医薬品・または医薬部外品であるかのような表現化粧品やサプリメント、食品にはそれぞれ登録された種別により効果効能を表現できる範囲が明確に決まっています。そのため例えば化粧品を医薬品のような表現で表したり、一般食品を機能性表示食品かのように表現したりすると薬機法に抵触しているとみなされます。
自社ホームページ以外の場所で効果効能を表現
自社のホームページには効果効能は表現していないが、委託または提携している広告会社が行ったインターネットでの広告や紙によるちらしなどに効果効能が表現されていた場合も薬機法違反です。
体験談のサイトを立ち上げ、そこにリンクがされていた場合
体験談のサイトなどを自社のホームページとは別に制作し、直接的な商品名は記載されていないがリンクを入れていた場合は、その体験談の中に効果効能が表現されている場合は広告とみなされ違反となってしまいます。
また、化粧品については体験談の記載も薬機法では禁止されています。
海外から個人輸入した化粧品をそのまま転売
個人輸入の場合でも国内で販売を目的とすれば、化粧品製造販売業許可が必要になります。さらに、日本語で製造業者の氏名・名称・住所など定められた表示方法に従わなければなりません。
容器が小さくて成分の表記を略した場合
化粧品本体のサイズが小さいために、配合されている成分が全て書かれていない場合は薬機法違反です。小さくてもタグやディスプレイなどを使って表示することが定められています。尚、本体に十分な幅がありきちんと明記されていた場合でも、その本体が箱に入って消費者がすぐに確認できない状態の場合は、薬機法上その外箱にも明記することが義務づけられています。
ご自身の作成された広告が上記に該当している!と気がついた方は要注意です。次に解説する薬機法に基づく広告規制をきちんと把握しましょう。
【薬機法に基づく広告規制の判断枠組みについて】
薬機法の主な広告規制の概要
薬機法の主な広告規制は、医薬品等の虚偽誇大広告を禁止する第66条第1項及び第2項、そして、未承認医薬品等の広告を禁止する第68条の2つです。
(1)虚偽誇大広告の禁止(第66条第1項及び第2項)
以下の要件をみたすと、第66条第1項に違反します。
①何人も
②医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の
③名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、
④明示的であると暗示的であるとを問わず、
⑤虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布すること
なお、第66条第2項には、医師等による効能等の保証広告を禁止する規制が、以下のとおり定められています。
①医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の
②効能、効果、性能について
③医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれのある記事を広告し、記述し、又は流布すること
当該広告は、第66条第1項に違反するものとされます。
(2)未承認医薬品等の広告禁止(第68条)
以下の要件をみたすと、第68条に違反します。
①何人も
②未承認医薬品、未承認医療機器又は未承認再生医療等製品について
③名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する
④広告をすること
第66条と異なり、虚偽・誇大ではなく事実であっても直ちに違法となる点に注意が必要です。
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注意すべき主なポイント
(1)主体
薬機法の広告規制の対象は「何人も」とされており、国内の製造販売事業者だけでなく、海外の製造販売事業者も規制の対象となりえます。
(2)医薬品等の定義
医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品について、薬機法の第2条第1項から第9項に定義が定められています。「医薬品」を例にとってみると、「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが『目的』とされている物…」(同条第1項第2号)、「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが『目的』とされている物…」(同項第3号)というように、治療や予防等の効果が客観的に備わっているかどうかではなく、あくまでそういった用途で使われることが『目的』とされている物という定義になっています。
よって、事業者としては、ある商品を健康食品として販売していても、たとえば、その商品の広告に病気の治療や予防効果があると記載していると、そういった治療や予防に使われることが『目的』とされている物ということになり、当該商品は、薬機法上「医薬品」に該当するということです。
そうすると、当該事業者としては、当該商品を健康食品として販売しており、医薬品としての承認を取得していないため、当該広告は、未承認医薬品の広告となり、直ちに第68条違反になってしまいます。そして、病気の治療や予防の効果がなければ、虚偽誇大広告として第66条第1項にも違反することになります。
「医薬品」に該当するか否かを判断するにあたっては、『無承認無許可医薬品の指導取締りについて』(昭和46年6月1日薬発第476号)が参考になります。このいわゆる46通知は健康食品の広告をチェックする上で、重要な通知となっています。
(3)広告の定義
以下の3要件全てをみたすと、薬機法第66条及び第68条の「広告」に該当します(平成10年9月29日医薬監第148号)。
①顧客を誘引する意図が明確であること(誘引性)
②特定の商品名が明らかであること(特定性)
③一般人が認知できる状態であること(認知可能性)
逆に1つでも満たなければ「広告」にはあたりませんので66条及び68条は適用されません。
「広告」の該当性に関して、①健康食品の商品名を記載したWebページ及び②特定性を排しつつ当該商品に含まれる成分等の医薬品的効能効果を記載したWebページの一体性が問題となることがあります。
①だけ見れば、「広告」には該当するものの、医薬品的効能効果が記載されていないため、第68条には違反しません。また、②だけ見れば、特定性に欠けるため「広告」に該当しません。
しかし、①と②がリンクや検索誘導等によって、実質的に一体の「広告」と見ることができる場合には、全体として第68条に違反する「広告」となるおそれがあります。
(4)医薬品等適正広告基準
第66条に該当するか否かの判断基準を厚生労働省が具体的に示したものが、『医薬品等適正広告基準』(平成29年9月29日薬生発0929第4号)です。また、同時に『『医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について』(平成29年9月29日薬生発0929第5号)という詳細な解説が公表されており、参考になります。
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広告表現が法律に違反しているかどうかの判断手法
景品表示法や薬機法との関係で広告表現には注意が必要といっても、どのような表現が法律に違反するのかが曖昧で分かりにくいという声をよく耳にします。実際、広告表現がこれらの法律に違反しているかどうかについて、明確な基準はなく、広告表現が法律に違反しているかどうかを見極めるためには、判断手法の基本的な考え方を理解しておく必要があります。
(1)個々の表現ではなく、全体の印象で判断される
まず、広告表現が法律に違反しているかどうかは、個々の表現ではなく、全体から受ける印象で判断されます。
例えば、「スッキリ」という表現は、ダイエットを謳うサプリなどの広告で、痩身効果を暗示する言葉として、よく使われます。しかし、「スッキリ」という表現は、便通の改善や整腸作用を意味する言葉としても使われることがあります。また、他にも味覚を表現する言葉として使われることもあるかもしれません。
このように、個々の表現だけを切り取って考えても、その言葉が何を意味しているのかははっきりしません。その言葉の意味するところを正確に理解するためには、その他の表現を含めた広告全体の中で、その言葉の意味するところを判断する必要があるのです。
例えば、体重計に乗ったスリム体型の人の写真があれば、「スッキリ」は痩身効果を意味している場合が多いでしょうし、両手でお腹を押さえた人の写真があれば、便通の改善や整腸効果を意味している場合が多いでしょう。
(2)個々の表現で全体の印象が変わるわけではない
逆に考えれば、必ずしも、個々の表現で全体の印象を変えられるわけではないということでもあります。
例えば、健康食品で「これを飲むだけで痩せる」といった広告が、頻繁に優良誤認表示で措置命令を受けています。痩せるためには運動をするか食事制限をする必要があるからです。そのため、「運動と食事制限を組み合わせた結果です」といった記載をすることで、措置命令を免れようとする広告も見られます。
しかし、単に「運動」や「食事制限」といった表現を盛り込んでいても、多くの場合、広告全体を見れば、結局は「これを飲むだけで痩せる」という印象を与えてしまっています。実際に、ダイエットサプリの広告で、「運動」や「食事制限」といった表現が含まれていても、措置命令を受けたケースがあります。
(3)最後に
このように、広告表現の適法性を判断するためには、広告全体から受ける印象を考えなければいけません。その判断を適切にするためには、過去に措置命令などの行政処分を受けた事例を収集し、検討することで、判断のコツをつかんでいく必要があります。
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商品ではなく含有成分の広告でも措置命令を受ける?
景品表示法では、「商品の」品質などについて、著しく優良であると示す表示を、優良誤認表示として禁止しています。そのため、これまで優良誤認表示を理由として措置命令が出されるのは、すべて具体的な商品についての広告でした。しかし、2019年11月1日、消費者庁は、これまでと異なり、健康食品について、具体的な商品ではなく、含有成分に関する広告に対し、措置命令を行いました。
(1)背景事情
このように、具体的な商品名を記載せず、含有成分についてだけ記載する表示は、非常によく見られます。その理由は、景品表示法ではなく薬機法にあります。
薬機法においては、健康食品について医薬品的効能効果を広告することは禁止されています。しかし、薬機法の適用対象となる広告は、上記のとおり、①誘引性、②特定性、③認知性の3つの要件を満たすものに限られます。そのため、健康食品の商品名を明らかにせずに、含有成分について医薬品的効能効果を表示しても、薬機法違反とはならないのです。
(2)含有成分の表示が薬機法違反となる場合
しかし、実際に事業者側が意図しているのは、含有成分の医薬品的効能効果と、具体的な健康食品の商品とを、消費者側で結び付けてもらうことにある場合がほとんどです。そのため、事業者としては、両者を結び付けるべく様々な工夫をするのですが、そのような工夫が薬機法に違反することがあります。
例えば、含有成分の医薬品的効能効果を記載しているウェブサイトに、当該成分を含有している健康食品の購入サイトへのリンクを張り、遷移することができるようにしていた事案において、両者が実質的には一体の広告であると判断され、薬機法違反で摘発されるということがありました。
(3)含有成分の表示が景品表示法違反となる場合
実は、前述した景表法に基づく措置命令も、薬機法の場合と同じように考えることができます。
前述の措置命令は、単に含有成分の表示だけを取り上げて優良誤認表示と判断したわけではありません。この事案では、まず、ウェブサイトにおいて「ブロリコ」という成分について、免疫力の向上や、病気の治療・予防効果があるという表示をしていました。
消費者は、当該ウェブサイトを通じて「ブロリコ」に関する資料請求をすることができ、資料請求があると、「ブロリコ」についてウェブサイトと同じような表示がされた冊子やチラシに加え、具体的な商品の注文はがき付きチラシと、当該商品の無料サンプルが送付されるという仕組みになっていました。
消費者庁は、そのような全体の仕組みを捉えて、ウェブサイトや冊子、チラシについても、具体的な商品に関する広告であると判断し、優良誤認表示と認定したのです。景品表示法においては、このような判断は初めてのものですが、薬機法の観点からは、従来から行われていた規制の延長と考えることもできるでしょう。
年々取り締まりが厳しくなる薬機法(旧:薬事法)。違反すると自主回収や逮捕、罰金、懲役など重い罰が科されてしまいます。一度専門家に相談してみるのがいいのではないでしょうか。