2025年1月30日、消費者庁は株式会社東亜産業に対し、景品表示法に基づく課徴金納付命令を発出しました。同社が販売していた「ウイルスシャットアウト」という商品に関する広告表示が、不当表示(優良誤認)に該当すると判断されたためです。これにより、東亜産業は1,651万円の課徴金を支払うよう命じられました。
問題となった広告表示

問題視されたのは、「ウイルスシャットアウト」を販売する際に用いられた広告表現です。同社は自社のウェブサイトおよび楽天市場の自社ページで、以下のような表現を使用していました。
- 「緊急ウイルス対策!!」
- 「流行性ウイルスからあなたを守ります!」
- 「二酸化塩素配合の除去・除菌成分が周囲に浮遊するウイルスや菌を除去します。」
- 「首にかけるだけで空間のウイルスを除去!」
- 「ウイルス対策 塩素成分で空間の除菌!」
これらの表示は、「本製品を身につけることで、身の回りの空間のウイルスや菌を除去または除菌できる」という印象を消費者に与えるものです。しかし、実際にはその効果を裏付ける合理的な根拠がなかったことが問題視されました。
景品表示法違反のポイント
消費者庁は、景品表示法第5条第1号(優良誤認表示)に違反すると認定しました。この規定は、商品やサービスの品質・効果を、実際よりも著しく優れているかのように誤認させる表示を禁止するものです。
また、東亜産業は消費者庁から「表示の裏付けとなる合理的な根拠」を求められましたが、提出した資料は広告表現を裏付けるに足る内容ではないと判断されました。そのため、不当表示と推定され、課徴金納付命令が下されました。
課徴金の計算方法
景品表示法第8条に基づき、課徴金は以下の計算式で算出されます。
- 課徴金の対象となる売上額:約5億5,058万7,562円
- 課徴金率:3%
- 算出額:1,651万円
課徴金は、2025年9月1日までに納付する必要があります。
誤った広告表現の問題点
今回の事例から、企業が広告を作成する際に注意すべきポイントが浮かび上がります。
- 科学的根拠のない表現
- 「ウイルスを除去できる」「空間除菌ができる」などの効果を謳う場合、その裏付けとなる科学的根拠が必要です。
- もし根拠がない場合、消費者庁に求められた際に証明できず、不当表示とみなされるリスクがあります。
- 消費者の誤認を招く表現
- 「流行性ウイルスから守る」「首にかけるだけで空間のウイルスを除去」など、実際には効果が立証されていないにもかかわらず、効果を強調する表現は優良誤認表示に該当する可能性が高いです。
- 免責文言の不十分さ
- 東亜産業は「※使用環境によって効果が異なります。」という注意書きを付していましたが、消費者庁はこの一文では消費者の誤解を打ち消すには不十分と判断しました。
企業の広告戦略に求められる対応
このような措置を受けないためには、企業は以下の点に注意する必要があります。
- 広告表現のチェック
- 製品の効果を記載する際には、科学的根拠があるかどうかを厳格に確認する。
- 誤解を招く表現がないか、法的観点からレビューを受ける。
- 根拠資料の準備
- 製品の効果について、消費者庁から求められた場合に即座に提出できる科学的資料を保持する。
- 法令遵守の徹底
- 景品表示法に関する社内研修を実施し、誇大広告を防ぐ仕組みを構築する。
- 消費者庁や公正取引委員会のガイドラインをチェックし、広告内容が適切かどうかを確認する。
まとめ
今回の東亜産業の事例は、新型コロナウイルス流行下で「除菌」「ウイルス対策」を謳う商品が急増した時期に起こりました。同様の措置命令を受けた企業も過去に存在しており、消費者庁は今後も厳しく監視を続けると考えられます。
企業は、消費者の信頼を得るためにも、科学的根拠に基づいた広告を行い、誇大広告を避ける姿勢を徹底することが求められます。
適切な広告表現を行うために専門家への相談を

景品表示法違反による課徴金や行政処分を防ぐためには、事前の広告審査が重要です。
特に、美容・健康分野の商品広告は規制が厳しく、誇大広告とみなされるリスクが高いため、法的チェックを受けることが不可欠です。
弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所では、美容・健康分野の広告表現に詳しい弁護士が、広告審査や景品表示法への適合チェックをサポートします。
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