に許容される範囲内の誇張は問題となりません。しかし、たとえ数値的に軽微な差であっても、消費者の商品選択に影響を与える場合は「著しく」に該当する可能性があります。
さらに、故意であるかどうかは問われず、結果として消費者を誤認させた場合は規制の対象です。優良誤認に該当するかどうかは、一般消費者の認識を基準にしています。そのため、専門知識を持つ消費者ではなく、通常の一般消費者が誤認するかどうかが判断基準です。
出典:消費者庁-優良誤認とは
関連記事:景品表示法の優良誤認とは?判断基準・違反例や罰則・予防策を弁護士が解説
優良誤認に該当する広告の例
優良誤認表示は、さまざまな商品・サービスの広告で問題になる可能性があります。実務上、特に注意が必要な典型例を理解しておくことが重要です。
1.根拠のない効果・性能の表示
健康食品や化粧品、家電製品などで、実際には証明されていない効果を断定的に表示するケースです。以下のような表現が、科学的根拠なく使用される場合が該当します。
- 「飲むだけで痩せる」
- 「シミが完全に消える」
- 「燃費が50%向上する」
- 「血糖値が必ず下がる」
消費者は商品の効能・性能を重視して購入を決めるため、これらの誤認は特に問題視される表現です。
2.根拠のない「No.1」「日本一」などの最上級表現
客観的なデータや調査結果の裏付けなく、「売上No.1」「顧客満足度日本一」などの最上級表現を使用する場合です。このような表現を使用する際は、以下の情報を明示しなければなりません。
- 調査実施機関名
- 調査実施時期
- 調査対象範囲
- 調査方法
最上級表現を根拠なく使用すると、競合他社よりも優良であるかのように誤認させるため、規制対象となります。
関連記事:広告における最上級表現に注意!違反時の罰則や言い換え表現・確認すべき点を徹底解説
3.原材料・原産国の虚偽表示
食品や繊維製品などで、原材料や原産国を実際と異なる表示をするケースも、優良誤認の規制対象です。特に食品分野では、産地偽装や材料の虚偽表示が消費者の健康や安全に直結するため、厳格に取り締まられています。
| 表示例 | 実態 | 問題点 |
| 「国産牛100%使用」 | 実は外国産牛肉を使用 | 産地の虚偽表示 |
| 「天然素材100%」 | 合成繊維が含まれている | 素材の虚偽表示 |
| 「有名ブランド牛」 | ブランド牛ではない国産牛 | 品質ランクの誇張 |
| 「天然ダイヤ使用」 | 実は人造ダイヤ | 材質の虚偽表示 |
消費者は産地や素材を品質の重要な判断材料とするため、このような虚偽表示は厳しく規制されています。「〇〇産」「国産」などの表示を行う場合は、仕入先からの証明書類や産地証明を必ず確保し、適切に管理しておくことが重要です。
とくに注意すべき「不実証広告規制」とは
不実証広告規制は、優良誤認表示の規制を実効的にするための特別な制度です。
消費者庁は、優良誤認表示の疑いがある場合、事業者に対して表示の裏付けとなる合理的な根拠資料の提出を求めることができます。以下の場合、その表示は優良誤認とみなされるため、注意が必要です。
- 事業者が15日以内に資料を提出しない場合
- 提出された資料が合理的な根拠として認められない場合
この制度により、事業者は広告表現について常に客観的な根拠(エビデンス)を保持する義務を負うことになります。「効果がある」「性能が優れている」といった品質に関する表現を使用する際は、以下のような合理的根拠を必ず確保しなければなりません。
- 科学的試験データ
- 第三者機関による試験結果
- 専門家の見解・意見書
- 統計的に有意な調査データ
不実証広告規制の対象となるのは、商品・サービスの効果、性能など、実証が可能な事項に関する表示です。広告を公開する前に根拠資料を準備しておくことが、法令違反を防ぐ手段となります。
出典:消費者庁-不実証広告規制
有利誤認とは?価格・取引条件に関する不当表示

有利誤認とは、商品やサービスの取引条件が実際よりも有利であると消費者に誤認させる表示です。本来より安い・得であると誤認させることで、消費者の合理的な購買判断を左右してしまう点が問題とされています。
有利誤認の定義(景表法第5条第2号)
景表法第5条第2号は、事業者が商品・サービスの価格その他の取引条件について、以下のような表示を禁止しています。
- 実際のものよりも著しく有利であると示す表示
- 事実に相違して競争事業者のものよりも著しく有利であると示す表示
この規定により、取引の条件面で消費者を誤解させる表示が規制対象です。価格だけでなく、以下のような取引条件も「その他の取引条件」に含まれます。
- 支払条件(分割払い、手数料無料など)
- 商品の数量
- アフターサービスの内容
- 保証内容・保証期間
- 特典・おまけの内容
優良誤認と同様、故意・過失を問わず、結果として消費者を誤認させれば違反となります。有利誤認に該当するかどうかの判断も、一般消費者の認識が基準です。
出典:消費者庁-有利誤認とは
有利誤認に該当する広告の例
有利誤認は、価格訴求型の広告やキャンペーン告知で特に問題になりやすい傾向があります。実務上、頻繁に見られる典型的なパターンを理解しておきましょう。
1.不当な「二重価格表示」(架空の通常価格、割引期間の常態化など)
二重価格表示とは、販売価格と比較対照価格を併記する表示方法です。「通常価格10,000円のところ、今なら7,000円」といった表現が代表例となります。この表示方法自体は違法ではありませんが、以下のような場合に有利誤認となる可能性もあるため注意が必要です。
| 問題のあるパターン | 具体例 | 問題点 |
| 架空の通常価格設定 | ほとんど販売実績のない価格を「通常価格」として表示 | 実態のない比較価格 |
| 販売実績のない価格 | 過去に一度も販売していない価格を比較対照価格に | 虚偽の割引率 |
| 常態化した割引価格 | 年間を通じてほぼ同じ「セール価格」で販売 | 「特別」でない価格 |
| 8週間ルール違反 | 最近8週間のうち4週間未満しか販売していない価格を通常価格に | 適正な比較対照価格でない |
「8週間ルール」として知られる運用基準では、最近8週間のうち4週間以上販売していた価格でなければ、適正な比較対照価格として認められません。
出典:消費者庁|二重価格表示
2.終了しない「期間限定」キャンペーン
「本日限り」「3日間限定」などと期間を区切って有利性を強調しながら、実際には期間終了後も同じ価格や条件で販売を継続するケースです。以下のような状況が有利誤認に該当します。
- 「期間限定」と表示しながら、実際には常時同じ価格で販売している
- キャンペーン終了後、すぐに「延長」として同じ内容を継続している
- 当初から延長を予定していたのに「期間限定」と表示している
- 「本日限り」と表示しながら、翌日も同じセールを実施している
消費者は「今買わないと損をする」と判断して購入を決めますが、実際には急ぐ必要のない状況です。そのため、合理的な判断を妨げる表示として規制の対象となります。キャンペーン期間を表示する場合は、その期間を厳格に守らなければなりません。
関連記事:景品表示法のセール期間ルール解説!二重価格表示・期間延長のOK/NG事例
3.実際には取引できない商品・サービスのおとり広告
在庫がない、または極めて少ない商品を広告に掲載し、来店した顧客に別の商品をすすめる「おとり広告」も有利誤認の一種です。以下のような行為が該当します。
- 広告商品の在庫がないのに広告を出す
- 広告商品の数量が極めて少なく、多くの顧客が購入できない
- 広告商品を店頭に陳列していない
- 広告商品の引渡しに通常よりも長い期間がかかる
- 複数店舗で販売すると表示したが、一部店舗では取り扱っていない
広告を出す際は、十分な数量を確保する、在庫に限りがある場合は「先着〇名様限り」「数量限定〇個」と明示する、広告開始前に全店舗の在庫状況を確認するなどの対応が必要です。
景品表示法違反(優良誤認・有利誤認)の制裁とリスク

景品表示法違反は、罰金や課徴金といった法的措置だけでなく、企業経営全体に深刻なダメージを与えます。実際に支払う課徴金よりも、信頼の失墜や売上の減少など、目に見えない損失の方がはるかに大きくなる可能性があることを理解しておきましょう。
関連記事:景表法違反とは?発覚してからの流れや罰則、実際の違反事例を解説【弁護士監修】
措置命令(違反行為の差し止め・再発防止策の公表)を受ける
消費者庁は、優良誤認・有利誤認表示を行った事業者に対して措置命令を発令します。措置命令で命じられるのは、以下のような内容です。
- 一般消費者への誤認排除措置(新聞広告などでの訂正告知)
- 再発防止策の策定と実施
- 今後同様の違反行為を行わないことの誓約
- 役員及び従業員に対する景品表示法の周知徹底
命令内容は消費者庁のウェブサイトで公表され、企業名とともに違反内容が広く知られます。なお、景表法には2つの罰則体系があり、措置命令に従わない場合、以下の罰則が科される可能性があるため注意が必要です。
| 罰則の種類 | 対象者 | 罰則内容 | 適用要件 |
| 措置命令違反に対する罰則 | 違反行為者(代表者など) | 2年以下の懲役または300万円以下の罰金 | 措置命令に従わない場合 |
| 法人 | 3億円以下の罰金 | 措置命令に従わない場合 | |
| 直罰規定(2024年10月1日施行) | 個人・法人問わず | 100万円以下の罰金 | 故意に優良誤認・有利誤認を行った場合 |
措置命令を受けた後、指定された期間内に適切な対応を取らなかった場合や、命令内容を無視して違反表示を継続した場合などが罰則の対象です。また、2024年10月に施行された直罰規定により、措置命令を経ることなく、故意の違反表示に対して直接罰金が科される可能性もあります。
出典:消費者庁-景品表示法違反行為を行った場合はどうなるのでしょうか
課徴金納付命令(対象商品・サービスの売上額の3%)が科される
優良誤認・有利誤認表示を行った事業者は、原則として課徴金納付命令の対象となります。
| 項目 | 内容 |
| 課徴金の算定方法 | 違反行為期間(最長3年間)における対象商品・サービスの売上額×3% |
| 最低金額 | 150万円(これ未満の場合、課徴金納付命令は発令されない) |
| 減額制度 | 返金措置により最大50%減額、確約手続の利用により減額の可能性 |
| 性質 | 行政処分(前科にはならない) |
課徴金は経済的不利益の剥奪を目的とした行政処分であり、刑事罰ではないため前科にはなりません。しかし、売上規模が大きい商品で違反が認められた場合、数千万円から億単位の課徴金が科されるケースもあります。この場合、自主申告や返金対応などにより、課徴金が減額または免除される制度(確約手続、返金措置による減額)の活用が可能です。
措置命令違反による刑事罰が科される可能性がある
従来、景品表示法違反の中心は措置命令や課徴金といった行政処分でしたが、現在は、景品表示法違反に対し「措置命令への不履行に伴う刑事罰」と「故意の優良誤認・有利誤認に対する直罰(罰金刑)」の2ルートで刑事責任が生じ得る構造になっています。措置命令に従わない場合の罰則は、以下のとおりです。
| 対象 | 罰則内容 |
| 違反行為者(代表者など) | 2年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
| 法人(両罰規定) | 3億円以下の罰金 |
措置命令を受けた後、指定された期間内に適切な対応を取らなかった場合や、命令内容を無視して違反表示を継続した場合などが対象です。
また、2024年の法改正により、故意に優良誤認表示や有利誤認表示を行った場合には、措置命令を経ずに直接、違反行為者および法人に対して100万円以下の罰金が科される直罰規定が導入されました。この直罰規定により、悪質な違反行為に対してより迅速に罰則を科すことができるようになっています。
刑事罰が科されると前科が付くため、企業の社会的信用や役員個人のキャリアにも深刻な影響を及ぼすものです。措置命令を受けた場合は、速やかに弁護士に相談し、適切な対応を取るようにしてください。
出典:消費者庁-景品表示法違反行為を行った場合はどうなるのでしょうか
信頼失墜によりブランドイメージが低下する
法的措置以上に深刻なのが、ブランドイメージの毀損です。措置命令や課徴金納付命令は公表されるため、以下のような影響が発生します。
- メディアでの報道拡散
- SNSでの批判・炎上
- 既存顧客の離反
- 新規顧客獲得コストの増大
- 取引先からの信用低下
- 採用活動への悪影響
- 株価の下落(上場企業の場合)
- 株主代表訴訟のリスク
「不適切な表示を行った企業」というイメージは、長期にわたって企業価値を損ない続けます。景表法違反のリスクは、目先の売上で得られる利益よりも、はるかに大きな損失をもたらす可能性があることを認識しておきましょう。
広告担当者が実務でやるべき優良誤認・有利誤認の違反防止策

景表法違反を防ぐには、広告制作の各段階で具体的なチェック体制を構築することが不可欠です。ここでは、実務で取り入れられる実践的な防止策を解説します。
1.広告表現の「合理的根拠(エビデンス)」を確保・保管する
優良誤認のリスクを回避する最も確実な方法は、すべての品質・性能に関する表現について、客観的な根拠資料を事前に準備することです。以下のような表現を使う場合は、必ず合理的根拠を確保してください。
| 表現の種類 | 必要なエビデンス | 具体例 |
| 効果・性能を謳う表現 | 科学的試験データ、第三者機関の試験結果 | 「血糖値の上昇を抑える」「燃費が向上」 |
| No.1・日本一などの表現 | 調査機関名、調査時期、対象範囲、方法を明示 | 「売上No.1」「顧客満足度第1位」 |
| 比較表現 | 比較対象の明確化、客観的比較データ | 「従来品より30%軽量」「他社製品より長持ち」 |
根拠資料は、万が一消費者庁から提出を求められた際に対応できるよう、15日以内に提出可能な状態で整理・保管しておきましょう。特に優良誤認のリスクがある品質・性能に関する表現については、不実証広告規制の対象となるため、証拠管理を徹底することが重要です。
出典:消費者庁|不実証広告規制
2.断定的な表現・最上級表現(「絶対」「必ず」)を避ける
断定的表現や最上級表現は、消費者に過度な期待を抱かせ、誤認を生みやすい表現です。以下のような表現の使用には特に注意が必要です。
| 避けるべき断定的表現 | 代替となる適切な表現 |
| 「絶対痩せる」 | 「ダイエットをサポートします」 |
| 「必ず効果が出る」 | 「〜の場合に効果が期待できます」 |
| 「誰でも成功できる」 | 「個人差がありますが、多くの方が実感しています」 |
| 「確実に改善する」 | 「改善が見られる可能性があります」 |
最上級表現(「最高」「最も」「一番」など)も、客観的根拠がなければ使用を避けるべきです。どうしても使用する場合は、比較の基準(何と比べて最高なのか)を明確にし、その根拠を示すようにしてください。
3.打消し表示(「※個人の感想です」等)のルールを守る
打消し表示とは、強調表示に対して例外条件や制約条件を示す注釈表示です。「※個人の感想であり、効果を保証するものではありません」といった表現が代表例となります。
ただし、打消し表示があれば何でも許されるわけではありません。適切な打消し表示の要件は以下の通りです。
| 要件 | 具体的な内容 |
| 配置場所 | 強調表示と同一視野に入る場所 |
| 文字サイズ | 消費者が認識できる大きさ(強調表示との対比で極端に小さくない) |
| 色・コントラスト | 背景色と区別でき、容易に読み取れる色 |
| 表示内容 | 強調表示と矛盾しない内容(矛盾する場合は打消し表示が無効) |
| 表現の明確性 | 消費者が理解できる平易な表現 |
打消し表示に頼るのではなく、そもそも誤認を生まない正確な強調表示を心がけることが基本となります。
4.社内の広告審査体制(法務・担当部署の連携)を構築する
広告を公開する前に、複数の部署・担当者によるチェックを行う審査体制を整備します。効果的な審査体制には、部門横断的なチェック、明文化されたガイドライン、リスク別の審査ルールという3つの要素が重要です。
各部門が専門的な視点から審査を行うことで、多角的な品質保証を実現します。例えば、マーケティング部門は広告効果、法務部門は法令遵守、コンプライアンス部門はリスク管理、制作部門は表現の正確性といった具合です。使用禁止表現のリストや根拠資料が必要な表現のリストなど、明文化されたガイドライン・チェックリストを整備し、審査フローと承認権限を明確化しましょう。
特に重要なのが、リスク別の審査ルールです。表現のリスクレベルに応じて、以下のように審査体制を変える必要があります。
| リスクレベル | 対象表現 | 審査体制 |
| 高リスク | 効果効能、価格訴求、最上級表現 | 法務部門の必須承認 |
| 中リスク | 中程度のリスクを伴う表現 | マーケティング部門とコンプライアンス部門のダブルチェック |
| 低リスク | リスクの低い一般的な表現 | 通常の確認プロセス |
担当者が変わっても一定の品質を保てる体制を構築することが重要です。
5.外部の専門家によるチェック体制を構築する
社内だけでは判断が難しいケースに備えて、弁護士などの外部専門家に相談できる体制を整えておくことも重要となります。専門家を活用するメリットは、最新の法令・判例に基づく正確なアドバイスが得られることです。業界動向や行政の運用実態を考慮したリスク評価を受けることで、実務に沿った適切な判断がしやすくなります。
万が一問題が起きた場合でも、「適切な注意を払っていた」ことを示す記録として役立ち、企業を守ることにもつながります。専門家への相談が特に有効なのは、以下のような場面です。
- 新しい広告手法や表現を試みる場合
- 大規模キャンペーンを実施する場合
- 競合他社が措置命令を受けた表現と類似した内容を使用する場合
- 社内で意見が分かれ、判断に迷う表現がある場合
定期的な顧問契約により、広告案の事前チェックを依頼できる関係を構築しておくと安心です。
弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所では、景品表示法に精通した弁護士が、広告表現の法的リスク診断から社内審査体制の構築支援まで、企業のコンプライアンス強化を総合的にサポートしています。広告公開前の事前チェック、顧問契約による継続的なサポート、万が一の措置命令対応までお気軽にご相談ください。

優良誤認・有利誤認の違いに関するよくある質問
ソーシャルゲームのガチャ表示で問題になるのはどちら?
ソーシャルゲームのガチャに関する表示は、優良誤認・有利誤認の両方が問題になる可能性があります。
| 表示の種類 | 該当する規制 | 具体例 |
| キャラクター・アイテムの性能表示 | 優良誤認 | 実際は2回連続攻撃なのに「5回連続攻撃」と表示、ステータスを実際より高く表示 |
| 排出確率に関する表示 | 有利誤認 | 「レアキャラの排出確率2倍」と表示したが実際には通常と同じ、特定キャラの排出率を偽る |
| 期間限定キャンペーン | 有利誤認 | 「期間限定」と表示したが常時提供している、ガチャ回数制限を偽る |
アイテムの性能を実際より優れていると表示した場合(優良誤認)や、排出確率を偽って表示した場合(有利誤認)は、景表法違反として措置命令の対象となる可能性があります。
意図的でなくても(知らなくても)罰則の対象になる?
景表法は、事業者の故意・過失を要件としていません。つまり、意図的に虚偽の表示をしたわけではなく、ミスや認識不足によって不当表示になった場合でも、措置命令や課徴金納付命令の対象となります。
| 状況 | 違反の成立 | 理由 |
| 意図的に虚偽表示をした | ◯ | 故意による違反 |
| ミスで誤った情報を表示した | ◯ | 結果として消費者を誤認させている |
| 認識不足で不適切な表現を使った | ◯ | 事業者の確認義務違反 |
| 仕入先の情報を信じて表示したが誤りだった | ◯ | 表示の責任は事業者にある |
「知らなかった」「意図していなかった」という主張は、違反の成立を妨げる理由にはなりません。事業者には、自社の広告表現が景表法に適合しているか確認する責任があります。日頃から適切なチェック体制を構築しておくことが重要です。
自社の広告で優良誤認・有利誤認を見つけたらどこに相談すべき?
自社広告に景表法違反の疑いがある表示を発見した場合の対応フローは以下の通りです。
| 段階 | 対応内容 | 相談先・実施事項 |
| 1.初期対応 | 違反の疑いがある表示の一時停止 | 社内の法務・コンプライアンス部門に報告 |
| 2.専門家への相談 | 法的リスクの評価と対応策の検討 | 景表法に詳しい弁護士に相談 |
| 3.是正措置 | 広告の修正・停止、消費者への周知 | 弁護士のアドバイスに基づき実施 |
| 4.自主申告検討 | 確約手続の利用を検討 | 消費者庁への自主申告により措置命令回避・課徴金減額 |
速やかに専門家に相談し、法的リスクの評価と対応策のアドバイスを検討しましょう。違反の程度が明らかな場合は、以下の対応を検討します。
- 自主的に広告を修正・停止する
- 消費者への周知や返金措置を実施する
- 消費者庁への自主申告(確約手続)を利用する
対応が早ければ早いほど、ダメージを最小限に抑えられます。問題を発見した時点で迅速に行動することが重要です。

まとめ|優良誤認・有利誤認の違いを正しく理解し、信頼される広告運用を目指そう
優良誤認と有利誤認は、景表法が禁止する不当表示の2大類型です。どちらも消費者の適切な選択を阻害する行為として、措置命令や課徴金の対象となり、企業の信頼を大きく損なうリスクがあります。
広告担当者が取るべき防止策としては、まず合理的根拠(エビデンス)の確保と保管が不可欠です。断定表現・最上級表現の慎重な使用、適切な打消し表示のルール遵守も重要な対策となります。
社内の広告審査体制を構築し、外部専門家によるチェック体制を整備することで、多層的なリスク管理を行いましょう。景表法は「知らなかった」では済まされない法律です。日頃から法令遵守を意識した広告運用を心がけることが、長期的な企業価値の向上につながります。
広告表現が景表法に抵触しないか不安な場合や、措置命令のリスクを事前に回避したい場合は、「弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所」にご相談ください。
景表法の専門知識を持つ弁護士が、広告公開前のリーガルチェックから社内ガイドライン策定まで、法令違反を未然に防ぐための実践的なサポートを提供します。
