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ハズレなしくじは景品表示法違反?よくある違反例や罰則・対策方法を弁護士が解説

「ハズレなしくじで景品表示法違反になると、どのような罰則を受けるのだろう…」
「どうすれば、ハズレなしくじで景品表示法違反を防げる?」

「ハズレなしくじ」は、顧客にとって非常にお得なキャンペーンに思えます。しかし、企画内容によっては、意図せず景品表示法に違反してしまうリスクもゼロではありません。

この記事では、「ハズレなしくじ」が景品表示法のどの規定に関わるのか、具体的な違反例や罰則を解説します。違反を防ぐための対策も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

景品表示法について不安を抱えているなら、早い段階で弁護士などの専門家に相談することが大切です。丸の内ソレイユ法律事務所は、広告チェックに精通した弁護士が在籍し、個々のケースに合わせて適切な解決策をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。

くじ企画で最低限知っておきたい景品表示法の3つの分類

景品表示法における景品規制は、主に以下の3つのカテゴリーに分類されます。

  • 一般懸賞
  • 総付景品
  • 共同懸賞

適法なくじ企画を実施するためには、それぞれの特徴と景品の上限額を正しく理解することが重要です。自社の企画がどれに該当するのかを正確に把握しましょう。

一般懸賞|くじ引きや抽選で景品を提供する場合

「一般懸賞」とは、くじや抽選など、偶然性や特定行為の優劣によって景品を提供する形態を指します。

当たる景品に優劣がある「ハズレなしくじ」の場合、この一般懸賞に該当します。

一般懸賞には、提供できる景品の最高額と総額に下記のような上限が定められています。

取引価額景品の最高額景品の総額
5,000円未満取引価額の20倍懸賞に係る売上予定総額の2%
5,000円以上10万円懸賞に係る売上予定総額の2%

出典:消費者庁|景品規制の概要

たとえば、1,000円の商品を購入した顧客が引けるくじの場合、景品の最高額は2万円となります。

総額規制もあるため、キャンペーン全体の売上予測から景品にかけられる費用を算出することが大切です。

以下の記事では、一般懸賞について詳しく解説しています。合わせて参考にしてみてください。

関連記事:景表法における一般懸賞とは?上限額や規制ルールをわかりやすく解説(10月作成予定記事)

総付景品|購入者・来店者全員に景品を提供する場合

総付景品とは、商品の購入者やサービスの利用者、来店者など、条件を満たした全員に景品を提供する形態です。「ベタ付け景品」とも呼ばれます。

ハズレなしくじの中でも、参加者全員が同じ景品を受け取る場合は、総付景品に該当します。

総付景品の上限額は下記のとおりです。

取引価額景品の最高額
1,000円未満200円
1,000円以上取引価額の10分の2

出典:消費者庁|景品規制の概要

一般懸賞と異なり、景品総額に関する規制はありません。つまり、参加人数が多くなっても配布総額が問題になることはありません。

しかし、上記の表のように提供できる景品一つの価額が厳しく制限されている点に注意が必要です。景品の単価と取引価額のバランスを必ず確認しましょう。

共同懸賞|商店街の福引など複数の事業者が共同で行う場合

共同懸賞は、商店街の福引や特定の地域・業種の複数の事業者が共同で実施する懸賞企画を指します。

単独の事業者で行う一般懸賞よりも、景品の上限額が緩和されているのが特徴です。

  • 景品の最高額:取引価額にかかわらず30万円
  • 景品の総額:懸賞に係る売上予定総額の3%

出典:消費者庁|景品規制の概要

共同で大規模なキャンペーンを実施する際に適用されるもので、単独店舗での「ハズレなしくじ」企画では通常該当しません。

ハズレなしくじは景品表示法のどの分類?

ハズレなしくじは、景品内容によって景品表示法上の分類が変わります。

この分類を間違えると、適用される上限額のルールも変わってしまうため、企画段階での正確な判断が重要です。

主な分類は、以下のとおりです。

  • 全員に同じものが当たる場合は「総付景品」
  • 当たる景品に優劣がある場合は「一般懸賞」

以下、それぞれ具体的に解説します。

景品表示法とは何かについて詳しく知りたい場合は、以下の記事も参考にしてみてください。

関連記事:景表法(景品表示法)とは?ガイドラインの内容や注意すべき広告表現を弁護士が解説(10月作成予定記事)

全員に同じものが当たる場合は「総付景品」

くじを引いた全員が、全く同じ価値・種類の景品を受け取る場合は「総付景品」に該当します。

「1,000円以上のお買い上げで、当店オリジナルクリアファイルを必ずプレゼント」といったキャンペーンなどです。

この場合、景品は取引価額の10分の2(取引価額が1,000円未満の場合は200円)までと定められています。

高額な景品を提供できない点に注意が必要です。

当たる景品に優劣がある場合は「一般懸賞」

一方で、くじの結果によって当たる景品に優劣がある場合は「一般懸賞」と見なされます。

下記のように、ハズレはないものの、くじの結果によって得られる景品やサービスの価値が異なるケースが該当します。

  • 1等:高級家電
  • 2等:お菓子詰め合わせ
  • 3等:ポケットティッシュ

この場合は、景品総額が売上予定総額の2%以内で、かつ景品の最高額が10万円(取引価額5,000円未満の場合はその20倍)という規制が適用されます。

ただ、同一企画内で総付景品と一般懸賞が併存するケースも珍しくありません。参加賞を渡し、その上で抽選を行う場合などが該当します。

総付景品と一般懸賞を同時に行う場合は、それぞれの規制を同時に満たします。この場合、計算がより複雑になるため注意が必要です。

実施したい企画がどちらに該当するかわからない場合や、景品の価格がわからない場合は、一度弁護士に相談しましょう。

ハズレなしくじでよくある景品表示法の違反例

「ハズレなし」という魅力的な響きの裏には、景品表示法違反につながる落とし穴がいくつか存在します。

ここでは、とくに注意すべき典型的な違反例を3つ紹介します。

  • 当たりが最初から入っていないケース
  • 景品総額が売上予定総額の2%を超えるケース
  • オンラインくじで確率を誤認表示するケース

自社の企画がこれらのケースに当てはまらないか、厳しくチェックしてください。

当たりが最初から入っていないケース

「1等は豪華海外旅行!」などと大々的に宣伝しておきながら、実際には当たりくじを箱に入れていないケースや、意図的に当選者が出ないように操作するケースです。

これは、景品規制以前の問題として、消費者の判断を誤らせる優良誤認表示に該当する悪質な行為とみなされます(景品表示法第5条1号)。

景品の内容や当選確率について、消費者を欺くような表示は絶対に行ってはいけません。

景品表示法の優良誤認表示について詳しく知りたい場合は、以下の記事も参考にしてみてください。

関連記事:景品表示法の優良誤認とは?判断基準・違反例や罰則・予防策を弁護士が解説

(10月作成予定記事)

景品総額が売上予定総額の2%を超えるケース

景品総額は、景品に優劣があるハズレなしくじ(一般懸賞)で、とくに注意すべき点の一つです。

豪華な景品を用意しすぎた結果、景品に要する費用(供与価額)の総計が、キャンペーン期間中の売上予定総額の2%を超えてしまうと、一般懸賞の総額規制に抵触するおそれがあります。

売上予測が100万円の場合、用意できる景品の総額は2万円までです。

企画段階で売上を正確に予測し、その範囲内で景品を設計する必要があります。

オンラインくじで確率を誤認表示するケース

Webサイトやアプリで実施されるオンラインくじ(ガチャなど)も景品表示法の対象です。

たとえば、「レアキャラの排出率1%」と表示しながら実際の排出率がそれを下回っていた場合、優良誤認表示にあたる可能性があります(景品表示法第5条1号)。特定の条件下でなければその確率にならない場合も同様です。

「ハズレなし」を謳う場合、最も価値の低い景品の当選確率が不当に高く設定されていないかなど、全体の確率設計が消費者の認識と乖離しないよう注意が必要です。

ハズレなしくじで景品表示法に違反した場合のペナルティ

景品表示法に違反すると、事業の信頼を損なうだけでなく、厳しい行政処分や金銭的なペナルティが科される可能性があります。

主なペナルティは、以下のとおりです。

  • 1.行政から措置命令を受ける可能性がある
  • 2.売上額の3%の課徴金が科される恐れがある
  • 3.適格消費者団体による差し止めを受ける可能性がある
  • 4.悪質なケースでは罰金刑となるリスクがある

軽い気持ちでの違反が、経営に大きな打撃を与えることも少なくありません。必ず事前にチェックしておきましょう。

1.行政から措置命令を受ける可能性がある

違反が発覚した場合、まず消費者庁から措置命令という行政処分が下される可能性があります。

措置命令では、以下の内容が命じられます。

  • 違反行為の差し止め
  • 再発防止策の実施
  • 違反の事実を一般消費者へ周知徹底すること

措置命令を受けると、その事実が公表されるため、企業のブランドイメージや社会的信用が大きく傷つくことになるでしょう。

2.売上額の3%の課徴金が科される恐れがある

不当表示によって商品やサービスが販売された場合、消費者庁から「課徴金納付命令」が出されることがあります。

これは、景品表示法に基づき、不当表示によって得た経済的利益を返還させる目的で科されるものです。

課徴金の額は、不当表示が行われていた期間中の売上額の3%と定められています。

仮に対象商品の売上が1億円だった場合、300万円の課徴金が科される計算です。利益ではなく売上に対して課されるため、企業にとって大きな金銭的負担となるでしょう。

3.適格消費者団体による差し止めを受ける可能性がある

内閣総理大臣に認定された適格消費者団体は、事業者の不当な行為に対して、停止や予防を求める差止請求を実施できます(消費者契約法第12条の5)。

この差止請求は、行政処分や刑事罰と異なり、行政の判断を待たずに民間団体から直接行われる点が特徴です。景品表示法に抵触するおそれのある「ハズレなし」くじ企画を実施していた場合、消費者団体から突然訴訟を提起される可能性があります。

訴訟が起こされると、広告の停止や表示内容の修正を求められるだけでなく、弁護士対応や社内調査、再発防止策の検討など、多大な時間とコストが発生します。

法令違反の意図がなくても、表示内容に誤解の余地がある場合には、早期に修正・確認を行うことが重要です。

4.悪質なケースでは罰金刑となるリスクがある

措置命令に従わない場合や、悪質な優良誤認表示・有利誤認表示を行った場合などには、刑事罰が科されることもあるため注意が必要です。

たとえば、景品表示法第46条では、措置命令違反の場合は2年以下の懲役または300万円以下の罰則が定められています。また、景品表示法第48条では、故意に優良誤認表示・有利誤認表示を行った場合は、100万円以下の罰金が科されると定められています。

法人の場合、最大で3億円の罰金が科される可能性もあり、企業の存続そのものを揺るがしかねない重大なリスクといえるでしょう(景品表示法第49条)。

ハズレなしのくじキャンペーンを実施する際には、景品の内容・当選確率・提供条件などを明確にし、「消費者を誤認させない表現か」を常に意識することが欠かせません。

適切な表示がわからない場合は、弁護士などの専門家に相談することが大切です。

関連記事:景表法違反とは?発覚してからの流れや罰則、実際の違反事例を解説【弁護士監修】

(10月作成予定記事)

ハズレなしくじで景品表示法違反を防ぐための対策方法

景品表示法違反は、事前の知識と仕組みづくりで防げます。

ここでは、担当者がすぐにでも実践できる具体的な対策方法を4つ紹介します。

  • 1.くじ企画の分類を適切に理解する
  • 2.上限額・総額を試算してから告知文を作る
  • 3.事前のチェックフローを仕組み化する
  • 4.弁護士などの専門家に相談する

これらの対策を徹底し、健全なキャンペーン運営を心がけましょう。

1.くじ企画の分類を適切に理解する

まずは、企画している「ハズレなしくじ」がどのタイプの景品類提供(景表法上の分類)に該当するかを正しく判断することが重要です。

  • 全員が同じ景品をもらえる場合:総付景品
  • 景品の内容に差がある場合:一般懸賞

この分類を誤ると、設定できる景品の金額上限が大きく変わってしまうため、注意が必要です。

たとえば「総付景品」は、取引金額の2割や200円といった金額上限があり、「一般懸賞」は取引価額や提供総額に応じた別の上限が適用されます。

まずは企画内容を整理し、どちらに該当するかを明確にしてから、次のステップ(上限金額の設定や表示方法の確認)に進みましょう。

2.上限額・総額を試算してから告知文を作る

企画が一般懸賞に該当する場合は、必ず景品総額が売上予定総額の2%以内に収まっているかを確認することが大切です。

さらに、総額だけでなく個々の景品の最高額(最高額規制)も別枠で存在するため、総額規制+最高額規制の両方を同時に満たす設計が必要です。

告知やデザインの前に、以下のフローで「予算→設計→表示」の順序を徹底しましょう。

  • ステップ1:キャンペーン期間と対象商品を決定する
  • ステップ2:過去のデータなどから売上予定総額を算出する
  • ステップ3:売上予定総額の2%を計算し、景品にかけられる上限総額を確定する
  • ステップ4:上限総額の範囲内で景品の内容・数量・当選確率を設計する

このフローを徹底し、予算ありきで景品を決定してから告知文や宣伝物を作成する習慣をつけましょう。

3.事前のチェックフローを仕組み化する

担当者一人の知識や判断に頼るのではなく、組織としてチェックできるフローを構築することが不可欠です。

景品表示法は条文が複雑で、かつ業界ごとの慣習やケースバイケースの判断が必要な場面も多く、属人的な確認ではリスクを見落とす可能性があります。

そのため、組織全体としてのチェックフローを仕組み化しましょう。たとえば次のようなプロセスを設けると効果的です。

  • 1.企画担当者が原案を作成する
  • 2.法務部門やコンプライアンス部門が法的観点からレビューする
  • 3.複数部門で確認した上で、最終的な実施を決定する

このような多段階のチェック体制を設けることで、担当者個人の見落としや知識不足によるミスを防げます。問題が発生した場合にも、「組織として適切な手続きを踏んでいた」という説明責任を果たしやすくなるでしょう。

4.弁護士などの専門家に相談する

企画内容が複雑であったり、法的にグレーゾーンで判断に迷う場合は、景品表示法に詳しい弁護士などの専門家に相談することが大切です。

とくに、くじの「当たり・ハズレ」の扱いや、景品の金額設定、表示方法などは、少しの表現の違いで違反とみなされることがあります。

事前に専門家のチェックを受けておくことで、違反リスクを未然に防ぎ、安全にキャンペーンを進行できるでしょう。

また、弁護士は単にリスクを指摘するだけでなく、合法的かつ効果的な代替案を提案してくれる点も大きなメリットです。くじの構成や表示文言を少し工夫することで、法令を遵守しながら魅力的な企画に仕上げられます。

さらに、万が一、消費者庁から調査の連絡があった場合でも、顧問弁護士がいれば迅速かつ適切に対応可能です。

ハズレなしくじと景品表示法に関するよくある質問

社内イベントのくじ引きも景品表示法の対象になる?

景品表示法は、顧客を誘引するための手段として景品類を提供する場合に適用されます。

したがって、商品の購入やサービスの利用といった「取引」に付随しない社内イベント(忘年会など)のくじ引きは、原則として景品表示法の対象外です。

ただし、従業員向けの販売コンテストの賞品など、取引に関連するものは対象となる可能性があるため注意が必要です。

無料で誰でも引けるくじも景品表示法の対象になる?

商品の購入や来店などを一切条件とせず、誰でも無料で参加できるオープン懸賞は、景品表示法の景品規制の対象外です。

景品額については従来までは、1,000万円という上限が定められていましたが、平成18年4月に規制が撤廃され、現在では提供できる景品などに具体的な上限額の定めはありません。

また、「無料」と謳いながら、実際には会員登録やアプリのダウンロードが必要な場合は、それらが「取引」と見なされ、景品規制の対象となる可能性があります。

出典:消費者庁|景品規制の概要

オープン懸賞については、以下の記事でも詳しく解説しています。

関連記事:オープン懸賞は景表法の規制対象になる?一般懸賞との違いや上限の有無を弁護士が解説(10月作成予定記事)

法律に違反してしまった場合はどこに相談すればいい?

万が一、景品表示法に違反してしまった場合や、違反の疑いを指摘された場合は、速やかに以下の窓口に相談してください。

消費者庁景品表示法を所管する行政機関です。表示適正化指導官が相談に応じてくれます。
都道府県の担当部署各都道府県にも景品表示法に関する相談窓口が設置されています。
弁護士具体的な法的対応や行政との折衝が必要な場合は、景品表示法に詳しい弁護士への相談が不可欠です。

被害を最小限に食い止めるためには、問題を放置せず、早期に専門家の助言を仰ぐことが大切です。

まとめ|景品表示法を理解して適切にハズレなしくじを実施しよう

「ハズレなしくじ」は、顧客の購買意欲を高める効果的なマーケティング手法です。

しかし、実施の際には景品表示法の正しい理解が不可欠です。景品の上限額や総額の規制があることを理解し、当たりが入っていない場合や上限額を超える場合は違反となることを覚えておきましょう。

景品表示法に違反すると、措置命令や課徴金などの重いペナルティが科されます。違反を防ぐためには、ルールの理解や事前の計算、チェック体制の構築が重要です。

もし企画内容に少しでも不安があれば、実施する前に必ず弁護士などの専門家へ相談しましょう。

景品表示法について不安を抱えているなら、早い段階で弁護士などの専門家に相談することが大切です。丸の内ソレイユ法律事務所は、広告チェックに精通した弁護士が在籍し、個々のケースに合わせて適切な解決策をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。

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