2025年6月5日、消費者庁は株式会社新日本エネックス(本社:福岡市博多区)に対し、景品表示法に基づく課徴金納付命令を発出しました。問題となったのは、太陽光発電システムや蓄電池の販売・施工に関する自社ウェブサイト上の表示です。
課徴金納付命令の概要
- 違反内容:客観的根拠のない「No.1」表示
- 表示媒体:同社運営の「ENEX」ウェブサイト
- 表示例:
- 「No.1 2020 JMR アフターフォローも充実の太陽光発電蓄電池販売No.1 」
- 「No.1 2020 JMR 知人に紹介したい蓄電池販売 No.1」
- 「3部門でNo.1 を獲得しました 」
- 調査対象期間:2023年4月10日〜同年11月29日
- 課徴金額:9,989万円(売上約33億円に対する3%)
表示内容の問題点

新日本エネックスが広告に使っていた「No.1」などの表示は、実は十分な調査に基づいたものではありませんでした。調査を行った業者は、回答した人が本当にその商品やサービスを使ったことがあるかどうかを確認しておらず、ただ「どの会社に良い印象を持っているか」だけを聞いていました。
つまり、実際の利用経験に基づいた評価ではなく、イメージだけで「1位」と判断していたことになります。さらに、広告に使われた「No.1」という表現も、その調査結果を正しく反映したものではなかったとされています。
このため、表示は景品表示法第5条第1号「優良誤認表示」に該当すると判断され、課徴金納付命令に至りました。
美容健康業界が注視すべきポイント
美容・健康業界でも、「○○部門No.1」「○○満足度No.1」といった表現は一般的に用いられています。しかし、その調査が「誰に」「どのように」行われたのか、裏付け資料があるかが極めて重要です。
本件では、以下の対応が不十分だったと指摘されました。
- アンケート回答者が実際の利用者であるか、知見を有する者であるかを確かめていない
- 根拠もなく選定した同業他社の中からのどの企業が良さそうかを選ばせる、「印象」を問うアンケートであった
- アンケート事業者からの調査結果が、客観的な調査に基づくものであるかを確認していなかった
これらは、景表法の「不実証広告規制」にも関連するリスクであり、美容健康業界におけるランキングや顧客満足度表示でも同様の注意が求められます。
【まとめ】広告表示の「No.1」は証明責任が伴う
消費者庁は、客観的根拠を欠いた表示について、積極的に調査と処分を行っています。今回の事例は、たとえ調査を実施していても、対象者や手法が不適切であれば「誤認表示」と判断されうることを示しています。
美容・健康業界においても、「顧客の声」「モニター調査」などの表現を用いる際には、表示の裏付けとなる資料を適切に保存・精査する体制構築が不可欠です。