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シャンプー広告の法規制と薬機法ルール集|OK/NG表現チェックリスト付

「シャンプー広告は、効果効能などどこまで表現して良いのだろう?」
「NG表現とOK表現の具体的な例が知りたい」

シャンプー広告を作成する際、こうした表現の「境界線」に悩む担当者様は少なくありません。

シャンプー広告は、薬機法と景品表示法により厳しく規制されています。万が一違反すれば、売上の3%ないし4.5%が課徴金となるだけでなく、消費者庁の公式サイトに企業名が公表され、築き上げたブランド信用を失いかねません。

この記事では、法規制の基本や具体的なOK・NG表現リストを解説します。広告担当者・法務・代理店の正しいチェック体制や、専門弁護士によるリーガルチェックの必要性も解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

シャンプー広告が法規制に違反していないかお悩みの方は、専門家に相談することが大切です。丸の内ソレイユ法律事務所は、企業の薬機法・広告・新規事業の法規制対応に精通した弁護士が在籍しています。それぞれの状況に合わせて適切な解決策をご提案できるため、まずはお気軽にご相談ください。

なぜシャンプー広告は規制が厳しい?薬機法と景表法の基本

シャンプーは、消費者の髪や頭皮に直接使用する製品です。広告表現に科学的根拠がなかったり、誇大な表現が使われたりすると、消費者が誤った期待をして購入し、健康被害や期待外れにつながる恐れがあります。

消費者の安全と適切な商品選択を守るために、シャンプー広告は主に2つの法律で厳しく規制されています。それが「薬機法」と「景品表示法(景表法)」です。

これらの法律がどのようなルールを定めているのか、基本を見ていきましょう。

シャンプーの分類:「化粧品」と「医薬部外品(薬用シャンプー)」の違い

シャンプーは、薬機法によって「化粧品」と「医薬部外品」の2つに大別されます。どちらに分類されるかで、広告で謳うことが許される「効能効果」の範囲が全く異なる点に注意が必要です。

「薬用」と記載されているものが医薬部外品であり、それ以外は基本的に化粧品です。両者の違いを下記の表で確認しましょう。

項目化粧品医薬部外品(薬用シャンプー)
目的清潔・美化・魅力を増す防止・衛生
有効成分配合の定めなし厚生労働省が許可した有効成分を一定濃度配合
広告可能な効能効果(例)・髪を清浄にする・髪にうるおいを与える・髪の水分、油分を補い保つ・頭皮、毛髪をすこやかに保つ・フケ、カユミを防ぐ・毛髪・頭皮の汗臭を防ぐ(化粧品の効能効果も含む)

化粧品のシャンプーで「フケを防ぐ」と表現することは、認められた効能効果の範囲を超えるため、薬機法違反となります。

自社の商品がどちらに分類されるか、正確に把握することが広告作成の第一歩といえるでしょう。

薬機法(旧薬事法)とは?広告規制の対象範囲

薬機法とは、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の略称です。かつては「薬事法」と呼ばれていました。

この法律は、医薬品や化粧品などの品質・有効性・安全性を確保し、保健衛生の向上を図ることを目的としています。

シャンプー広告に関連する重要な項目は、第66条に定められた「誇大広告等の禁止」です。

薬機法第66条(誇大広告等)
何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
引用:e-Gov法令検索|薬機法

簡単にいえば、「嘘や大げさな表現で、誤解されるような広告をしてはいけない」というルールです。

景品表示法(景表法)とは?「優良誤認」「有利誤認」に注意

景品表示法(景表法)は、商品やサービスの品質・内容・価格などについて、実際よりも著しく良く見せかける不当な表示(広告)を禁止する法律です。正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といいます。

消費者がより良い商品を自主的かつ合理的に選べる環境を守るのが目的です。シャンプー広告で特に注意すべきなのは、以下の2つの「不当表示」です。

不当表示の種類概要シャンプー広告での具体例
優良誤認表示商品の品質や内容が、実際よりも著しく優れていると誤認させる表示・根拠がないのに「売上No.1」と表示する・配合量が微量な成分を「高濃度配合」と謳う
有利誤認表示商品の価格や取引条件が、実際よりも著しく有利であると誤認させる表示・終了時期の明記なく「今だけ半額」と表示し続ける・根拠のない通常価格と比較して割引率を高く見せる

薬機法が「効能効果」の表現を厳しく制限するのに対し、景表法は「品質の表現が事実に基づいているかを監視している」と理解すると分かりやすいでしょう。

2023年10月施行「ステルスマーケティング規制」の重要性

2023年10月1日から、SNSやレビューサイトの影響力が増大する中で、景表法の新しいルールとして「ステルスマーケティング規制(ステマ規制)」が導入されました。

ステマ規制は、事業者が第三者を装って自社の商品・サービスを宣伝したり、インフルエンサーなどに依頼して広告であることを隠して宣伝させたりする行為を禁止するものです。

インフルエンサーやアフィリエイターにシャンプーを提供し、SNSやブログで紹介を依頼する場合、「事業者の広告(表示)」であると明示することが義務付けられました。

具体的には、以下のような表記が必須です。

  • #PR
  • #広告
  • プロモーション

この規制に違反した場合、措置命令などの行政処分を受けるのはインフルエンサーではなく、広告主である事業者(メーカーや販売店)です。

SNSマーケティングを行う際は、依頼先への指示を徹底する必要があります。

出典:消費者庁|令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。

薬機法改正の歴史とシャンプー広告の変遷

現在の厳しい広告規制は、一夜にしてできたものではありません。消費者の安全意識の高まりや、市場のトレンド変化に対応するため、薬機法(旧薬事法)は何度も改正を重ねてきました。

シャンプー市場のブームと法規制の変遷を振り返ることは、規制の本質である「消費者保護」の視点を理解する助けとなります。

ここでは、主要なターニングポイントを解説します。

1960年代:薬事法の誕生と「化粧品」の定義

現在の薬機法の礎となったのは、1960年(昭和35年)に制定された「薬事法」です。

この法律により、医薬品・医薬部外品・化粧品などの定義が明確化され、製造・販売には国の承認や許可が必要となりました。

この時代、シャンプーは明確に「化粧品」として位置づけていたのが特徴です。粗悪品や有害物質を含む製品から消費者を守ることであり、「安全性の確保」が最優先課題でした。

効能効果を競うよりも、まずは安全に使える日用品としての立ち位置が確立された時代です。

1980年代:「朝シャン」ブームと表現の多様化

1980年代に入ると、「朝シャン」(朝にシャンプーすること)というライフスタイルが若者を中心に大ブームとなりました。この社会現象は、シャンプー市場にも大きな変化をもたらします。

具体的には、消費者は単に「汚れを落とす」だけでなく、以下のようにシャンプーに対して新たな価値を求めるようになりました。

  • 朝のスタイリングが楽になること
  • 日中も「サラサラ」「しっとり」が続くこと
  • 寝癖がつきにくいこと

こうしたニーズに応えるため、メーカー各社は製品の機能性を競い始めます。

広告表現も多様化し、「ダメージケア」「キューティクル保護」といった、化粧品の効能効果の範囲(当時認められていた55の効能)ギリギリを攻めるような表現が登場し始めました。

これが、後の広告規制の監視が厳しくなる一つのきっかけとなります。

2000年代:医薬部外品の範囲拡大と「薬用」シャンプーの台頭

2000年代は、規制緩和の流れを受け、それまで医薬品にしか配合できなかった成分が「医薬部外品」として使用可能になるケースが増えました。

これにより、特定の「有効成分」を配合した「薬用シャンプー」が市場に急速に普及します。

薬用シャンプー(医薬部外品)は、化粧品のシャンプーでは謳えない「防止」に関する効能効果を表現できるようになりました。主な表現は、以下のとおりです。

  • フケ・かゆみを防ぐ
  • 毛髪・頭皮の汗臭を防ぐ
  • (育毛剤の場合)育毛、発毛促進

これにより、シャンプー広告の表現の幅は大きく広がりました。

「化粧品」「医薬部外品」「医薬品」の境界線を守ることの重要性が、一層高まった時代といえます。

2021年(令和3年):課徴金制度の導入とその影響

シャンプー広告など薬機法に関わる全ての広告において、「課徴金制度」を導入する改正が2021年8月に施行されました。

これは、薬機法に違反する誇大広告(第66条違反)を行った事業者に対し、金銭的なペナルティを科す制度です。

主なペナルティの内容は、以下のとおりです。

項目内容
対象薬機法第66条(誇大広告)違反
金額違反対象となった商品の売上高×4.5%
期間違反を行っていた期間(最大3年間)

最大のポイントは、「利益」ではなく「売上」に対して課徴金が計算される点です。

たとえば、1億円を売り上げたシャンプーの広告が違反と認定された場合、利益がいくらであれ、原則として450万円の課徴金が命じられます。

この改正により、広告のコンプライアンス遵守は、単なる「決まり事」ではなく、企業の経営に直結する最重要リスク管理へと変わりました。

もし違反したら?罰則・ペナルティの具体的内容

次に「もし違反してしまったらどうなるのか」という具体的なリスクを解説します。

広告規制への違反は、金銭的な損失だけでなく、企業の社会的信用を失墜させる深刻な事態につながります。

主な罰則・ペナルティは以下のとおりです。

  • 刑事罰:2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金
  • 課徴金:対象商品の売上の4.5%(利益ではなく売上!)
  • 措置命令と企業名・違反内容の公表(信頼失墜)
  • 関連商品の回収・販売停止命令

「知らなかった」では済まされないため、ペナルティの内容を正確に把握しておきましょう。

関連記事:陥りやすい薬機法(薬事法)違反の例と刑罰とは?

刑事罰:2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金

薬機法の誇大広告(第66条)に違反した場合、刑事罰が科される可能性があります。

行政処分(措置命令など)とは異なり、警察や検察が介入する刑事事件として扱われるのが特徴です。

違反が悪質であると判断された場合の罰則は、以下のとおりです。

  • 2年以下の拘禁刑※
  • または200万円以下の罰金
  • 上記の両方が科される(併科)場合もあります。

※2025年施行の改正刑法により、従来の「懲役」と「禁錮」が「拘禁刑」に一本化されました。

出典:法務省|拘禁刑下の矯正処遇等について

さらに、薬機法には「両罰規定」があります(薬機法第90条)。これは、違反行為を行った担当者個人だけでなく、その雇用主である法人(会社)に対しても、200万円以下の罰金刑が科される可能性があるという規定です。

シャンプー広告の担当者個人の問題では済まされないため、十分に注意が必要です。

課徴金:対象商品の売上の4.5%(利益ではなく売上!)

2021年の薬機法改正で導入された課徴金制度は、企業にとって強力なペナルティです。刑事罰とは別に、行政処分として課されます。

制度の具体的な内容は、以下のとおりです。

  • 目的:違反広告によって不当に得た経済的利益を徴収する
  • 算定:違反対象商品の「売上高」の4.5%
  • 除外:課徴金額が225万円未満(売上高5,000万円未満)の場合は適用されない

出典:厚生労働省|課徴金制度の導入について

仮に広告違反が認定されたシャンプーの3年間の売上が5億円だった場合、2,250万円もの課徴金が課される計算になります。企業の利益を大幅に圧迫し、経営に深刻なダメージを与えかねません。

関連記事:薬機法改正で導入される課徴金と措置命令

措置命令と企業名・違反内容の公表(信頼失墜)

薬機法および景表法に違反した場合、厚生労働大臣や都道府県知事、または消費者庁から「措置命令」が出されます。これは、違反行為を是正し、再発を防止するために命じられる行政処分です。

措置命令の主な内容は、以下のとおりです。

  • 違反した広告の即時中止または修正
  • 消費者に与えた誤解を解くための周知(例:謝罪広告の掲載)
  • 再発防止策の策定と実施

措置命令を受けると、その事実が行政機関(消費者庁や都道府県など)のWebサイトで公表されます。「〇〇株式会社が景表法違反(優良誤認)」といった形で、企業名と違反内容が表示される点が特徴です。

一度失った消費者の信頼やブランドイメージを回復するのは容易ではありません。今後の事業継続にも大きな影響を与えるため、「信頼失墜(レピュテーションリスク)」こそが、最大のペナルティともいえるでしょう。

関連商品の回収・販売停止命令

広告表現の違反にとどまらず、製品の品質や安全性そのものに重大な問題があると判断された場合、さらに重い処分が下されます。

販売停止命令違反広告が是正されない場合や、製品の安全性が確認できない場合、対象商品の販売を一時的に停止するよう命じられます。
商品回収(リコール)命令シャンプーに未承認の医薬品成分が配合されていたり、健康被害の恐れがあったりする場合、市場に出回っている全ての商品の回収(リコール)を命じられます。

つまり、広告違反が発端となり、製品自体の販売ができなくなる可能性もあります。回収にかかる莫大なコストや、その間の機会損失は、企業の存続そのものを脅かすリスクとなるでしょう。

シャンプー広告OK/NG表現完全チェックリスト

シャンプー広告の法律違反を避けるためには、具体的な表現の「OKライン」と「NGライン」を知ることが不可欠です。ここでは、化粧品シャンプーと薬用シャンプー(医薬部外品)の両方で注意すべき、実践的な表現をリストアップしました。

自社の広告が危険な表現を含んでいないかを確認してみましょう。

NG表現(薬機法・景表法)の具体例10選

まずは、シャンプー広告で絶対に使用してはならないNG表現の具体例を紹介します。

以下に、薬機法における「医薬品的な効果」の標榜や、景表法の「優良誤認」に該当するリスクが高いものを厳選しました。

No.NG表現例違反の根拠・理由
1髪が生える、発毛を促進【薬機法】医薬品でしか認められない効果
2アトピー肌が治る【薬機法】病気の「治療」「治癒」にあたる医薬品的な表現
3白髪が黒髪に戻る【薬機法】身体の組織機能に影響を与える医薬品的な表現
4髪質を根本から改善する【薬機法】「改善」は効果の保証にあたり、化粧品の範囲を超える
5絶対にフケが出なくなる【薬機法・景表法】効果を「絶対」と保証する表現(優良誤認)
6業界No.1の補修力【景表法】客観的かつ公正な調査データがない限り使用不可(優良誤認)
7医師が認めたシャンプー【薬機法】医師や専門家による「推薦」「保証」は禁止されている
8天然成分100%【景表法】水や、品質保持のための微量な化学成分を含む場合、虚偽表示(優良誤認)
9モデルの〇〇さんも愛用【ステマ規制】対価が発生している場合、「#PR」等の広告明記が必須
10使うだけでサラサラに【薬機法】使用前後の写真などで過度な演出をすると誇大広告

これらの表現は、たとえ「※個人の感想です」という注釈(打ち消し表示)を小さく記載しても、違反とみなされるケースが多いため注意が必要です。

OK表現・言い換えテクニック20選

NG表現を避けるためには、法律で認められた範囲内での「言い換え」が重要です。

化粧品のシャンプーの効能効果の範囲は、厚生労働省医薬食品局長通知(薬食発0721第1号)により56項目に定められています。

ここでは、その範囲内でのOK表現と、NG表現からの言い換えテクニックを紹介します。

目的・悩みNG表現OK表現(言い換え例)
洗浄毛穴の汚れを除去する・頭皮、毛髪を清浄にする・髪や頭皮の汚れを洗い流す
保湿髪が潤い続ける・毛髪の水分、油分を補い保つ・髪のパサつきを抑える
フケ・かゆみフケが治る・(化粧品)フケ、カユミを抑える・(医薬部外品)フケ、カユミを防ぐ
ダメージ髪質を改善する・髪のダメージを補修する・枝毛、切れ毛を防ぐ(※物理的効果として)
仕上がりサラサラ髪に変える・髪をしなやかにする・クシどおりを良くする・.髪にハリ、コシを与える・髪につやを与える・髪のまとまりをよくする・(毛髪の)帯電を防止する
頭皮ケア頭皮環境を整える・頭皮、毛髪をすこやかに保つ
香り香りでリラックス効果・香りにより気分がリフレッシュする(雑貨的訴求)
No.1表示売上No.1(根拠なし)・〇〇調べ2024年シャンプー部門売上第1位(調査の根拠を明確に併記)
頭皮の臭い加齢臭を消す・頭皮、毛髪の汗臭を防ぐ(※医薬部外品)
安全性絶対に安全、無添加・アレルギーテスト済み(※すべての人にアレルギーが起きないわけではありません)・〇〇(成分名)不使用

ポイントは「防止する」「抑える」「保つ」「すこやかに保つ」といった、現状維持や緩和的な表現に留めることです。

「治る」「改善する」「生える」といった断定的な表現は使用しないよう注意しましょう。

グレーゾーンの判断基準:「一般消費者の誤認」を招くか

法律で明確に白黒つけられない「グレーゾーン」な表現も存在します。

こうした表現の最終的な判断基準は、「その広告を見た一般消費者が、実際の商品よりも著しく優れていると誤認するかどうか」です。

以下のポイントに注意し、少しでもリスクを感じる表現は避けましょう。

1.誇張や最上級表現はないか?「最高の洗い上がり」は、個人の感想として(注記付きで)掲載するならまだしも、広告のキャッチコピーとして断定的に使うのは危険です。
2.打ち消し表示は適切か?「※個人の感想です」「※効果には個人差があります」といった注記(打ち消し表示)が、小さすぎたり、分かりにくい場所にあったりすると、打ち消しの効果が認められない場合があります。
3.ビフォーアフターは過度な演出ではないか?使用前後の写真が、スタイリングや照明、加工によって過度に演出されている場合、優良誤認と判断されます。

判断に迷う場合は自己判断で公開せず、専門家に相談することが大切です。

広告担当者・法務・代理店別|シャンプー広告の「正しい」チェック体制

シャンプー広告の違反リスクを防ぐには、個人の知識だけに頼るのではなく、組織的なチェック体制の構築が不可欠です。

広告が世に出るまでには、事業会社の担当者、法務部門、そして広告代理店など、多くの関係者が関わります。

それぞれの立場において「何を」「どのように」チェックすべきか、その役割を明確にすることが重要です。

事業会社(広告担当者):ファーストチェックの手法

広告担当者(マーケティング担当者)は、売上を最大化する役割と、法律を遵守する役割を両立しなければいけない立場です。

スピード感が求められる中で、以下のファーストチェックを習慣化することが求められます。

チェック項目具体的な確認内容
1.商品分類の確認・「化粧品」か「医薬部外品(薬用)」か?・分類に応じた効能効果の範囲を逸脱していないか?
2.効能効果の逸脱・化粧品の場合、56項目の効能効果の範囲内か?・医薬部外品の場合、承認された効能(フケ防止など)か?
3.NGワードの確認「治る」「改善」「育毛」「デトックス」などを使用していないか?
4.景表法(優良誤認)・「No.1」「最高」などの最上級表現に、客観的根拠(エビデンス)はあるか?・ビフォーアフター写真は過度な演出ではないか?
5.景表法(有利誤認)「今だけ半額」などの二重価格表示は適切か?
6.ステマ規制インフルエンサー施策の場合、「#PR」表記の指示は万全か?

担当者自身がこのファーストチェックを行うことで、法務部門の負担を軽減し、制作の手戻りを最小限に抑えられるでしょう。

法務・コンプライアンス部門:リスク判断の基準

法務・コンプライアンス部門は、広告違反を防ぐうえで重要な役割を担う部門です。

マーケティング部門の「商品の魅力を最大限伝えたい」という意図を尊重しつつ、法的なリスクを冷静に判断する役割を担います。

法務部門のチェック基準は、単なる「OK/NG」の判定ではありません。薬機法・景表法・関連ガイドラインの条文に基づき、表現が許容範囲内かを判断します。

また、他社や自社の過去の違反事例・行政指導・裁判例に照らし、今回のケースのリスク度合いを評価することも大切です。

違反した場合に想定される課徴金額、企業名の公表によるブランド毀損など、リスクの重大性を具体的に評価し、経営陣に伝える体制を整えましょう。

広告代理店・制作会社:クライアントへの「守り」の提案

広告代理店や制作会社は、クライアント(事業会社)から魅力的なクリエイティブ(攻め)を期待される立場です。

しかし、クライアントの指示通りに制作した結果、その広告が法律違反となれば、クライアントは甚大な被害を受けます。クライアントの利益を守るパートナーであるためには、「攻め」と同時に「守り」の提案が不可欠です。

クライアントからリスクの高い表現を求められた場合、単に拒否するのではなく、法的根拠と共にNGであることを明確に指摘しましょう。そのうえで、OK表現の範囲内で商品の魅力が伝わる代替コピー案を複数提示することが大切です。

「No.1」「日本初」といった最上級表現を使用したいと要望された場合は、必ずその客観的根拠(調査データなど)の提示を求め、内容を精査しましょう。

社内チェックだけでは判断が難しいグレーゾーンの広告については、クライアントに対し、薬機法に強い弁護士によるリーガルチェックを推奨することも重要です。

なぜ弁護士によるリーガルチェック(広告審査)が必要なのか?

薬機法・景表法の分野は、法律の解釈や行政の判断基準が日々変化しており、専門性が高いのが特徴です。社内体制を整え、代理店とも連携していても、シャンプー広告のコンプライアンスを完璧に担保するのは難しいでしょう。

ここでは、安価なチェックツールや社内法務だけでは不十分な理由と、弁護士によるリーガルチェックの必要性を解説します。

審査会社やAIチェックツールと弁護士の違い(法的責任の有無)

近年、安価なAIチェックツールや、キーワード単位で審査するサービスが増えています。

これらはファーストチェックとしては有用ですが、弁護士によるリーガルチェックとは、その「質」と「責任」において決定的な違いがあります。

主な違いは、以下のとおりです。

比較項目AI・審査会社弁護士(法律事務所)
チェック内容キーワードの一致、過去事例との機械的照合法的解釈、文脈、最新判例、行政の動向
判断の柔軟性×(グレーは一律NGになりがち)〇(リスクの度合いを評価し、代替案を提示)
アドバイスの質〇(修正案の提示)◎(法的根拠に基づく詳細な代替案、攻めの表現戦略)
法的責任×(最終的な法的責任は負わない)〇(弁護士としての見解に責任を持つ)

AIや審査会社は、キーワードがOKだったとしても文脈全体でNGとなるケースなど、絶妙なラインまでは判断できません。

一方、弁護士は、法律の専門家として「なぜNGなのか」「どこまでなら許容されるか」を法的根拠に基づいて判断し、その見解に責任を持っています。

より確実で、かつ責任のあるチェックをしたいなら、弁護士に依頼するようにしましょう。

社内法務だけでは不十分な理由(薬機法の専門性・最新判例)

企業の法務部門は、契約書審査・労務問題・株主総会対応など、多岐にわたる業務を抱えています。

その中で、薬機法や景表法というニッチで専門的な分野の最新動向を常に完璧にキャッチアップし続けるのは、現実的に困難です。

また、マーケティング部門の「売りたい」という強い要望に対し、判断が甘くなってしまうリスクもあります。

社内法務が優秀であっても、専門外の領域やリソース不足を補う「外部の目」として、専門弁護士の活用が不可欠です。

当事務所の広告審査サービス(料金プラン・納期)

当事務所では、薬機法・景表法に精通した専門弁護士が、シャンプー広告をはじめとする各種広告のリーガルチェックサービスを提供しています。

企業の売上とブランドイメージを守るため、法的リスクを最小限に抑えつつ、商品の魅力を最大限に伝える「代替表現」を積極的にご提案いたします。

最新の行政指導や判例に基づいた、実践的かつスピーディなアドバイスが可能です。

プラン名料金(税別)サービス内容
スポットチェック1.1万円~/1件LP、バナー広告、記事広告などの単発審査
顧問プラン月額5.5万円~・広告審査、チャットによる簡易相談
・契約書レビューなど包括的な法務サポート

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シャンプー広告の表現に少しでも不安がある、あるいは現在のチェック体制を強化したいとお考えの企業様は、ぜひ一度、当事務所の初回30分の無料相談をご利用ください。

シャンプー広告に関するよくある質問

インフルエンサーにPRを依頼する場合の注意点は?(ステマ規制)

インフルエンサーにPRを依頼する場合は、「#PR」「#広告」「(商品名)プロモーション」といった広告明示が必須です。

2023年10月に施行されたステルスマーケティング規制(ステマ規制)により、事業者が関与しているにも関わらず、それを隠して宣伝することは景表法違反となりました。

注意すべき点は、違反した場合に行政処分(措置命令)を受けるのは、インフルエンサーではなく広告主である事業者だという点です。

依頼時には、広告明示を契約書や指示書で明確に義務付け、投稿前に必ず表記を確認する体制を整えましょう。

出典:消費者庁|令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。

ビフォーアフター写真の使用は可能ですか?

ビフォーアフター写真の使用は可能ですが、厳格な条件が求められます。

ビフォーアフター写真は効能効果を保証するものと見なされやすく、薬機法・景表法の両面で違反リスクが高い手法です。使用する場合は、以下の点に細心の注意を払いましょう。

  • 写真の加工(トリミングや明るさ調整を除く)は一切行わない
  • 同一の照明、角度、条件下で撮影する
  • 「スタイリング効果によるもの」「〇週間使用した例」など、事実に基づく正確な条件を明記する
  • 「※効果には個人差があります」といった打ち消し表示を、分かりやすい位置に明瞭に記載する

一度の使用で髪質が劇的に変化するような過度な演出は、優良誤認表示として厳しく罰せられる可能性があります。

「無添加」「オーガニック」の表現に規制はありますか?

無添加やオーガニックなどの表現には、景表法の「優良誤認表示」に関する規制が適用されます。消費者に「より安全」「より高品質」という印象を与えますが、その根拠が曖昧だと違反になるのが特徴です。

まず、「何が」無添加なのかを明記することが大切です(例:シリコンフリー、パラベン無添加)。単に「無添加」とだけ表示し、あたかもすべての添加物が不使用であるかのように誤認させると違反になる恐れがあります。

また、一部の成分だけがオーガニックなのに、製品全体がオーガニック認証を受けているかのように誤認させる表示はNGです。「オーガニック成分〇〇配合」と事実を記載し、国際的な認証マークがあれば併記するようにしましょう。

広告審査(リーガルチェック)の費用相場は?

広告審査(リーガルチェック)の費用相場は、依頼先(AIツール・審査会社・弁護士)や依頼内容によって大きく異なります。

一般的な相場観は以下のとおりです。

依頼先費用相場(目安)特徴
AI・審査会社月額数万円~(サブスクリプション)・ファーストチェック向き
・手軽だが柔軟性や法的責任はない
弁護士(スポット)1件1万円~20万円程度・LPや記事広告1本ごと
・専門的な判断が必要な場合に適している
弁護士(顧問)月額5万円~・継続的に複数の広告を審査する場合
・法務全般の相談も可能

費用だけで選択するのではなく、依頼先が「薬機法・景表法分野にどれだけ精通しているか」「代替案まで提案してくれるか」といった、サービスの質も見極めるようにしましょう。

まとめ|シャンプーの広告をするなら専門家に相談しましょう!

シャンプー広告は、消費者の髪や頭皮に直接関わる製品であるため、薬機法と景品表示法によって厳しく規制されています。とくに「化粧品」と「医薬部外品(薬用シャンプー)」の分類を理解し、認められた効能効果の範囲内で表現することが重要です。

「これくらい大丈夫だろう」という安易な判断が、企業の経営基盤を揺るがしかねません。本記事で紹介したOK/NGチェックリストを活用し、まずは社内のチェック体制を見直しましょう。

また、広告表現に少しでも迷いや不安を感じた場合は、決して自己判断せず、薬機法・景表法に精通した弁護士に相談することが大切です。

シャンプー広告が法規制に違反していないかお悩みの方は、専門家に相談することが大切です。丸の内ソレイユ法律事務所は、企業の薬機法・広告・新規事業の法規制対応に精通した弁護士が在籍しています。それぞれの状況に合わせて適切な解決策をご提案できるため、まずはお気軽にご相談ください。

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